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鋼鉄英雄譚  作者: Negi
6/8

英雄と守護者(前編)

煙幕が晴れる。取り敢えず跳ぶか。

ヒュゴッッ

「うおぉ!?」

思ったより高い高度までスッ飛んだ。そりゃそうだ。この機体、レグセクトは「武装に使うエネルギーを機動力に回した」機体。ゲイル・カイのような万能型とは出力が段違いだ。

「考えることハ同じか!」

アジダも上昇してきた。ロングソードを右脇に構え、突っ込んでくる。

切り上げようとする左手を抑えて掴み、左半身のブースターを吹かす。

「!?」

「後ろを取ったぞ!」

刀を両手で握り大上段から真っ向に切り下ろす!

ガキィ!

クソ、体を回して剣で受けられた。

剣と太刀が交わり、力がぶつかり合いギリギリと音をたてる。

「力比べは我ノ勝ちかな?」

「仰る通り…でっ!」

アジダの体を剣ごと左下に押し込んで受け流し、体制が崩れたところのこめかみに一撃…避けられた。

「今だっ!行ケ!」

奴が指示を飛ばし、チェルンボーグ数体を差し向ける。さっきは気にしてなかったが、こいつら左腕部がクローからマシンガンに変わっている。容易に組み換えができるということか…?

クローを振りかざし迫る個体をまとめて横に薙ぎ払う。正しい刃筋を通すにはちょっぴりコツがいるが、居合道の経験が活きたな。補正もあるけど。

正面から突っ込んできた両腕クローの奴を逆袈裟に切り上げる。返す刀でもう一体。

「いイ加減墜ちろ!」

「断る!」

ロングソードの猛攻を刀で受け流す。

「反撃する暇が無い…!」

その時、爆発音が響く。

アジダの動きが一瞬止まる。その隙は見逃さない!

「しまッた!」

俺の刀がアジダの右前腕を捉え、切り裂く!

「くッ…撤退スる!」

「待て!」

腰のライフルを…ってそうだった。レグセクトのライフルは豆鉄砲並だ。変則的な動きで逃げる敵には効果が薄い。深追いはやめておこう。

「ところで何の音だったんだ?」

<瓦礫からのガスが引火して爆発したようです。なにはともあれ、今回も退けたようですね。>

「どうも、上羽3曹。それにしても、世界征服か…。」

<現実味がありませんね…ですがあの技術力。一体どうなることやら…。>

「ドローンを回収して作戦本部に戻ります。」

<了解。>

「だぁ〜っ!疲れたぁ…!」

あれから報告書だのこれからについての会議だのしてたらすっかり日が落ちている。現在時刻は6時半。

「っと…そうだったな…。」今俺が割り当てられている住所はあの仮設住宅だ。窓に明かりが灯っているということは、琴葉は家にいるということ。

チャイムを鳴らす。

「はーい」

「…ただいま?」

「…あってるんじゃない?」

イマイチ距離感が掴めないな…。

仮設住宅は台所とトイレ、ユニットバスに寝室が2部屋くっついたようなシンプルなつくりで、台所

の真ん中に卓袱台がポンと置いてある。

「颯真の分の着替えとか日用品は寝室に運んであるよー」

「あざーす」

今の俺は制服をカバンに突っ込み、本部からの帰りに買った服を着ている。財布とスマホが無事

だったのが幸いだったな。

「そういえば夜ご飯ってどうするつもりだ?」

「カップ麺あるよ〜」

「使っちゃえ使っちゃえ。」

「こうして向かい合ってメシ食うのも久々な気がするなぁ。」

「前は毎日だったから余計ねー。」

「ずいぶんあっさりしてるな」

「ラーメンが?」

「お前が。なんかこう非日常っぽい会話というかなんかない…?」

「そりゃ心配してたけど、颯真『また後で』って言ったでしょ?そして帰ってきた。なら、いちいち怪

我は?とか大丈夫?とかワタワタする必要無いよ。信頼してるもん。」

「…それはありがたいね。」

それにしても、初めの時はメンタルやられて泣いてたのにこの肝の据わりよう。さすがの切り替えの早さだな。

「ああ、さっき言いそこねたんだが近いうち施設に顔出しに行かないか?」

「いいね。ここもちょっと窮屈だし、颯真に襲われないうちにね。」

「誰が襲うって?」

「冗談冗談。お風呂入ろうかな。」

「どーぞー」

「覗かないでよ?」

「覗くわけねぇだろ!」


「おはよ」

「おはよー」

次の日の朝、天気は快晴。今日は取り敢えず買い物に行かないとな。

途端、スマホが震える。電話だ。

「もしもし浅儀です。」

<もしもし、上羽です。そこに鈴野琴葉さんはいますか?>

「ええ。」

<スピーカーにしてください。>

「はぁ…。」

琴葉を呼んでスピーカーモードに切り替える。

<実は、アメリカでの復興作業中に、貴方の指輪と同型の物が発見されたという報告があって、回収したの。琴葉さんと一緒に本部へ来てくれませんか?>

「!…分かりました。すぐに向かいます。」


実は俺は1年の時に普通自動二輪の免許を取っている。つまり、バイクに乗れる。まあ高校はバイク通学禁止だったから、半ば好奇心で取った免許だっったしバイクもまだ買ってなかったが、こんなところで役立つとは。

「やっぱかっこよすぎるなこれ…」

カワサキKLX250。自衛隊で偵察用として用いられているオフロードバイクを一台支給してもらった。

「ちょいと二ケツは狭いかもしんないけど我慢してくれよ。ほいこれヘルメット」

「ありがと。優しく運転してね…?」

「了解っ!」


「着いたぁ」

「うまい運転だったんじゃない?」

「よかったよかった」

本部で第一対特別侵略隊メンバーと合流、地下の金庫室に向かう。

琴葉が不思議そうに口を開く。

「あのー…どうして私まで呼ばれたんですか?」

「それは貴方が唯一の目撃者だからです。あの指輪が嵌るとき、近くにいたのは貴方しかいない。」

上羽3曹が答える。

「アメリカ政府はよくそんなトンデモ指輪をすんなりと渡してくれたものですね。」

「そこは大人の交渉ですよ。ここです。」

厳重に閉められた扉に入り、上羽3曹が一つの金庫を開ける。

「これは確かに同じだな…。」

そこにあったのは、俺の人差し指に嵌っている指輪と全く同じ、細かい電子回路のようなヒビのような線がびっしり入った金の指輪。

そこに一晴3曹と一人のマスクをした男性が入ってきた。

「素性は明かせないが、彼は日本の極秘特殊部隊隊員だ。彼にこの指輪を嵌めてもらう。」

「なるほど。だから琴葉を呼んだんですか。」

「我々はあそこの窓から確認しましょう。」

<それじゃあ嵌めます。>

「頼んだぞ。」

彼が指輪を手に近づける。途端。青い稲妻が散る。

<ぐっ!>

「大丈夫か?!」

「この稲妻は颯真がつけたときも出てました。正常な反応かと。」

琴葉が説明する。そんなの出てたのか。痛みに耐えてて気づかなかった。

スピーカーから苦悶の声が響く。

「指輪は指にしっかり嵌っていますね…」

「…おかしい」

「どうした?」

「稲妻が流れている時間が長過ぎる。颯真がつけたときは3秒くらいで消えたのに…」

「確かに。…まさか!」

年齢制限!ありえない話じゃない。俺が指輪を嵌めたとき、なぜかフィクションみたいな考えが頭に湧いた。

てか何が主人公だよ。流石にそこまで中二病を拗らせていた覚えは無い。ともあれ、指輪を嵌めてからの俺の突拍子もないカンはただのカンではないだろう。信じてみると

するか。

「指輪を外してください!これ以上は危険です!」

指輪を外すと、稲妻は消えた。

「困りましたね…これを奴らに奪われでもしたら…」

上羽3曹が眉を顰める。

「奴らがこの指輪を使えるにせよそうでないにせよ、大きな損失となるのは変わりない。今この国で一番安全な場所に保管する必要があるな。」

「…俺が預かりますよ。」

「そうだな。よろしく頼む。」

ズズン!

「この音は!」

「爆発だ!近いぞ!」

連続かよ!

「携帯式ドローンとモニターは!?」

「ここにある!」

「了解、出撃する!」

ゲイル・カイに変身、地下室から飛び出す!

砂煙で周りがどうなってるかわからん…

「何ぃ!?」

途端、敵機が目の前に複数展開、一斉砲火を浴びせてくる!

「クソッ!」

急上昇で逃れる…上にもかっ!?

「しまっ…」

ガァン!

弾頭が炸裂、シールドで受けたが衝撃までは受けられなかった。

体勢が崩れたところに集中砲火が叩き込まれる。勢いを殺せない、墜落する!

「痛ってぇ…」

クソ、地面に叩きつけられた拍子にアーマーが消えた。相変わらず砂煙で何も見えない。頭を

打ってクラクラする。折れてないことを祈る。

「再展開…を…」

「颯真!」

「なっ…琴葉ァ!?なんでお前がここにいるんだ!?」

「私のところにそっちが墜ちてきたんだよ!」

「そうか…離れてろ、大した怪我じゃない。」

「…さっきの指輪…」

「なんて?」

「さっきの指輪を私につけて!」

「ハァ!?」

「私も戦う!…もう後悔したくないから。お願い。」

琴葉の言い分は痛いほどわかる。俺だって、あの時見ていることしか出来なかった。だが…

「指輪は一度つけたら外せない。巻き込まれる事になるぞ。」

「わかってる。そもそもとっくに巻き込まれてるよ。」

「『運命(うんめい)』、か」

「『運命(さだめ)』と言ってほしかったね。」

「ハッ。漫画の見過ぎだぞ」

「どの口が。」

青い稲妻が走る。

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