我儘姫
あまりにも執筆ペースが不安定で申し訳ない。
タイピングは早い方な気がするんだがな。
「…で、床に穴を開けた、と?」
「…はい」
「ったくお前はよぉ…喧嘩されるだけでも迷惑なのに建物まで壊しやがったかついに!?」
「…大変申し訳ございません……」
「ラン、お前なんで今日はそんなしおらしいんだ」
先程からしゅんとした様子で説教を受けていたランさん。内容はもちろん今朝の土下座騒ぎだ。
あのとき、ランさんは百点満点の土下座を披露してくれた。頭が床にめり込んで穴を開ける勢いで。
「ま、何があったかは詳しく聞かないでおいてやるよ。
それより、今日の…これから長くなるだろうが依頼の確認だな」
《QUEST:1 姫を理解らせろ》
「ふざけてるんですかこのクエスト」
「よくあるんだよこういう題名…。
でもこういうのに限って報酬が高かったりするんだよな」
「…センジュ、私は行方不明者探索クエストに限定したはずだが?」
「あぁそれのことなんだが、この”姫”が近頃頻発している行方不明者に関わっているのでは、という疑惑があるそうだ。
それで理解らせて情報を聞き出せって話らしいんだよ」
「…ふぅん」
「…メイズ、どうかしたかい?」
「えっ、あぁいえ、その、行方不明者って頻発してるのですか…?」
「あぁ。近頃…といっても5年程前からだが、行方不明車の数が年々増加し続けている。
これまではほとんど横ばいだったのだけれどね…。
それで、マーティも去年消えてしまって。」
「そうですか…。なんか、すみません。」
「気にしないでくれ。」
そのあと、ランさんがなにか続けたように聞こえた。
私には聞き取れなかった。
「じゃ、とりあえず移動するから依頼書はもらっていくよ」
「はいよ。くれぐれも死ぬんじゃねえぞ?」
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「ランさん、ここです」
「はー…“姫”っていうくらいだからなんとなくわかっちゃいたが豪邸だな…」
眼の前にそびえ立つ豪邸。門らしきところには門番…。
「では行きましょうか」
「はっ!?もうちょっと躊躇しようぜ面白みが足りないって作者が言ってる!」
「知りませんよそんなの。誰ですかサクシャさんって」
「だめだメタが通用しない」
「ふむ、いいだろう通れ」
「は??」
「依頼書、見せただけですよ?行きましょうよランさん」
「なんでそんなに手慣れてるんだよ…。」
だって三名家の養子だもん。
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大広間に通された先で待っていたのは辺境伯だというクシェン・イグイース。
第一印象は豚。丸々とよく肥えた腹を抱えながら椅子に座っている。
正直な所1ミリも視界に入れたくない。不快。
「いやぁ、此度は来てくださって本当に感謝しておりますよ!
わが娘は今まさに可愛い盛りです故、少々我儘なのです。
それなのにこれまで来たのは鼻息を荒くした男の冒険者ばかり!
そんな奴は門前払いしてやりましたが、今回は実に麗しいお嬢様方だ!」
「いえ、そんな…。」
うぇ…。ペラペラとよく喋る豚だな…。
「おっと、また喋りすぎてしまいましたな!
私の癖もお嬢様方に矯正していただきたいものですな!はっはっは!」
「誰がやるかよ豚が」
「くたばりやがれください」
「む?なにかおっしゃいましたかな?」
「「いえ、何も」」
「はっはっは、これは失礼。
では娘のところに案内させましょう。
アメリ、イタリー!」
「「ここに、イグイース辺境伯。」」
「アリディートのもとへ案内して差し上げろ。」
「「かしこまりました。」」
双子…なのだろうか?よく似た容姿のメイド達が一礼し、こちらを向く。
「イグイース辺境伯より命を受けました。アメリと申します。」
「同じく命を受けました。イタリーと申します。」
「「アリディートお嬢様のもとへご案内させていただきます。
どうぞ、こちらへ」」
「はい。ありがとうございます」
アメリと名乗ったのは金髪に赤い瞳を持つ女性。でも、右目に眼帯をつけている。
イタリーと名乗ったのは同じく金髪に赤――こっちのほうが深みがある、かな?例えるなら、アメリさんがピンクトルマリンで、イタリーさんがルビー、みたいな。
イタリーさんは左目に眼帯をつけている。
扉を開ける動きから何まで、すべてが揃っている。はじめに出す足も同じ。
これは、なんともまた悪趣味なことで。
「はー…あまりに屈辱…」
「…へっ?」
「本当…命令されるなんて屈辱よ!」
「え、えぇ?あの、お二方どうされました…?」
「「こっちが素です」」
「ちょ、話についていけないんだが」
「では順を追ってご説明させていただきますね?」
「まずわたくし達は辺境伯が嫌いでございます」
「は、はぁ?」
「わたくし達は金で雇われたメイドです」
「ですが、奴はおそらく女に囲われたいだけかと。」
「吐き気がしますね」
「今からぶち殺してきていいかい?」
「是非お供したく存じますが少々お待ちを。」
「いますぐ辞めたいのですが、何しろ報酬が高くて」
「「故にわたくし達はここで働いております」」
「なるほど、心中お察しします。」
「「ありがたく存じます」」
「この依頼が終わったら始末しましょうか?」
「「できることならば」」
そんなことを話しながら長い廊下を歩く…どこまで続くんだこれ?
いくらなんでも長すぎんか?
…っと、アメリさん達が止まった、ってことはここかな?
「「こちらがアリディートお嬢様のお部屋になります」」
「ご案内ありがとうございます」
「「アリディートお嬢様、参りました」」
「いいからさっさと入ってくれないかしら?
そんなことも言われないとわからないの?」
「「申し訳ございません。ですが、これも仕事でして。
では、失礼いたします。」」
「はいはい。
で?誰なのあなた達」
扉の先で待っていたのは豪奢な淡い青緑色のドレスを着た女性。といっても背格好からしてレアンさんと同じか少し下くらいだろうけど。
「お初にお目にかかりますアリディート伯女。
イグイース辺境伯より申しつかりました。
メイズと申します」
「お初にお目にかかりますアリディート伯女。
同じく申しつかりました。
ランと申します」
「…ふぅん、教養はなってるみたいだけど、冒険者でしょう?」
「えぇ」
「まぁいいわ。
顔を上げなさい」
「お心遣い、ありがたく存じます」
「は!?えっ!?
なんて見た目麗しい…!!
…こほん、ねぇあなた達、私の専属メイドにならない?」
「…え?」
「私、あなた達の百r…………えーと……顔面を毎日見てたいの」
あーなるほどこの人面食いか。てかさっき百合っていいかけたよな?面食いな上に姫女子かよこれでいいのか令嬢。
「お褒めいただき光栄でs」
「そんな畏まらないで頂戴?
あぁどうしましょう…!
ねぇアメリ、とりあえず紅茶を淹れて?」
「…お気遣いありがとうございます、アリディート様。
ですが、今日は一度帰らせていただきますね。
本日は顔合わせ程度に考えておりましたので…」
「…は?
私を残して帰るというの?駄目よそんなこと」
「明日また参りますので…」
「…ふん、その顔に免じて許してあげるわ」
「ありがとうございます。では、私達はこれで。」
「アメリ、イタリー、案内してあげて」
「「畏まりました」」
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「んで帰ってきたと」
「ですね」
「だな」
カウンターに肘をついて私達の話を聞いていたセンジュさん。
横にはいつものようにリアさん。
「…で、どうだよ”我儘姫”サマは」
「言うほどでもないのでは?と感じました」
「”我儘”というより欲しがりで強引なだけかな」
「なるほどねぇ……」
「センちゃんあんま悩み過ぎちゃだめだよ〜?」
「うるさい尻を揉むな」
どうやらカウンターの下でお尻を揉まれていたらしい。多分通常運転。
「というかお前らはアリディート、だったか?
我儘姫に様つけなくていいんじゃないか?
三名家だろお前ら」
「…盲点ですね」
「…盲点だな」
「ですが一応私達権りょ」
「センジュさん、喋るのはワタシのクエスト受理を終わらせてからにしてくれません?」
「悪かったなメアもうちょっと待て」
「今日は一段と扱いが雑いですね」
「あはは〜w扱い雑ウケる〜w
ボクが変わりにやってあげる〜w」
「なんか悪寒がするから私がやる尻を揉むな」
私達には権力がない、と言おうとしたんだけどな…。
「あ、そうだレアンさん居ます?」
「あのなんで皆さんそんなに僕に気づかないんですか」
「うわっ!?……あー…ごめんなさい…」
「もういいですよ慣れたので…。なんですか?」
「あの、ランさんと部屋を別にしたくて」
「ランちゃん嫌われてんだけどw」
「えっ違…」
「やはりランは嫌ですよねぇ。
ワタシたちのパーティに来られます?」
「違います!!なんで勝手に話進めるんですあなた達!」
「そういう人たちなので諦めたほうが早いと思いますよ。
では、理由をお聞ききしてもいいですか?」
「えー…っと……その、今朝といいますか昨晩といいますか…。
まぁ、その…色々あったので、別にしたほうがいいのかなと思ったり…」
「……あっ(察)。
えーと、隣同士にします…?」
「それぐらいはたぶん大丈夫…ですよね?」
「なんで私を見るんだいメイズ」
「…はぁ。
じゃあ隣同士でお願いします」
「わかりました。
305室と306室になります」
鍵どうぞ、と鍵を渡された。
これなら安心して眠れる…はず。
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「……んう…朝、ですか…」
「………う、あぁ…朝か…」
「「……………??」」
うん…?なんかランさんがいる……え…?別室にしなかったっけ…?……ん!?
「「What's up!!?」」
Anecdote:階をどれだけ離してもいつの間にかランがメイズのベッドに潜り込みます。