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6-11 ドリームドリームドリーム11、、、エピソード最終話

 龍崎玲子の、その話しというのが、実に驚きの内容で、最初、聞いて、あまりに驚いてしまったオービスは、それを顔に出さないようにするのは、かなり大変だった。


「オービス、実は、聞いてほしいことがあるの。どうやら、私、フランソワ高木のことが好きになってしまったらしいの。もう、本当に、今のこの気持ち、どうしたらいいかわからないの。


 夢の中のあなたには、こんなことを言ってもわからないかもしれないけど、でも、言っても当たり障りのないあなただからこそ、話しているのかもしれないわ。」


 本物のオービスは、それを聞いて、なんと言ったらいいか、どうしたらいいのか、わからない。とりあえず、あまり神妙な表情でもいけないし、さしさわりのないような、ちょっと何言ってるかわからない的な、キョトンとした表情を貫いて乗り切ったようだ。


「今の私の正直な気持ちを言うと、この夢の中の世界が、私にとって、フランソワとの夢のようなひとときなのかもしれないの。だから、この夢を終わらせて、本物のオービスを襲わせるというのは、少しどうでもいいような気持ちになってきているのよ。このひとときが終わってしまうのなら、この夢が終わるのは、もっと先になってもいいとも思ってる。」


 龍崎玲子にとって、この夢の世界は、今までに感じたことのない甘酸っぱい世界になっていた。そして、人を愛する嬉しさと、人を愛する切なさ、そして、人を愛する苦しさを味わっているのだが、それ以上に、大きな幸せが身体いっぱいに感じられている。そして、それらのすべてを合わせた感情は、とても大きな切なさと感じられている。


 人を愛することって、とても嬉しいことであり、楽しいことであるというのに、同時にやってくる、切なさと苦しさというのは、人を心から愛した人でなければわからない。プラスでありながら、苦しく感じられる部分もある、本当に不思議な心持ちなのだった。


 そのような、心にあふれ出る、フランソワに対する愛する気持ちは、もう抑えようもなく、夢の中のオービスにぶつけてしまう。いや、誰かに、この気持ちをぶつけずにはいられなかった。しかし、この気持ちを人に伝えたい気持ちがありながらも、一方で、人に言うのは恥ずかしすぎる。その意味では、この気持ちを聞いてくれながらも、よくわかっていないように見える、夢の中のオービスは、今の自分に1番寄り添ってくれる人であった。


そして、その後、改めて、フランソワ高木が本物のオービスから、龍崎玲子の自分への思いを聞いた。


「そうだったのか。龍崎玲子には、自分に対して、そんな気持ちの変化があったとは。もしかしたら、その気持ちが、この事態を解決に導けるきっかけになるかもしれない。」


その頃、龍崎玲子は、自分の睡眠の研究のことから、理科室に興味があり、何年も人が入っていない理科室で、様々な資料や器具を見ていた。すると、奥の倉庫でなにやら音がした。そして、その入り口の扉を見ると、不自然にもモップをつっかい棒にしてあった。


すると、そこに駆け寄って、扉をたたきながら、

「中に誰かいるの。返事をして。」


すると、

「あっ、よかった。オービスです。閉じ込められているの。本物が来ているわ。私と入れ替わっているはずよ。」

「なんですって!とにかく、今、だしてあげる。」

扉を開けて、夢の中のオービスを解放して、話しを聞くと、どうやら、数日前から入れ替わっていて、フランソワ高木への思いを、すべて本物のオービスに聞かれてしまった。

ということは、そのことを本人にもしゃべったに違いない。


 龍崎玲子は、この上ない恥ずかしさでどうしようもない気持ちになった。すると、そのあと、まったく逆の怒りの感情が湧き上がってきた。

「よくも、よくも、私に、こんなに恥ずかしい思いをさせてくれたわね。本当に、ただじゃおかないわ。おぼえておきなさいよ、フランソワ高木!」


すると、このあと、龍崎玲子は、何も知らないフリをして、自分の評価をしてほしいと、持ちかけてきた上、この夢を終わらせると、うその宣言をして、最後に、フランソワから、オービスの可愛い評価を上げるためのポイントを聞き出したのである。


「とうとう、あなたの1番可愛い評価をあげる弱点を聞き出すことができたわ。さっき、これで、夢を終わらせると言ったことは、本当よ。ただね、フランソワ高木、あなたが本物のオービスを刺すことでね。」

「なんだって!私をだましたのか!」


泣きながら叫ぶ龍崎玲子、


「何を言うの!あなたが先にだましたくせに!その上、私の気持ちを聞いたなんて、こんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてよ!

それに、今、言った、私の気持ちに寄り添った評価も、どうせご機嫌とるためのうそなんでしょう!」


「それは違うぞ!私は、どんな時でも、女性の美に対して、決してうそは言わない!本当の評価なんだ!」

「もう聞きたくないわ。こちらのオービスの最後のアピールを始めるわ。その前に、そこの本物のオービス、現実に帰ってちょうだい。あなたが戻らないと、あとからフランソワが刺しにいけないからね!早くしないと、2人とも脳死にするわよ!」

「わかったわ、じゃあ所長さん、ごめんなさい、私、帰ります、、、リターン!」

一瞬のうちに、消えたオービス。


実は、フランソワ高木は、本物のオービスから聞いていた自分への思いのことが、頭から離れないでいた。そして、その直後に、この夢を終わりにしたいという今回の申し出を聞いたのであり、自分への思いから、もうこれ以上は悪いことはやめようと改心したに違いないと感じていて、結局、龍崎玲子の人を愛する気持ちがこの事件を解決に導いたのだと、感慨深い気持ちになった。


そして、それと同時に、自分から改心したのなら、許してもかまわないと感じて、最後には、龍崎玲子への気持ちに寄り添っていたのであった。そこには、改心して詫びる龍崎玲子がいる。それならばと、気を許してしまうフランソワ高木であった。


しかし、その寄り添う気持ちを逆手にとられて、まんまとオービスへの可愛い評価に対する弱点を誘導尋問されてしまったのであった。


「龍崎玲子、君は、さっき言ったじゃないか。もう、これで夢は終わりにするって。こんなこと、もう終わりにしよう。今からなら、充分にやり直せる。お願いだ。」

「いやよ。本物のオービスが、私の気持ちをあなたに伝えて、2人で私の気持ちを踏みにじったのよ。さあ、オービス、最後のアピールよ。」


すると、オービスは、フランソワ高木の前まで進み出た。すると、

「所長さん、私、今まで、色々とお世辞になってきて、本当に感謝しているの。今日まで、こうしてやってこられたのも、、、、。」


 なんだか、淡々と話し始めたオービスは、これまでのことを、なぜか語り始めた。様々な美の対決のこと、エミリアとの対決で所長との初めての出会いや、その中でのこと、その後のことなど、その言葉は尽きない。所長である私も、こんなところで、いったい何を言おうとしているのか、どうしてしまったオービス、という気持ちも、正直生まれてきてしまっていた中、その言葉が少しずつ自分の中に入ってきて、このオービスは、本当に本人ではないのだろうかという気持ちにもなってきた。


 これまでのことを語るオービスの心の中には、様々な喜びや幸せ、そして、感謝の気持ちがあふれてきて、懐かしく思いながらも、やはり感謝があふれて、私の胸に突き刺さる。側では、意外すぎる発言に、煮え切らない思いの龍崎玲子。もはや、本人かと見まごうばかりの、夢の中のオービス。


 所長である私も、現実のオービスが入れ替わってしまったかのような、本人の気持ちがリアルに伝わってきて、そのオービスの世界への没入感が高くなっている。感極まるような気持。本当にオービスとは、色々なことがあった。だけど、オービスも、これまで、トップモデルに上り詰めるまで、なんの苦労もなく上がってきたように一般には思われているようだが、それなりに悩んだり苦労があったことは知っている。だが、若いのに頑張ってきた。しかし、そこまでの、思いがけないオービスの発言には、もはや、苛立ちを隠せない龍崎玲子。


 そして、言葉少なになってきて、フランソワ高木を、じっと見つめる、夢の中のオービス。すると、その頬をつたい流れる一筋の涙。そして、ゆっくりと微笑みの表情になるオービス。


 その瞬間、フランソワ高木は、すべてを理解した。

このためだったのか!これまで、私との様々な思い出や感謝の言葉、様々な回想のような長い話しは、私を自分側に感情移入させるため、自分側に引き入れるためだったのか!


 しかし、知るのは、もう遅い!実は、夢の中のオービスは、2人に閉じ込められて嫌な思いをした仕返しに、必ず可愛い評価の数値を、今度こそあげてやろうと心に決めていて、龍崎玲子と話し合い、フランソワ高木が最高に可愛いと感じられるというポイントを聞きだすための計画を企てていた。それが、龍崎玲子は、改心したと見せかけて油断させたところへ、その本音を聞き出して、そのポイントをついて逆襲するという確実な手順を組んでいた。


しかしながら、その、夢の中のオービスの、長い話しをして引き込んでいくという、そこまで考えたやり方を知らされていなかった龍崎玲子は、途中、少し不安になり、どうしたのかと思ったのだが、今、まさに、フランソワ高木と同時に、そのわけを知って驚愕するのであった。長い話しでフランソワ高木の感情を限界まで引き込んでからの、そのエネルギーを溜め込んでからの、一筋の涙とその笑顔の最大放出には、フランソワ高木は、もはや動揺を隠せなかった。


だが、いまさら気がついても、もう遅かった!自らが明らかにした可愛いさの弱点。もはや、攻められれば、確実に崩されることが明らかなその一点に、夢の中のオービスは、持てる感情のすべてを注ぎ込み、可愛さを大放出させたのだ。


 その一筋の涙と微笑みは、とうとうフランソワ高木の可愛いと感じる中枢に踏み込んでいく。そして、その顔がキラキラと輝いて見えてきて、我を忘れていくフランソワ高木。

なんて、さわやかで可愛い笑顔なのだろうか。本当に、思わず、我を忘れてしまっていた。


すると、おーっ、と、一瞬、気が抜けてしまい、その隙に、その魅力が、私の全体を包み込んでいく。

すると、その数値は、1、2、3、と上がっていく、、、。そして、とうとう、その数値が90に達してしまった。ああああっ、しまった!意識が、、、意識が遠のいていくーーーっ、しまった、、、。意識が、意識が消えてゆくーーーっ、、、。


「よくやったわ!オービス!」


 睡眠脳科学研究所の一室にあるドリームメーカーのモニター表示、ドリーム起動終了の文字の表示とともに、そのアナウンスが流れた。そして、続いて、リアルアクト実行、の文字と、アナウンスが流れる。すると、そのベッドの金属の留め金が、すべて音を立てて、次々とはずれてゆく。通常の意識は失われたまま、フランソワ高木は、目を覚まし、ヘッドセットをはずすと、ゆっくりと起き上がり、ベッドから降りて立ち上がる。

そして、なんと、今までフランソワ高木の見せられていた夢は、実際にはわずか半日ほどの間の出来事だったのだ。

ドリームメーカーから目覚めた、最後のプログラムは、ただ1つ、オービスのもとに向かうことのみである。すると、スーツに着替えを済ませ、何かに取り憑かれたかのように、駐車場へと急ぎ、車に乗るが早いか、すぐに走り出す。すでに、どこに向かうか、指示をされたかのように。


その研究所の別室では、同様に、ドリーム終了となり、覚醒します、のアナウンスとともに文字が現れて、龍崎玲子が目を覚ました。ヘッドセットを頭から取ると、駐車場へ行き、フランソワ高木の後を車で追う。


ある大きなイベント会場では、モデルラボのパーティーが行われている。その会場に向かう、1台の車。そして、続いて、もう1台。その駐車場に、急ブレーキとともに、無造作に停まり、無表情のまま、車から降りたフランソワ高木は、全力で会場へと突っ走る。


そこには、招かれた観客を含め、200名以上の人たちであふれていた。扉を開けたフランソワ高木は、そこからは、ゆっくりと、中央舞台に向かって歩いていく。そして、中央舞台には、ドレスを着たオービスが立っている。そこへ向かっていくフランソワ高木。もはや、通常の意識ではない。


途中、会場の料理などのある、ナイフやフォークも並んでいるテーブル、そこから、おもむろにつかんで、オービスに向かっているフランソワ高木。

夢から戻ったオービスは、フランソワ高木が、いつか自分の元にくることを心配していたが、今、それに気がついた。その時、すでに、遅く、フランソワ高木は、すぐ目の前に来ていた。そして、いきなり、オービスの胸の真ん中に向かって、突き立てた。


あまりの驚きにオービスは、声がでない。


すると、観客は、大歓声をあげた。と、同時に、フランソワ高木自身が、完璧にオービスの胸に突き立てたことをしっかり確認したことで、ドリームメーカーの行動プログラムが完全終了に入り、フランソワ高木の意識が少しずつ戻っていく。すると、ドリームメーカーのプログラム通りに、それまでの記憶を失っていく、フランソワ高木。


すると、オービスは、震えている。あまりのことに、驚きのあまりに、動けないオービス。


すると、何が起こっているかわからない観客。しかし、会場からは、拍手喝采。と、同時に、会場にギリギリで滑り込んだ実務計子。


すると、


「なんとか、ギリギリ間に合ったのね。ドリームメーカーの、その行動プログラムは、変更はできなかったけど、1つだけは、変えることができたようだわ。胸に突き立てるはずだったナイフを、一輪のバラに変えることにね。よかったわ。」


今日は、オービスのモデルラボ独走の感謝祭が催されていた。すると、オービスは、その胸のリボンにしっかりと刺されたバラを手にとって、感激のあまりに、しばらく動けなかったが、笑顔で喜びとともに泣きながら、


「あ、ありがとう。」


フランソワ高木に抱きついたオービス。その一輪のバラを刺した瞬間に、正気に戻ったフランソワ高木は、睡眠脳科学研究所に、最初に訪れてからの記憶は、一切なくなっていた。気がつけば、パーティーの舞台上で、オービスの嬉し泣きを目にして、驚くフランソワ高木。そして、その嬉し泣きのオービスを見たあと、抱きしめられた彼のオービスへの可愛さ評価値は、たった今、もう1ポイント上がったに違いない。



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