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4-6 オーラレスビスの採掘

今回、ステラの母、エメラが、美の極みの称号が与えられて、「美の歴史の間」に写真が飾られることは、コトールルミナス人としては、かなり名誉なことで、本来なら、喜ばしいことであるが、この4人家族にとっては、美貌を認められることなどは、どうでもいいことであった。4人にとっては、この4人が、仲良く長く幸せに生きることが、美人の女性として生きて、その若いまま早く消えていくことよりも、なによりも幸せだったのである。


そして、この後にも、知人の女性たちが、若く美しいままで、早くに消えていくことを何度も目の当たりにしたステラは、とても悲しくて仕方なかった。まして、その女性たちの消えてゆく姿を笑顔で、見送っている家族の姿を見ると、いてもたってもいられない悲しみと苦しみがあふれてきて、こんなのはありえない、消えてゆくことよりも、美が尊いだなんて、こんな国は滅びてしまえばいいとすら思ったのだった。


そして、さらに、父が39才で消えていったことをきっかけに、ステラは、ある決意をする。この鉱石研究の採掘を、これを最後として、ほとんど誰も訪れたことのない場所に行くことにした。それは、政府より、特殊な任務を命じられた者たちしか、立ち入ることのない、オリリナース山である。


そして、その中にある泉に、100年に一度湧き出す奇跡の水、美と命の水があるという。そして、コトールルミナス国に多くの種類の鉱石がこれまで採掘されているが、その泉には、過去にも例のない貴重な鉱石があるという伝説があった。ステラは、自分自身の鉱石研究の究極のテーマとして、その伝説の鉱石をぜひこの目でみて、できれば採掘まで行なって、持って帰り、研究することが長年の夢だったのである。というのも、両親が消え去り、もはや自身もいつ消え去ろうともかまわないという境地となった今なら、ここに立ち入ることがどれほど危険なことで、これまでも多くの者たちが命を失い、戻る者は極めて少ないと言われても、捨て身でその鉱石を自身で採掘しようと決意したのである。そして、もしも、生きて帰れたら、日本に行きたい、と思った。


オリリナース山は、四方が切り立った絶壁となっており、初めから道や徒歩で進める場所などは一切ない。登るためには、ハーケンと呼ばれる金属性のくさびを岩の隙間に打ち込んでロープをかけながら、少しずつ登っていく。くさびが1つでも外れれば、真っ逆さで転落して命はない。2時間もかけてやっと平らな場所に登り着いた。


ここからは、さらに数時間かけて頂上の泉を目指していく。しかし、ステラは思った。今、登ってきた絶壁は、正直言って、登山など経験のない自分でも、たしかに楽ではなかったが、女性であり、特に体力に自信があるわけでもない自分でも、時間はかかったが、一度で登ることができたのである。ということは、本当に危険なのは、きっとこれからなのだろうと察したのであった。


しかし、そこまで危険な雰囲気はなく、ただ急な坂道をゆっくりと、足元に気をつけながら登っていく。すると、その安心感は、すぐに消え去った。一面が泥で覆われた道がでてきた。ステラは、登山用の靴を履いていたので、ビニール袋を被せて、改めて、一歩踏み込んだ。深さは、膝のすぐ下あたりまで潜り込んだ。両足を踏み入れてみて、問題は、足を泥から抜いて、次の一歩がどうなるかだが、四方から足全体をつかまれているような感じで、決して抜けないわけではないが、思い切り力を使う。その繰り返しを、約10mくらいの長さに渡り、歩き抜いた。ステラは、1時間以上かけて、その泥の沼を、とうとう渡り切ったが、もう体力がほとんど残っていなかった。


そういえば、思い出した、ここが、噂に聞いた「無力の沼」なのだ。ここを通ることで、全身の力を残らず奪い取ってしまう。もうじき、頂上が近いのに、ほとんど体力が残っていない。そういえば、聞いた話では、この山の頂上に行くには、必ず頂上に一泊しなければ、帰りの絶壁は降りることができない、と。まさに、体力の無力化であった。


しかし、とりあえず、しばらく進んでいくと、頂上が見えないのに、1番てっぺんに来たような場所に、やっと行き着いた。すると、頂上は、カルデラとなっていた。山のちょうど頂上が凹んでいて、広く平らな岩場となって広がっている。どう見ても、割と穏やかな岩場であり、そこまで凹凸が激しいわけではなく、意外と歩きやすそうにみえる。そして、どうやら、その中央部が、美と命の水の湧き出る泉のようだ。しかし、そこまで危険を感じない。ところが、次の瞬間から、今、思ったことが間違いだったことに気付かされる。その広大に広がる岩場に、一歩足を踏み入れるも、突然、えも言われぬ虚脱感が身体を襲う。一歩毎に、身体の自由が奪われていくように感じて、慌てて、その一帯から逃れて行った。


すると、ある光景に驚愕したステラ。それは、遥か先の泉の辺りを、遠目で見ると、リュックがいくつか落ちていて、その近くには、人の形をした衣服が落ちている。腕を広げたようなうつ伏せ状態の上着に、やはりズボンが脚を長くしたままつながっており、その裾あたりには、それぞれ靴が落ちている。どうみても、人が倒れたまま、中身が消えたように見える。


そこで、ステラは、すべてを理解した。あの泉一帯までの広大な広がりの岩場こそが、自分が目指している特殊な鉱石である、オーラレスビスが一面に広がっているのである。本来なら、その鉱石、オーラレスビスは、オーラを吸い取るというエネルギー吸収体であるが、これだけ広範囲に広がっていると、その力は強大で、最後にはオーラを吸い付くし、命枯れるまで、生きるエネルギーに至るまで吸い尽くしてしまい、髪の毛1本たりとも残さないという、まさに最強の吸収体なのであった。


これでは、採掘どころか、その場所に入ることすらも危険すぎる。おそらく、泉の水を取りに来た、政府から命を受けた人間が泉に近づくまでにほとんど命を失っていたのである。ステラも、ここから先に立ち入ることは不可能に近いし、ましてや、採掘など命を交換しても不可能なことであった。とりあえず、ここから先に行くことは不可能なのであったが、ステラは、その泉の周囲に広がるまさにエメラルドのような緑の輝きが原石といえども鮮やかに広がっていて、その危険とは裏腹に魅力を発していて、とてもこれで諦める気持ちにはならなかった。ただ、ステラの目的は、泉に湧く奇跡の水ではなく、その鉱石の広がりの1番手前の部分から、採掘ができればいいので、危険性は、それでもまだ少ないのであった。


しかし、今回は、その話しの通り、頂上でその夜を明かし、よく寝て、体力を取り戻し、次の日、朝早く、1度山を降りて、万全の準備をして、再び採掘に挑む決意をした。そして、様々な準備ののち、1週間後、ステラは、再びオリリナース山のふもとに着いていた。


前回のように、ハーケンを使い、注意深く登っていく。ここは、とにかく集中力の問題であり、焦らずにゆっくりとこなしていけば、そこまで危険なことはない。そして、再び、絶壁を上り切ったステラは、呼吸を整えて、徒歩で、坂道をなるべく疲れないように、ゆっくりとしっかりとした足取りで登っていく。


すると、また、あの泥の沼である。しかし、今度は、新兵器を持参している。それは、5㎏の粉の入った紙袋であり、中身は、万能凝固剤である。さて、その性能はいかなるものか。約10mほどの泥手前から少しずつ粉を撒いてゆく。すると、手前から、徐々に固まっていくのが見える。そして、しばらく、待つこと1時間。ゆっくりと、足を踏み入れて、泥が固まった上に乗れるのを確認しながら、少しずつ奥へと粉を撒きながら、固まるのを確認しながら、一歩ずつ進んでいく。これなら、簡単に進める。そのまま、固まった泥の上を歩いていき、30分ほどで向こう側に着いた。それに、体力の無力化も、今回はない。そして、いよいよ、頂上のカルデラに再び到着した。すると、リュックから特別性の遮蔽幕しゃへいまくを取り出した。


これは、電磁波や電気などのエネルギーをこの幕を通して伝わらないように特殊な加工が施してあるもので、その中でも、今回のものは、さらにその遮蔽できるものの対象が通常よりも遥かに多く、とても高い遮蔽率を示す。そして、これを2m四方で幕を作り、持ち込んだ。これを鉱石の広がる1番手前に広げて敷いて、その上に乗り、その上から、鉱石を採掘する。そして、今回は、さらに、この特殊加工された遮蔽幕を使って、上下の全身を覆う遮蔽服を作成して、それを現場で装着した。これで、完璧とは言わずとも、吸収の速度や量をたとえ少しずつでも軽減できれば、採掘する作業のための時間稼ぎにはなると考えたのである。


まずは、全身を遮蔽幕しゃへいまく製の全身スーツに身を包んだステラは、電動ハンマーと特殊ドライバーと、それに遮蔽幕で作成した超厚製の袋を腰に付けて、畳んだままの遮蔽幕を持って、鉱石の採掘に適しそうな場所を選んで、幕を広げて、その上に上がり込んだ。とにかく、今回は、採掘する鉱石の量は、決して欲張らず、握り拳程度で充分と予定している。


しかし、いざ、電動ハンマーで鉱石に打撃を与えるが、ただ地面に向かってハンマーの衝撃を与えても、びくともしない。すると、わずか数分で、身体に対してのダメージが、じわじわと感じ始めた。明らかに、遮蔽服を通したエネルギーの吸収が始まっていた。下に敷いたものと、装着した服で対処しても、この広大な敷地の吸収力は、思っていたよりも強大であり、わずか3分も持たずに、ステラは、その場所から走り去ってしまった。それは、無理もない。その鉱石の範囲は、数十mにまで及んでいるので、その広い範囲の中にいる人の1人の持つエネルギーの量など吸収するのには、わけのないことである。その、今回、作業ができた3分のうちには、鉱物の地面にやっと少しひびが入った程度であり、そこから、採掘するためには、少なくともあと30分は必要かと思われた。


そして、また、1度、山を降りて、そこで、ステラは、一計を案じた。それは、電気や電磁波、電波、磁力などのエネルギーをそれぞれ発生する機器を何種類か持ち込んで、再び、山に挑んだ。絶壁を登り、頂上に着くと、それぞれの機器を鉱石に乗せて、発生させてみる。そして、すべての機器の最初に持つエネルギーの数値を記録して、鉱石に乗せて、吸収させたのちに、また残りの数値を測ってみる。それをすべての機器で実行して、測定した。すると、1番数値が下がっていたのは、電気であって、その吸収量はダントツであって、残っている電力は圧倒的に下がっていた。


そこで、ステラは、もう一度、山を降りたのち、特殊な電気靴を製作した。それは、靴底が電極になっており、スイッチを入れると、靴底から電気を放電する。つまり、これを履いて、採掘をすれば、身体のエネルギーを吸収される前に、電気を吸収して、身体からの吸収が起こるのは、電気がすべてなくなったあとになるはず。そして、その後は、運がよければ、作業が短時間であれば、かなりダメージがないままで終わるのではないかと考えたのである。ただし、これには、これまでとは別の危険が待っていた。この電気靴は、ステラが自作したもので、急いで製作した簡易的なもので、完璧とはいい難い作りであるため、電気靴を履いての作業中に、この靴で誤って感電してしまう可能性があるのだ。


すると、早速、再び、山に登り、頂上に着いて、今度は、電気靴に履きかえて、スイッチオン!鉱物の中へと、そのまま踏み込んだ。感電する危険性と、鉱石に吸収されて消滅する危険性に挟まれた状況の中、作業は始まった。果たして、採掘ができるか、感電するか、吸収されて消えるか、どれかの結果が待ち受ける中、緊迫感も最大となって、作業する手が震えている。腰に付けた電力メーターが、急速に消耗を知らせているが、実は、背中に、大きな電源バッテリーを背負っているのである。その重さが10㎏もあるのだが、だんだんと減るベースが、さらに早くなってきた。しかし、身体に対する虚脱感などは、まだ全く感じられない。高電圧を放出しているせいで、身体が小刻みに震えて作業がやりにくいが、明らかに、鉱石は電気を先に吸収している。


すると、前回、ひびが入った地面に、さらにひびが入った、と思った瞬間、右の靴底からショートして火花が走っている。採掘は、終了していないが、靴が危ない!急いで岩場から、抜け出そうと走り始めた、その時、左の靴底からも火花が走り、岩場から抜け出る。次の瞬間に、岩場からころげ出たステラ、両足の電気靴を遠くへ脱ぎ捨てた。そして、次の瞬間、両足の電気靴は、火が吹き出して、燃え上がってしまった。そして、靴と背中のバッテリーは、銅線で繋がっているので、燃え上がる方へと、身体が引っ張られた。


何か、いやな予感がして、背中のバッテリーを脱ぎ捨てて、遠くに放り投げると、バッテリーは爆発してしまった。ものすごい轟音と共に、こっぱみじんとなったバッテリー。作業は全く終わっていないが、もはや、必要な道具はすべてなくなってしまい、もはや採掘どころではなくなってしまった。



仕方なく、荷物をまとめて帰り支度をしていると、さっき投げ捨てたバッテリーが爆発した場所は、ちょうど作業をしていたところで、よく見ると、爆発のショックで鉱石が少し崩れて、かけらが数個転がっていた。こんなラッキーなことがあるなんて!思わず、かけらを数個拾い上げ、腰につけた遮蔽幕で作った袋に入れた。

そのうちの1番大きなものが、ピンポン球程度のもので、その場から、急いで走り去ってゆくステラ。しかし、今回は、身体には、全くダメージは感じられず、とても小さいものではあったが、とうとうオーラレスビスを、ステラは、手に入れたのである。喜びながら、山を降りるステラであった。


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