8-6 憧れのエミリア⑥
ところが、それから、ひと月後、自宅に戻った、元エミリア、二宮灯は、駐車場で誰かに襲われた。顔の横をものすごい勢いで、一筋の風のようなものが通り過ぎていった。それは、ものすごい勢いであった。その方向を見ると、遠くの車の窓からこちらをのぞきこむように見ている人物がいて、その車はあっという間に、走り去っていった。そして、ほんのちょっとだけ見えたその手には、銃のようなものが握られていた。
その後も、2回に渡り、襲われた灯。灯は、反射神経が良いので、たまたまその攻撃を避けることができたのだが、その銃は、どうやら、弾丸のような弾が発射されるようなものではなく、いつもガスのようなものが放出されていた。
しかも、その、襲われた場所というのは、自宅でもなく、全く偶然のような、特定できない場所であり、犯人は、灯がどこにいても、手に取るように把握できているようにしか思えなかった。
そのことを灯は、コスメに相談をした。
「、、、というわけで、誰かが私のことを狙っているようなんです。そして、いつも、その、一筋の強い風みたいなものが、吹き抜けていくので、おそらくガスみたいなものなのかとは、何となく思うのですが、結局、なんだかわからないし、いったい何をしたいのか、その目的もわからない。それに、最近は、とっくにモデル業は卒業して、業界には関わっていないので、同業者に恨まれたり妬まれる理由もないと思う。」
「灯、それは心配ね。ちょうどいいわ。ここの事務所には、ちょっとね、そういうことにとても詳しい人がいるので、話しをしてみるわ。」
それは、言わずとしれた、実務計子。本名、エテリア・フローラル・レオニール。コトールルミナス国の人間で、事情があって日本に住んでいるが、コトールルミナス国では、若くして、美警察の元総指揮官で美警察のトップであった。その類まれなる観察力、洞察力、判断力は、素晴らしく、多くの事件を解決し、短期間で美警察のトップとなった。
コスメからの相談で、実務は、灯から詳しい話しを聞いた。
「これまでの話しだと、二宮さんに、何か、個人的に思うところがあるようね。集中して狙っているのは確かだから、そのガスが命中するまではやめないと思うけど、命を狙っているなら、拳銃とかの方が簡単だけど、そうではなくて、わざわざ、その弾の出ない銃を使っているのも、当たるとどうなるものなのかも気になるところね。」
そして、灯は、実は、今日も襲われて、そのあと、相談にきたという。
「そうだったのね。それだったら、ちょっと待ってね。悪いけど、もう少し、私の近くまで来てくださる。」
しばらく、目を閉じて、考えている実務。
「なるほど、なるほど、わかってきたわ。そうしたら、、、。」
数日後、灯は、人通りの少ない通りを歩いていた。すると、彼女の横にきたシルバーの車、窓が開いたかと思うと、ブシュっ、という音とともに一筋の気体が真っ直ぐに放たれて、灯の顔をとらえた。いきなり、倒れた灯。すると、その犯人は、思いがけずにジャストミートしたことに驚き、様子を見ようと車を降りた。
倒れた灯に近寄る犯人。そっと灯の顔を覗き込む。その顔は、無表情の冷たい顔となり、もはや動かない。
「やったわ。これで、エミリアもおしまいよ。これで、一生その顔で生きていくのよ。思い知るがいいわ。」
すると、陰から、飛び出す少女2人。その2人の少女は、背後から、犯人を押さえこむ。
すると、
「あなたこそ、おしまいよ!エレノア!」
はっとなる、その犯人、エレノア!
ゆっくりと、現れる実務計子。
「はじめまして、エレノア。あなた、アルタコーネス人ね、そうでしょう。もうかくしてもだめよ。」
そして、続いて、現れるコスメ、泣きながら、
「エレノア!どうして!」
すると、薄く覆われたゴムシートを顔から剥がしながら、ゆっくりと起き上がるエミリア。
「エレノア、あなた、どうして、こんなこと、いったい、どうして?」
実務計子も、言葉を続ける。
「私には、もうすべてわかっているのよ。エミリアだけを狙う目的はいったい何なの。何のために、あのガスを使うの。それも国で使用する処刑用のガス銃を、なぜあなたが持ってるの。」
「どうして、そこまでわかったの!いかにも、私は、アルタコーネス国の人間よ。私の本名は、スターシア・エルヴァスティ・プルクネン。プリンセスの2番目の娘よ。でも、あなたたちには、私の気持ちなんて、決してわかるわけないわ!あなたたちになんか!私の、気持ちなんて!」




