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8-11 憧れのエミリア11

 その後、2人の警察官に連れられて、アルタコーネス国に戻されたスターシアは、裁判にかけられていた。その判決は、


「その立場を利用して、処刑用のガス銃を盗み出し、他国の女性に、その美貌を一生妨げる最悪の行為を働き、未遂とはいえ、度重なるその行為は、被害者を不安にさせた。何よりも、罪のない女性に対して、この国における最高刑と同様の行為を働こうとしたことは、同様の刑に値することは免れない、として、静顔の刑に処する。」


 スターシアは、無言のまま、判決を聞いていた。そして、判決内容は、続いていく。


「刑の執行は、本日より、1ヶ月後に行われ、それまでに、刑の執行人が、プリンセスによって決定され、その者によって執行される。」

と、締めくくられた。


 すると、その場に同席していたプリンセスから、すぐに発言があった。


「もうすでに、刑の執行人は、決定しています。それは、私、プリンセス エメリスが、スターシアの刑を執行致します。美法典に基づくならば、プリンセスの立場にある者が、刑の執行人ではいけないという決まりはないはずです。スターシアの刑の執行は、私以外の者には、絶対にさせないわ。」


その場にいる裁判に関わる者たちは、誰一人として、それ以上の発言はできなかった。


その後、約1ヶ月の間、スターシアは、刑の執行を待つための部屋で待ち続けた。


そして、ある日、プリンセス エメリスが、その部屋を訪れた。


「スターシア、体調はどう?」


すると、久しぶりに、プリンセスの顔をみたスターシアは、ほんの少し、笑顔をみせた。

「プリンセス!」

「あらあら、大丈夫よ、今は、お母さんでいいわよ。」


すると、まるで、張りつめた糸が切れたように、泣きながら、エメリスに抱きついたスターシア、


「お母さん!私、私、本当に、ごめんなさい。」

「いいのよ。本当は、お母さんが悪かったわ。お母さんこそ、ごめんなさい。あの時、あなたは、まだ一度も公の場に出たことがないのに、あんなに大舞台に出させてしまって。それで、おまけに、あんな真剣勝負まで、いきなりさせた、お母さんが悪いのよ。それは、あなたのしたことは悪いことだけど、あんな負け方をしたら、気持ちもおかしくなるわよね。」


 スターシアは、それ以上は、言葉にならない。エメリスも、同様に涙があふれて、2人とも、抱き合ったまま、いつまでも泣き続けるのだった。


 そして、ひと月が過ぎ、処刑の日がやってきた。処刑室に通される受刑者スターシア。処刑用の椅子に腰掛けて、すぐ横には、執行人の座る椅子が置いてあり、続いて、エメリスが腰を下ろした。立会人が2人入ってきて、2人のちょうど真向いの椅子にすわり、目の前の2人の様子がすぐに見える体制である。


 まさに、その処刑の一部始終を見届ける見届け人である。処刑の係官から、ガス銃が手渡され、それを受け取るエメリス。ガス銃は、切り替え式になっており、遠射モードと、近射モードの2種類で、スターシアがエミリアを狙っていた時は、遠射モードで細く遠くへとガスを放出していたが、今回は、近くから、まるでシャワーのように少し広範囲に放出する近射モードで使用するので、最後に、執行人は、近射モードであることを確認する。確認が終わると、2人は、内側に90度向きを変えると、2人は、互いに向きあった。執行人は、銃を右手でつかみ、そして、係官の合図を待つ。


 まずは、


「それでは、5分前になりました。これより、受刑者、スターシア・エルヴァスティ・プルクネンに対して、執行人である、エメリス・エルヴァスティ・プルクネンにより、静顔の刑を執行致します。1分前になりましたら、最後の合図をさせて頂きます。」


 ここからの時間までのあと4分というのが、なぜだか異常に長い、この間が、1時間くらいの感覚すらおぼえる長い長い時間を味合わなければならない。しかし、この時も、受刑者に対しての不安をあおり、それによって、受刑者は、自分の起こした罪の深さを知る時としている。


 そして、


「1分前になりました。執行人は、銃をとり、引き金に指をかけて下さい、そして、受刑者の顔の前に、銃を持った腕を真っ直ぐに伸ばし、受刑者の顔の前に向けて下さい。それでは、3からカウントダウンを行ないますので、ゼロの掛け声と共に引き金を引いて下さい。それでは、始めます、、、、、。3、2、1、ゼロ!」


 その、引き金を引いた途端、銃は、想定とは異なり、銃の半ば部分が、轟音と共に破裂し、ガスは銃口からは出ず、その中央部から後方に向けて吹き出した。そして、それをまともに顔に浴びてしまうプリンセス。


「あああーっ!」


悲鳴と共に、顔をおさえながら、うずくまるプリンセス。


「スターシア!私の顔を見ないで!お願いよ!」


すると、立会人の1人が、


「なんということでしょう。このような事故の場合は、処刑は、再び1週間後に延期され、再開されます。」


 すると、息も絶え絶えのプリンセスから発言された。


「ちょっと待って下さい。それは違うでしょう。美法典の、第236章28条、処刑に関する項目を、まさか知らないわけではないですよね。ただ、事故やトラブルにより、処刑がただ中断された場合は、1週間後の単なる延期になりますが、処刑の現場において、事故やトラブルが起こり、受刑者以外の者に、間違って、代わりにガスが浴びせられ、刑が執行された場合は、その回の刑の執行は、その現場に関わる者たちの責任として、刑の執行が無事に終了したものと見なされ、その回の受刑者は無罪放免となる、ということですよね。これは、ほとんど奇跡的な偶然ですが、受刑者に対する稀な、最後に残された救済のチャンスとして用意されたものですね。そして、今、処刑人である私が、代わりにガスを浴び、刑を執行されてしまったことで、その稀な結果になってしまいました。誠に申し訳ないが、これで、刑は執行され、受刑者は、たった今、無罪放免になりました。それでは、立会人のお2人、私の顔を確認して頂き、刑の執行終了の確認をお願いします。」


「そ、そうでした。私たちは、ちょっとだけ勘違いをしたようです。もちろん、知っていますわ。ここまで、長い間、立会人を務めてきたんですもの。では、2人で、プリンセスのお顔を確認させて頂きますね。」


 そう告げると、2人の立会人は、恐々とプリンセスの顔を覗きこんで、


「だ、大丈夫。たしかに、刑の執行人が代わりにガスを浴びてしまい、事実上、静顔の刑が執行されたことを2人で、確認致しました。同時に、受刑者であるスターシア・エルヴァスティ・プルクネンの無罪放免が、たった今、決定致しました。」


 すると、最後に、今回の処刑の係官より、


「それでは、以上で、無事、刑の執行を終了とし、すべてを終了と致します。皆さん、お疲れ様でした。」


 その夜、スターシアは、母の元を訪れた。


「お母さん、どうして、あんなこと。」

「ああ、ごめんなさいね。私も、本当に運が悪いわ。あんな事故が起こるなんて、前もって、銃の確認を怠っていたバツね。」

「うそよ!むしろ、お母さんは、あの銃を事前によく調べていたじゃない。」

「それは、ちがうわよ、スターシア。その時の、私の調べ方がよくなかったのよ。それよりも、あなたは、これですべて無罪になったからといっても、あなたのしたことは、あなたの中には残っていて、決して消えることはないのよ。そこのところを、履き違えないで、しっかり反省して、そのことを一生背負って生きていくのよ。わかったわね。」


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