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5-8 無敵のモデル アイリスの秘密⑧

さて、実務計子、こと、本名 エテリア・フローラル・レオニールは、美警察総本部において、総指揮官を務めていた。


美貌がその命よりも価値があるこの国では、美に関する怪しい情報や、違法な美貌など、それらの情報に敏感に動き、取り締まる美警察は、コトールルミナス国の最大規模の行政機関なのである。美警察は、その名の通り、国の最も重要な女性の美に携わることなので、その所属する者たちは、全員女性であり、その任務には相応しい、超美人揃いで、18才から30才までの女性たちである。もっとも、この国のこの年齢制限でも、見た目は、18才からせいぜい20才過ぎくらいまでにしか見えないのではあるが。


エテリアは、美警察において、わずか数年にして、若くしてトップの座についていた。美警察の主な仕事は、虚偽美貌をした者や、その他、軽犯罪として、女性の美を軽視した態度や発言をした者たちの取り締まり、などである。なんといっても、トップは、虚偽美貌のケースである。それは、美の極みの称号に認定されるために、虚偽美貌を行なう者たちが後をたたない。もちろん、様々な美容法などを駆使して、自分を磨き上げることで、容姿というのは、ある程度高めることはできるので、そこまでは認められているのだが、美容整形や、顔にメスを入れるようなことでレベルを上げることは、もちろん、また、もっとそれ以上に悪意のある様々な方法で、自分の美貌を、国から認められるだけのハイレベルに上げて魅せるために、虚偽の美貌を作り上げて、美の極みの称号を認定させようもする者たちがいる。


それは、認定された者は、肉体が消滅するまで、生涯、働かなくても充分に生活ができる美諾金を受け取り続けることができるからなのである。多くの者たちは、犯罪と知りながら、働かなくても生活が生涯保証される虚偽美貌に手を染めてしまう。 


その方法は、年々手が込んでいて、虚偽であるか否かを判断することがさらに困難になっている一方で、美警察本部も捜査の方法が、次々とレベルアップしていて、双方共に、まさにイタチごっこという現状なのである。


ここで、エテリアが、なぜそんなに若くして、美警察の頂点に上り詰めたのかというと、それは捜査の判断の的確さにあった。毎日のように増え続ける虚偽美貌の数々は、疑われているものすべてが、虚偽美貌であるかというと、決してそうではないのだが、もちろん、その美貌が本物であることも含まれている。


だが、万が一、誤認逮捕をしてしまった場合、その本当の美貌を疑ったということで美警察側の侮辱罪が成立してしまう。それは、決して行なってはならないことであるが、その誤認逮捕された人物は、ブラックリストならぬ、ホワイトリストに登録されて、これ以降、美警察は、この者に決して、その疑うことは出来ず、今後この者には、決して関われないことになってしまう。


そして、この後で、万が一、この者が、本当の虚偽美貌を起こして、そのまま美の極みの称号を認定されることがあっても、もはや、それは捜査不可能なのであるから、虚偽なのかどうかは、不明のままになってしまう。ということは、美警察にとって、誤認逮捕は、決して行なってはならないことなのである。ホワイトリストは、決して増やしてはならない。だからこそ、美警察の捜査に、的確さが要求される。


だが、エテリアは、決して誤認逮捕を起こすことはない。それどころか、これまで500件以上について、ノーミスできたばかりか、その捜査内容の的確さが、他の捜査員たちと比べると、信じられないほどの的確さと高レベルなのであった。


ある時のこと、虚偽美貌の疑いがある女性5人が、美警察本部で事情聴取をされていた。あくまでも、疑いをかけているのではなく、事情聴取という名目で、話しを聞いていた。


すると、すでに、総指揮官となっていたエテリアは、現場で以前のように活動することはなく、自分1人で捜査をして、この事件のここが怪しいというところまでを調べた上で、多くの捜査員たちに伝えて、あとは任せるという立場になっていた。


この日は、たまたま用事があって、美警察本部に立ち寄っていた。すると、その時の取調室の担当者から、


「総指揮官、お疲れ様です。この5人ですが、総指揮官から伝えて頂いた情報から浮上した人たちなんですが、私としては、真ん中の女性がちょっと綺麗さが際立っていて、とても不自然だと思うんですが、いかがですか。少しだけ、総指揮官のご意見をお伺いできたら幸いです。」

「そうね。私から伝えた情報からだと、他にはいなかったかしら。」

「そうですね。他にもいたんですが、あっ、今、あそこにいる、付き添ってきた女性で、とても綺麗な人ではありますが、他の情報が全く完璧だったので、シロにしました。総指揮官から見て、この5人は、いかがですか。」

「どうやら、この5人は、シロよ。帰ってもらっていいわよ。」

「ええ、いいんですか。わかりました。」

「あなたたち、もう事情は聞きましたから、お帰り頂いてけっこうですよ。」


すると、「なによ、こんなところまで呼んで。」とか、「時間の無駄だったわね。」とか言って、ざわついている。後ろにいた付き添いの女性も、「全くいいかげんね。」とか文句を言っていた。すると、エテリアは、その、今、まさに帰ろうとする、付き添いの女性に声をかけた。


「ごめんなさいね、余計に時間を取らせてしまって、、、。」

と言いつつ、その女性の頬の辺りに手をかけるエテリア。


すると、顎の辺りをつかんで、

「痛いわ!何をするの!」

だが、つかんだ手を離さないエテリアは、そのまま、手前に思い切り引っ張っていく、同時に、悲鳴をあげる女性。

「や、やめて!やめてちょうだい!」

次の瞬間、女性の顔全体が、ベリベリと音を立てて、剥がれていった。思わず、顔を押さえながら後退りする女性。

「虚偽美貌の現行犯で逮捕ね。」

「ああ、まさか、この女性だったのね。」

担当者は、驚いて、逃げようとする女性の腕をつかんだ。

「なんでわかったの!もう少しだったのに!」

「審査員全員がわからなくても、私の目はごまかせないわ。さっきからどうも皮膚呼吸が、通常よりも数パーセント落ちていたように見えて、おかしいと思ったのよ。やっぱり、こういうことだったのね。最近の特殊ゴムのマスクは、毛穴まで再現されていて、精巧にできているけど、皮膚呼吸が、100%とまではいかなかったわね。」


すると、他の捜査員たちもやってきて、

「すごい。さすがだわ、総指揮官。私たちでは、絶対にわからなかったわ。」

このように、巧妙に仕組まれている虚偽美貌の件がまた1つ、総指揮官によって解決された。その度に、他の捜査官から、その観察力の的確さが称賛されて、常に尊敬の念が尽きないのである。


しかし、今回の、あの実を食べて、美貌を失ったことは、彼女の立場を脅かす事態となってしまった。それは、もはや美警察に所属する立場で、ましてや、その頂点に立つ者として、美貌を失ったことは、自らその地位を退く以外の選択は、彼女にはなかった。今回のことは、不慮の事故であり、プリンセス直々に、そのままの立場に留まっていてほしいとのメッセージまであったのではあるが、自分はそれを許せなかった。所属する捜査員たち全員の、続行してほしいという申し出も受け入れられず、その地位を自ら去ることと決めたのである。

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