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1-5 オルガの変身

そして、いよいよ、2人のランウェイ対決が2週間に迫る中、預けた水をコスメから受け取り、自宅に持ち帰るオルガ。実は、この、美と命の水は、王位継承の際に、いつも儀式で使用していたのではあるが、美の対決に対して、究極の美を手にする目的に使用するのは、実に五百年ぶりであった。そして、まさか、五百年ぶりに使うのが、プリンセス相手に、味方同士戦うことに使われようとは、コトールルミナス人は誰1人として想像だにしなかったであろう。それに、今生きているコトールルミナス人の中には、その水の力を誰も見たことがなく、その効果を確かめたことはない。


つまり、これはあくまでも伝説にすぎないという疑いもあるのだった。この水の効果については、本当に賭けであった。確かに、これを飲んで、たとえ効果があったとしても、究極と言えるほどの効果を生むものなのだろうかという懸念もある。また、最悪の場合には、ただの水であったという可能性もなくはない。オルガは、プリンセスを帰国させるためには、まだまだいくつもの難関を抱えていることを、改めて実感した。しかし、もう後戻りはできない。ここまできたら、国から遣わされた自分が、すべてを解決していかなければならない。そう、新たに決意して、その水を飲んだ。


そして、その水は、飲んでみると、ただの普通の水のように、無味無臭であり、しばらく待っても何の変化もない。ただの水を飲んだ時と、何の違いもなかったのである。しかし、たった一つだけ、数分後に、自分の心が静まっていくように感じたのだ。これは、あるいは、気のせいなのかと思われたが、明らかに、自分の心の中が澄んでいく感覚が徐々に始まっていて、そして、コトールルミナス国に何百年もの間、過去に起こった美の戦いがまるで走馬灯のように見えてきた。それは、とても強く静かに進んでいる。静かだが、とても強いものであった。しかし、オルガは、その感覚を心から信じて、そのまま眠りについた。


その後、オルガが目覚めたのは、2週間後であり、決戦当日の朝であった。思わず、時計の日にち表示をみて焦るオルガ、そして洗面台に急ぐと、ふいに、鏡の中に自分の姿を見た。


しかし、そこには、まぎれもなく、水の絶大な効果により、究極とも言えそうな美貌に変化を遂げた新しいオルガの姿があった。自分の姿でありながら、その印象たるや圧倒的と感じた。そして、もしかしたら、これなら、勝てるかもしれないという気持ちが、初めて湧き上がってきたのだった。


コスメから借りていたスマートフォンには、10件以上留守電が入っている。すべてコスメからのものだった。すぐに、返信をする。

「あっ。もしもし、おはようございます。オルガです。すみません。」

「あら!やっと返事くれたのね。大丈夫?連絡こないから、心配したわ。そうしたら、急いでちょうだい。打ち合わせあるでしょ。」

「すみません。すぐ行きます。」


急いで身支度を整えて、現場に向かうと、当日の現場スタッフやモデル事務所の関係者など、全員来ていて、急いで準備をしている。オルガは到着したのは最後であり、別室でセシルはすでに待機していた。

コスメの姿を見つけると駆け寄るオルガ。

「すみません。遅くなって。」


すると、オルガをみるなり、驚きのあまり、一瞬声が詰まるコスメ。

「あ、あなた、オルガ?!いったい何があったの?本当に、また綺麗になって。この2週間で、いったい何が起こったの?」

コスメは、まだ信じられないという表情で、オルガを見ている。

「あなた、今までだって、とても綺麗だったのに。それなのに、今のあなたは、遥かにその上をいってるわ。本当に信じられない。もしかしたら、今のあなたなら、セシルに勝てるかもしれない。でも、それにしても、セシルは、やっぱり本当にすごすぎるわ。あの子、舞台に立って、真剣味が加わると、元々が、すごく綺麗なのに、急に何倍も、綺麗になるのよ。目を見張ったわ。とにかく、あなたたち、2人は、美人のレベルがすごすぎる。あなたたち2人って、まるで宝石のようよ。いったい、どうなっているのかしら。信じられないわ。この先、できるものなら、2人をうちの事務所に、ぜひとも迎えたかったわね。」


オルガは、待機している中、あの水のせいか、何百年もの間、あの水のせいで幾度となく、国が救われた感覚が感じられていた。あの水は、やはり、ただ儀式で使われるだけのものではなかった。あの水は、何百年もの間、生きているのです。


そして、いよいよ、美の対決が始まった。

200人の観客は、初めに姿を見せた2人の姿に、いきなり心を奪われる。ゆっくりと深くお辞儀をする2人。そして、拍手喝采の中、ゆっくりと左右に下がると、中央の大型モニターに、2人の紹介を兼ねた、魅力をアピールのビデオが流される。審査員とともに、観客は、初めて2人を見る人も多く、2人のプロフィールやこれまでの仕事に見入っている。皆んなの表情から、その興味がさらに深まっていくのが見てとれた。ビデオが終わり、観客の期待も頂点に達しつつある中、再び2人が登場し、衣装を変えながら、ランウェイを歩く。

一方では、テレビ中継も、その注目の視聴率も、プロフィール紹介から20%代に乗り、25%を超えていき、ランウェイより、さらに上がり始める。

審査員と観客の心を掴んだ2人は、最後のアピールタイムに突入する。

ランウェイを歩いていた時には、着替えながら、交互に出入りをしていたが、今度は、2人揃って並び、最高のアピールをする。


今回は、まさにこの2人だけの勝負、通常のファッションショーと違い、より真剣な対決であり、観客も審査員にも緊張感が高まる。審査員がよりよいと感じた方の名前を掲げる。審査員は、計9名で多い方が勝利となる。そして、今回に限り、最も重視される点は、その美貌である。その衣装によって印象が変わることもその後押しをすることもあるが、最後の判断は、あくまでも顔の美しさやその表情を重視して採点を行なうことに限られる。いよいよ、それは始まり、ついに、2人だけのアピールとなっていった。そして、オルガの最後のアピールにて、何か込み上げてくるものがあって、自分が、輝いているような感覚がした。実際には、自分の内側から何か光のようなものが発せられているような気がしていた。それは、おそらく、美と命の水による美の力なのかと思われた。


すると、この力に、無意識に反応したセシルには、全身からオーラのようなものが発しているように思えた。おそらく、これは、エレンに流れるプリンセスの血によって、無意識のうちに、過去の歴代のプリンセスが戦ってきた場での対抗する力が発せられたのであった。その時、オルガには、プリンセスがこれまで受け継いできた歴代のプリンセスの持っていた美のオーラが発せられているのだと感じられ、その時、オルガは敗北を確信した。


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