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1-6 対決の行方

結果は、やはりセシルの勝利ではあったが、オルガとの勝敗は僅差であり、審査員には、これほど質の高い勝負は今までかつてないと絶賛された。だが、僅差とはいえ、敗北には、違いない。


両者とも疲れ切った様子で、ハグをする2人。セシルは、感動の涙を流し、オルガは悲しみの涙を流した。そこへ、駆けつけるコスメ。両手に、冷えたペットボトルを持ち、2人に手渡し、ねぎらった。


「お疲れ様。2人とも、本当によかったわよ。喉がかわいたでしょ。さあ、飲んでちょうだい。」

蓋を開けて、ぐっ、と飲み干す2人。2人の肩を抱いて、思わず泣き出すコスメ。すると、次の瞬間、悲鳴のような叫び声があがり、

「あああああーーっ!」

そう叫びながら、倒れるセシル。

しばらくして、ゆっくり立ち上がり、

「ごめんなさい、オルガ。私の、たった1人の、大切な妹!」

なんと、記憶が、戻ったのだった。

「ごめんなさい。私、たった今、すべての記憶が戻ったわ。オルガ、心配かけたわね。本当に、これまでごめんなさい。私は、もう大丈夫よ。」


今、コスメがセシルに手渡したペットボトルの中身は、美と命の水が混ぜてあった。オルガが2週間前に飲んだ時に、巡ってきた過去の美の戦いの 記憶、これをエレンが飲んだら、もしかしたら、記憶がもどるかもしれない。

オルガは、2週間前に、確かに水を飲み干したが、この水については、どんなに多く飲んでも、最後にはスプーン一杯程度、必ず瓶に残すことが鉄則となっている。それは、なぜなら、その一杯分だけ残れば、水は、それ自体の持つ再生力によって、瓶がいっぱいになるまで再生するのである。オルガは、ほとんど飲み干したが、意識を失った2週間の間に再生したので、それをペットボトルに1本だけ少し移して、始まる前にコスメに託し、終わったら、どちらが勝ってもこれを2人に渡して、飲むようにすすめてほしいと頼んだのであった。

実は、オルガが、あの水を飲んだ時、これまでの過去に起こった美の戦いが見えたように思えたので、エレンがこれを飲めば、そのことから必ず記憶を取り戻すに違いないと思い、コスメに託したのであった。


この水のおかげで、エレンの記憶が戻ったのだった。数年ぶりに、再会した、エレンとオルガの姉妹は、抱き合って、涙が止まらない。


しかしながら、黙っていないのは、企画担当者の図類である。

「確かに、オルガは敗北したが、このイベント前に、私が今度始める新事務所に2人共、入ることを、契約を交わしているからな。今の、セシルを見たか、オルガを見たか。こんなすごいモデルがうちに来るんだ。約束は、約束だぞ。」

それを聞いて、コスメは、

「そんなこと、契約書もないのに、そんな勝手なこと、できるわけないわ。」

と、図類の気持ちをあおった、すると、

「なにをいう!これをみろ!契約書が、この通り、あるからな!ここの2人の署名をみろ!お前たちの負けだ!」

すると、すかさず、コスメが、

「蓮津さん、今よ、早く!」

「よし!」

言うが早いか、契約書を取り上げる蓮津。

「おまえ!何をする!」

速攻で契約書を破り、エレンとオルガの手をとった。

「蓮津さん、早く2人を逃がしてあげて!お願いよ。行くところは、オルガが知ってるわ。」


コスメは、勝ち誇ったように、

「もう、すべて終わりよ、図類さん。お望み通り、この事務所をやめさせてあげるわ。今回の悪事とともにね。セシルとオルガは、今、国に帰したわ。もう2度と、私たちの前に姿を見せないで!」

用意してあった車に、2人を乗せた蓮津は、すぐに、急いで車をだし、去っていった。コスメは、それを感慨深い気持ちで見守っていた。


着いた場所、ここは、最初にエレンが流れついた島戸海岸である。蓮津とエレン、オルガの3人は車を降りて、海の方を見ると、なにやら、ごう音と共に、海が波立ち、水面からは、ゆっくりと長い突起物のようなものが現れて、続いて、その下の黒い巨大なものが姿を現わした。コトールルミナス国からやってきた最新鋭の潜水艦であった。海岸の近くまでくると、上部のハッチが開き、岸まで長い通路のようなものが伸びてきた。すると、1人の高身長の女性が降りてきた。これが、また超美人である。しかし、これが彼らにとって普通のレベルであった。今更ながら、このことからも、エレンとオルガの美人ぶりが如何にトップレベルなのかがわかるだろう。


「プリンセス エレン、ご無事でなによりでした。オルガも、本当にお疲れ様、よくやったわね。」

「まあ、管理官自らお出迎えなんて光栄です。この度は、本当にお騒がせしてしまって申し訳ありません。」

「とんでもありません。私たちの手が及ばず、こんなにまで年月がすぎてしまって、こちらこそ、申し訳ありません。」

「それにしても、私が記憶を失うなんて、こんなことが起こるなんて、信じられません。」

「仕方ありませんね。絶対にありえないことが起きてしまったのです。それにしても、プリンセス エレン。美の対決は、見事でしたわ。さすがです。でも、美と命の水を飲んだとはいえ、オルガもすばらしかったですね。さすがに、美のトップレベルの姉妹です。」

すると、オルガは申し訳なさそうに、

「今回は、たまたまうまくいっただけで、私は、とても任務を果たしたとは言えませんわ、管理官。」

すると、とんでもないという表情の管理官、

「いいえ、そんなことはありませんよ。オルガが機転を利かせて、あの水を飲ませなかったら、プリンセスの記憶は戻らなかった。すばらしい判断よ、感謝するわ、オルガ。」


一方で、3人の会話に、信じられない表情で聞いている蓮津。管理官は、それに気づいて、

「蓮津さんといったわね。この度は、色々とありがとうございました。本当に、お世話になりました。もう、あまり、時間もとってられないわね。最後に、大切なお話しをしましょう。」

大切な話しと聞いて、驚くオルガ、一方で、悲しみの表情になるエレン。

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