7-14 未知の国からの招待14
すると、その時、突然、
「その勝負、待って!」
その声に驚き、全員、声の方へ振り返る。対決の2人も、その声に勝負を妨げられた。
そこには、コトールルミナス国のプリンセス アネットが、たった今、到着したのだった。
「オービス、ごめんなさい。待たせたわね。この国の場所を探すのに手間取って、少し遅れたわ。でも、ありがとう。よく持ちこたえてくれたわ。だけど、もう大丈夫よ。エメリス、ここからは、私が代わりにお相手するわ。」
先程、それは、エメリスが休憩を申し入れた時のことだった。このタイミングで、休憩を入れるとは、絶対に何か秘策があるに違いないと思ったオービスは、アネットから預かっていたあるものを取り出した。以前、アネットが日本にきて、美と命の水を取り戻し、帰国する際に、オービスにあるものを託したのだった。それは、通称、EGボタンという緊急ボタンである。直径3㎝ほどの小さなボタンで、使う時は、上部の丸い部分を一度回してから、プッシュする。
「オービス、私、今日、これを渡しておきますね。これは、今後、どうしても解決できない、困った時にだけ使えるもの。すると、私は、たぶん約2時間ほどで飛んできます。その代わり、どうしても、と思う時だけね。よく考えて使ってね。そして、ボタンを押すと、その押したボタンから、あなたの中から情報を読み取って、どんなことで困っているかがすぐにこちらに伝わるようになってるの。だから、そのトラブルに対応できるように準備して、行くことができます。そして、着いたら、どんなことで困っているのか理由を聞かずに、すぐに行動を開始できるのよ。」
そこで、久しぶりに見る、プリンセスになったアネットは、その美のレベルが信じられないほどにアップしていた。いったい、何が起こっているのかと思うほどであった。
「オービス、私を見て驚いたでしょう。この対決は、相手もプリンセスだし、おまけに美のエキスを飲んでいて、とんでもないレベルになっているからね。私も、美と命の水を飲んできたのよ。今度は、私の番よ。さあて、始めるわよ。」
両者を見ていて、所長は、夢を見ているのかと、自分に問いただした。
舞台に上がっていくアネットは、その、何もしていない状態なのに、その雰囲気だけで、すでに、とんでもないオーラがあふれている。一方で、エメリスは、その身体の周りに少し風が吹いている。それは、オーラが出ているだけではなくて、もはやオーラに包まれていて、まるで幻想の世界にでもいるような存在となっている。
もはや、所長は、2人の、想像を超えた美しさに魅了されていて、勝ち負けなどを気にすることなど、忘れそうなほどであった。その究極とも言える、2人の美を目の当たりにして、所長の脳裡には、過去の様々な思いが巡って行った。
フランソワ高木、彼は、ある時から、女性の美貌について、その魅力と奥深さに魅せられてしまった。それは、所長、いや、フランソワ高木が、フランス人の父と日本人の母との間に生まれて、まだ幼少の頃のことだった。海外にある日本企業の会社、そこには日本から多くの日本人が、家族できていた。当時は、まだ本名の、フランソワ ドリューだった頃、一人っ子だった私は、その日本家族と交流があって、よく家に遊びに行った。自分は、まだ小学生低学年くらいで、その日本人家族の中にいた高校生くらいの女の子がいて、ある時、道で転んでしまった時に駆け寄ってきて、幼い私に、
「大丈夫?ケガはない?」
と声をかけてくれた。その時の笑顔が、とてもきれいでかわいくて、癒されたというか、子供ながらに、心を打たれてしまったのだ。そして、私は、
「うん、大丈夫だよ、ありがとう。」
と、答えると、さらに、
「そう、よかった。今度からは、気をつけましょうね。」
という、さらに、さっきを上回るほどのきれいな笑顔に、これは決して大げさなことではなく、転んだ時の痛みが全くなくなっていた。
おそらく気持ちが癒されたことで痛みがまぎれてしまったのだろう。でも、この時のことは、今でもとても鮮明に覚えていて、気のせいでもなんでもなくて、この子の綺麗な笑顔から発している力が、フランソワの痛みを実際に消し去っていったのに違いないと思っていた。そして、フランソワは、この時の衝撃は、忘れられず、それがきっかけで、女の子の笑顔に癒されたことがとても気になっていたのである。そして、年齢を重ねつつ、様々な経験していく中で、この時の女の子のことだけが特別なことではなくて、女性のきれいな顔が、どれだけ人の心にプラスに影響するのかと感じるようになり、それは、ただ1人の男性としての異性に対する興味ということだけではなく、もっとさらに深いものであると感じて、女性の美人顔について、芸術的にはもちろん、様々な見地から、深く興味を示すようになったのだった。
そして、女性の美人の研究をする中で、同じ人間として男性のきれいな顔に対しても改めて向き合ってみたが、男女ともに調べた結果では、男性のきれいな顔と女性のきれいな顔では、やはり女性のきれいな顔の方が興味を示す比率が断然高い結果がでていた。しかし、そのことだけではなくて、男性の美貌については、また別の研究者が、どこかにいるならば、その方にお任せして、自分は、女性の美貌のみに、やはり、自分は、原点に戻って、女性の美人に焦点を絞って研究を続けていた。世界には、古代から、美にまつわる教典や書物なども様々、見つかっており、その歴史を語るだけでも、美人顔といっても、世界中の国々では、多様性があり、美人と称される顔には、違いがあり、ある国で美人と言われても他国では否定されるほどではなくても、その評価値は下がってしまうこともある。これは、好みというものが大きく影響されるせいで、人種によって、顔の作りは全く異なることがあるので、好みも異なって当たり前のことではあった。
しかし、他国の美人顔を好みではないが、美人と認める声は少なからずある。それは、歴史的にも言えることで、昔の美人顔は現在では好まれないこともあるが、美人だとは認められている。そこで、総合的に考えて、この多くの国々の見方や歴史的に見方が変化する中でも、それらをすべて超えて存在する究極の美人が世の中には存在しないのだろうか、と考えたのが、フランソワ高木の研究の究極のテーマであり、研究所を始めたきっかけになったのであった。
しかしながら、今回の、2ケ国の女性たちは、言い換えるならば、究極の美貌とも言える女性たちであり、フランソワの研究テーマにもっとも近い存在の女性たちである。たった今、両者がまさに生死をかけるに近いほど緊迫している状況であるのに、とても不謹慎ではあるのだが、非常に感激して興奮していたのであった。
両国のトップレベルの美を誇るプリンセス同士の対決が、今ここで行われている。その2人が、目の前で美しさのレベルが少しずつ上がっていて、両者ともに、その美しさをゆずらない状況が続いている。フランソワも美を追求する研究所の所長としての立場では、この2人の女性のうち、どちらがより美しいかという判断を最終的に行わなければならない。しかし、個人としては、もはやどちらも美しすぎて2人とも優勝ではいけないのだろうかという想いがある。まさに、以前、日本で行われた、オービスとエミリアの美の対決をそのままに、思い出させるのであった。しかし、お互いに、これまでの長い歴史の中で国の存続のかかった美の対決の重みを考えると、そうもいかなかったのである。




