4-10 管理官の対応、、、エピソード4.最終話
拝啓 小染真希様
この度は、国の者が大変ご迷惑をおかけしました。同封のカプセルは、お知らせ頂いた43人分の43錠ちょうど同封いたしました。これは、飲用することに際して、間違えて2錠飲んだり、他の人が誤飲することなく、よく注意して頂きまして、必ず、全員の手に渡ったことを確認して頂いたあと、全員一斉に飲んで頂きたい。何か間違いを起こしたり、何か不具合が生じることがあったとしても、その場合は、全く対処できかねるのと、これ以外には、予備はございません。その点につきまして、よくよくご注意下さい。宜しくお願い致します。
その後、43人全員の事務所に連絡をして、全員をモデルラボに集合のお知らせをした。そして、改めて、全員の名簿と本人確認を行ない、改めて、顔と名前を確認しながら、本人に、カプセルを1錠ずつ渡していく。そして、コスメが、掛け声をかけて、全員一斉、カプセルを飲みほした。
全員飲み終わると、わずか30分ほどで、個人差はあれど、身体に変化が起き始めた。見た目にも活力が湧いてきた人、さらに綺麗になっていく人、肌の改善が劇的に始まったいうよりも、失った時以上にオーラは回復して、さらに、美しさが増しているモデルが大半であり、かえって喜ばれるという予想外のことが起こっていた。
業界内では、それなら、自分も犠牲者になりたかったなどというコメントも多くあり、一時は、別の意味で混乱となっていた。所詮、なくしたオーラの程度など、測れないので、管理官は、なくしたもの以上に影響を与えることもあることを承知の上で、回復するカプセルを用意していたのである。そこでの、さらなる美しさを得たモデルたちの評判を聞いたステラは、さらにこの業界を憂いでいたのであった。
コスメは、オービスを通じて、国の管理官にお礼の連絡をしたが、元々この国の人間の起こしたことで、我々にしか解決できない問題であったので、気にしないでほしい、と、かえって恐縮していたということであった。
この件については、無事に、というか、とりあえず解決をみたが、ステラの気持ちは変わらない。
とにかく、今回、このモデル業界のことを知り、失望したステラは、この業界を混乱させるためには、この業界にモデルになって入り込むこと以外に方法はない、と、最初に決意をしていた。しかしながら、この、女性の美しさを価値の高いものと扱う、この業界に、この業界を嫌う自ら、この業界に乗り込むということに、今回、ステラは、どれだけ嫌な思いをしながら、決意をしなければならなかったか、それは、誰にも理解できなかったであろう。そして、どれほどまで嫌な思いがある、この業界の中で、ランキング上位に入り、仕事をこなす度に、悲しみがあふれ、内に秘めたままで我慢していたとはいえ、一筋涙を流したのだということである。それこそが、悲しみの天使、となっていた理由であった。
その後、ステラは、もはや、この業界にいる意味がなくなった今、鉱物研究所へと戻っていった。その類まれなる美貌には、コスメを含めた、多くの業界関係者が業界に残ってほしいとの説得したのだが、それにもかかわらず、モデルには戻る気は全くなかった。そして、鉱物研究所に戻っていったのも、女性の美を、比べることのできない命よりも尊ぶ母国になど、全く未練はなく、母国へは2度と戻る気もなかった。ステラは、もう日本人として、その人生を全うしようと固い決意をしたのであった。
それから、1週間もたったであろうか。ステラは、寝ていると、ある夢をみた。
それは、光の射すところに人がゆっくりと現れてきた。そこには、女性が立っていて、とても優しい穏やかな顔をしていて、こちらをみている。
すると、
「ステラ、ステラ、どうかこちらを向いて。ゆっくりと目を開けて、こちらをみてちょうだい。」
それは、聴き覚えのある、その方向に向き直ったステラは、
「お、お母さん、お母さんね。来てくれたの。私に会いに来てくれたのね。」
「ステラ、元気そうで何よりよ。あなたに会えて、本当にうれしいわ。」
「お母さん、お母さん、本当に会いたかった。」
ステラは、お母さんの顔がよく見えないくらいに、泣きはらしてしまった。
「ステラ、今日はね。どうしても、ステラに伝えなければならないことがあって、特別に、こうして会いにくることを許してもらったのよ。ごめんなさいね、時間もあまりないけれど、ちょっと聞いてちょうだいね。」
「わかったわ、お母さん。わざわざ、こうして来てくれるなんて、とても大切なことなのね。」
「そうよ。あなたは、私たちの国の、女性の美しさというものを、命よりも、なによりも尊ぶことをとても嫌がっていたでしょう。それで、日本に移ってきて、ここで生涯を送ることに決めたのよね。」
「そうよ、日本人は、美しくいることよりも、命を大切に思って、家族が長く一緒に暮らすことを幸せと感じているの。だから、私も日本で家族を持って、長く幸せに暮らしたいの。」
「よくわかるわ。ただね、あなたは、コトールルミナス人だから、だいたい40才くらいで消えてしまうのよ。そして、日本人は、その2倍くらい生きるの。そうしたら、残された家族は、どんなに悲しむか、あなたにわかる?わかるわね、お母さんの言いたいこと。」
「それは、私が日本で幸せにはなれない、国に帰った方が良いってことね。」
「そうよ。その通りよ。どんなにあなたが望んでも、日本人として、長く家族ではいられないのよ。」
「私、自分の寿命のことまで考えてなかったわ。」
「よかった。理解してくれて。国に帰ってくれるわね。それがあなたにとって1番幸せなことよ。」
「わかったわ。お母さんが、わざわざ、それを言うために、こうしてきてくれたんですもの。言う通りにします。国に帰ることにするわ。安心してね。」
「ありがとう。私の言いたいことは、それだけよ。お許しを頂いて、きた甲斐があったわ。じゃあ、元気でね。これで、もう会うことはないけれど、お母さんは、向こうの世界から、いつでもステラのことを見ていますよ。」
「さようなら、お母さん、来てくれて、ありがとう、お母さん、さようなら、、、。」
止まらない涙を流しながら、手を振るステラ。光の中にゆっくりと消えてゆく母を見送るステラ。すると、泣き疲れて、いつの間にか寝てしまった。
気がつくと、朝になっていた。
「ああ、私、夢を見ていたんだわ。でも、とてもリアルな夢。お母さんは、夢に出てきて、また会いにきてくれたなんて、こんなにうれしいことはないわ。早速、帰国の準備をするわ。」
すると、早速、このことをコスメとオービスに伝えると、
「そう。お母さんがね。夢枕に立ったのね。そういう話しは、聞いたことがあるけど、本当にあるのね。不思議なことってあるものね。」
すると、オービスは、
「でも、よかったわね。私もそれがいいと思っていたのよ。それでは、私から、迎えが来るように連絡しておくわ。」
「ありがとう、オービス。お願いね。」
そして、数日後、モデルラボの屋上に、迎えの特殊ヘリコプターがホバリングした状態で待機した。その扉が開くと、ゆっくりとハシゴと共に降りてくる女性の、あまりの超美人ぶりに、見送りに来たコスメは、度肝を抜かれた。思わず、モデルになってほしい、という言葉が口から出そうになった。これは、コスメが、美人を見るたびにクセになっていることである。
すると、ステラは、深々とお辞儀をして、
「なんと、管理官自らお出迎えなんて、光栄の極みです。」
「いいのよ、ステラ、あなたの両親の生前の研究の成果からすれば、このくらいは当たり前のことなのよ。それじゃあ、荷物を持って先に乗っていて下さいね。」
「わかりました。コスメ、社長さん、本当に、ご迷惑をおかけしました。オービスにもよろしく伝えて下さい。宜しくお願い致します。本当に、お世話になりました。」
すると、手を振りながら、ヘリコプターに乗り込むステラ。
すると、コスメは、管理官に聞きたいことがあった。
「今回は、あのモデルたちに、オーラ回復のカプセルを送って頂いて、ありがとうございました。あんなものがあるなんて、すごいですね。」
「そんな、とんでもないです。こちらこそ、色々とステラがご迷惑をおかけしましたね。そのことについて、私からお詫びをしたかったから、私が来たのです。もちろん、ステラのしたことは、よくないことなので、もちろん帰ったら、とりあえずよく聞かせて話しをしますが、日本国内では、罪にならないけど、母国の法律ならアウトでしょう。それに、母国では、美警察なら逮捕ですね。だけど、これは日本で起こったことだから、母国の法律は適用されません。よっての無罪放免になるかと思います。まあ、私からは、きつく言っておくから、本当にごめんなさい。だけど、あの子は、鉱物研究の才能は、国で管理したいほどのレベルだから、その後は、たぶん国で管理している大規模な研究に入れると思うわ。」
「ところで、あのカプセルですけど、、、。」
「ああ、あのカプセルね。オーラを回復させた、、、。」
「本当、驚きました。そんなものがあるなんて。専門家のステラでさえできなかったのに。」
「ああ、あれですね。そんな、オーラ回復のカプセルなんてないですよ。」
「えっ、じゃあ、あれは、なんだったんですか。」
「私もね。ステラのやったことを聞いて、どうしようって思って、何かないかって考えたのですよ。それで、あれは、苦肉の策だったんです。実は、こっそりと、美と命の水を持ち出して、空のカプセルに、1滴ずつ詰めたものです。日本人の持つオーラなら、そこまで大きくないから、大丈夫かなと思って。結局、元よりも良くなって、さらに綺麗になった子が多かったみたいですね。そんなことになるとは思わなかったですけれども、皆、喜んで頂けたようなので、よかったです。水を持ち出したのは、内緒ですけどね。わかったら、私が怒られちゃうわ。」
「そうだったんですね。すごいアイデアだわ。それに、とにかく、ステラのお母さんが夢に出てきてくれるなんて、あれは、タイミングといい、本当によかったわ。あの夢がなかったら、ステラは、帰国を考えなかったでしょうね。」
「ああっ、あれですね。あれは、私よ。」
「えっ、ど、どういうこと?」
「だって、ステラは、もうお母さんの言うことしか聞かないでしょ。だから、私がお母さんの映像を作って、あの子の夢に投影したのです。もちろん、お母さんの吹き替えは、私がやりました。なかなか、よくできてたと思います。私、自分で言いながら、感動して、ステラと2人で泣いちゃいましたよ。でも、かえって効果てきめんだったわ。本当によかった。」
「ええっ、すごいこと考えるわね。」
「そうね、まあ仕方ないわ。私たち、コトールルミナス人には、普通、美よりも命の方が大事だなんて、とても理解できないですから。だけど、稀にいるんですよ、ステラみたいに考えている人が。だけど、それは、同じ国に住んでいて、本当にかわいそうだと思うわ。」
すると、ステラが、ヘリコプターから顔をだして、
「もうそろそろ、出発しましょう。」
はっとする、管理官とコスメ、
「わかったわ、ステラ。今、行くわ。」
「それじゃ、これで帰ります。オービスもそちらにいることだし、いつかまた、お会いできる機会があるかもしれないわね。」
「そうですね。またの再会をお待ちしていますわ。」
「そうね、ただ、日本に来た管理官は、私は、初めてで、最初に来た管理官から、3人目です。次に来る時には、もう私も消えてしまって、4人目かもしれないですけどね。話しが長くなったわ。では、ごきげんよう。」
管理官が乗り込むと、あっという間に、ヘリコプターは飛んでいってしまった。
すると、事務所に戻ったコスメは、実務と話しをしていた。
「実務さん、結局、実家でご両親から言われて、ステラは、国に帰ることになったのよ。ぜひ日本で、モデルを続けてほしかったわ。本当に、うちの事務所にほしかったのにね。」
「ステラは、あれほど日本に住みたがっていたのに、残念ね。」
「でも、お母さんがステラのためを思って、帰ってきてほしかったんだから、仕方ないわね。これでよかったんだと思う。」
すると、実務計子は、悔しそうにつぶやいた。
ステラが、もしもどんなことをしてまでも、そこまでも望んでいるのなら、私なら、一生、日本で暮らさせてあげることができたかもしれないわ。まあ、でも、これは、もう、本当に、最後の、最後の手段ではあるのだけれども。




