4-8 日本での絶望
それに、日本では、たしかに女性が有利であったり、多少の優遇がされることも、彼女自身でも経験があったが、一般的に女性の方が体力的にも弱い部分があるので、それは仕方のないこと。それよりも、美貌の女性が、世間では、特になによりも価値があるとか、特別に重んじられるとか、母国と比べれば、そこまでの不条理なことはないので、とても安心感を感じていたのである。
しかし、彼女は、じきにショックを受けることになる。それは、都内で研究所の同僚の女性、玉田舞留とショッピングを楽しんでいた時のことだった。どうも、しばらく前から、誰かの視線を感じている。
すると、玉田から、
「ねえ、泉、さっきから、誰かにつけられてるわ。わかる?」
「あっ、舞留も気がついた?かなり、前からよね。ちょっと小走りで、まく?」
「そうね。ちょっとずつ、いくわよ。」
ゆっくりと歩き始めて、その1歩がだんだん早くなっていくが、後ろからも徐々に早くなってくる。その速さについてくるので、とうとう、全速力になってくる。
そして、ついに、後には誰もいなくなった。
やっと、ほっとした2人は、とりあえず気持ちを落ち着かせるためにカフェに入った。
「なんなのかしら。怖かったわ。」
「そうね。でも、たぶん、なんとなくわかるわ。お目当ては、西島さんよ。」
「えっ、どういうこと?」
「あなた、たぶん、スカウトされるのよ。芸能界とか、何かに。」
「えっ、どうして?」
「だって、あなた、とても研究所向きじゃない容姿だもの。すごい美人だし、スタイルだって、私、女性からみても惚れ惚れしちゃうわ。」
「そ、そうなの?」
「素のあなたを見ていても、こんなに思うんですもの。きちんとメイクして、おしゃれしたら、すごいことになると思う。」
「私は、そんなこと、一切考えてないわ。私には、そんなことは、ありえないわ。絶対に。」
その後、ある日、研究所の仕事が終わって、帰ろうとすると、建物を出ると、スーツ姿の男性が立っていた。
「西島さんですね。突然ですみません。あなた、モデルになる気はありませんか。」
「す、すみません。私、そういうことは、何も考えていないので。」
サッと、向きを変えて、小走りに去っていくステラ。
すぐに、小走りで、追いかけながら、話しを続ける男性。
「あなたなら、絶対に売れると思いますよ。同じモデルの中でも、高収入を見込めると思います。研究所にいるよりも何倍、いや、10倍も見込めると思います。どうか考えてみませんか。」
実際、ステラは、女性国民全員が美貌で生まれ育ったコトールルミナス人の中でも、特にレベルが高く、研究所内でも、君ほどの綺麗な人はくるところを間違えたね、などと、よく言われたほどに、その美貌は、誰でも一度みたら忘れられないほどの印象を持つので、その美貌は、スカウトマンの目にとまれば、ほっておくわけはないのだった。ステラは、ここにも、そんな世界があるのかと知り、大きなショックを受けた。
「私は、、、、私は、モデルになんかならないわ!もう、2度と、2度と来ないで下さい!」
あまりのショックを受けたステラは、その申し出を断わり、自宅へと逃げるように帰って行った。あまりのショックに、高熱がでてしまい、研究所を1週間休んでしまった。
その間、様々なことが頭を巡っていく。この日本でも、たとえ一部のエンタメの世界といえども、こんなに、美人が得をする、美人が珍重される世界があることを、この日本国内でも存在するのだと認めた上で、それなら、これは、自分がなんとかしなければと決意をした。
そして、そのために、ステラが考えたことは、このモデル業界を混乱させて、その業界における美の固定観念をひっくり返し、美人の比較されるレベルの常識をめちゃくちゃにすることであった。




