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ep.3 始めて辿り着いた街


そう言えば、名前とか聞いて無かったな…。

 そう思い立った僕は、ミジンコかアリが良い勝負の勇気を振り絞り、名前位は聞いてみる事にした。


「え〜っと……あ、あなたの名前はなんて言うんですか? 僕は神田来斗と言うんです。助けてくれてありがとうございます……折角なら、少しでも仲良くなりたくて!」


 ヤバい……多分結構早口だった……。

 緊張がちょっとは消えたって思ってたけど、元が結構人見知りなんだった、僕……。

 き、聞き返されたら何でもないです……って言っちゃいそ〜……。


「ん? 俺の名前? いや〜! 今時、一期一会の世の中なのにこんなくたびれオッサンの名前に興味ある奴なんて珍しいな! 俺はアスター・シオン。よろしくな! 坊主! お、それはそれとしてや〜っと街が見えて来たな……そのひょろっちい足でよく歩けたな?」


 少し遠くに、民家や出店等が見えるレンガ作りの街が見えた。

 見るだけで落ち着いて、暖かみを感じる不思議な雰囲気があった。


「ひょろっちいの一言は余計だと思うんですけど……」


「あ〜! 心配の方だ! 心配の方!

ちゃんと食ってるか心配って感じのアレだ! うん! そ、それはそれとしてだな……平和で活気のある良い場所だから、スリとかの心配は無いと思うが、一応気を付けとけよ?」


 アスターさんはあたふたと手を動かして誤魔化すと、軽く咳払いして僕に話しかけた。

 泥棒か……やっぱあるよなぁ……貴重品とかは持ってないけど、注意しないと……。

 そう思いながら、僕は軽く頷いた。


 しばらくして、街の入口へと辿り着くと、アスターさんが立ち止まって何か独り言を言い始めた。


「宿屋は一応予約してあるけど、1人分追加しねぇと……。久々にアイツらにも会いに行きたいし、結構金かかりそうだなぁ……楽な仕事と平和な場所でゆったり旧友とのんびり、って訳にも行かないだろうし……それと……」


 アスターさんはぶつぶつと空に言葉を発しながら頭を人差し指でとんとん、と叩きながら片足で足踏みを繰り返している。


「アスターさん……? 大丈夫ですか……?」


「あ、あぁ! すまんすまん、何か頭を使うと嫌でも考え込む癖があるんだよな……早く宿屋でも入って話でもするか! 他の世界から来たかも知れん奴の話を聞く機会なんて一生無さそうだからな! へへ……」


 アスターさんは頭を掻きながら、また僕達は足を進める。

 ちらっと軽く周りを見ると、日が落ち始めた頃だからだろうか、子供達がそそくさと家へと走っている。

 売店の電気がぷつっと消える所や、空の茜色が落ちて暗くなって行く景色を見ると、始めて見るのに少し懐かしい気分になった。


「ここはコスモって街だ。ほんと良い所だ……平和だし。というか平和以外、特に言う事無い場所なんだよなぁ……んま、街の説明とか細かい事言うと長ったらしくなりそうだし、とっとと行こうぜ? 

未知で、誰も知らない場所の話を始めて俺が聞けるってんだ! こんなオッサンに見合わない子供心がワクワクしてんだよな〜?」


 彼は腕を組みながら、うんうんと頭を振っている。

 僕がそんな面白い話が出来る自信は無いけど……期待して貰っているのなら、期待には応えられる程度の話位はしてあげたくなった。

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