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3-18 リセット、そして、、実務計子、、、エピソード3 最終話

そして、次の日、夜明けと共に、イレーネがネット上に配信したプログラムが起動を始めた。しかし、このプログラムが起動しても、すぐには状況は動かない。それは、世間が騒ぎ始めてから、その本領を発揮するのである。


まずは、トラブルが起こり始めたのは、モデルラボであった。コスメが朝から、焦っている。


「ええっ、どうして。どうして、事務員が足りないの。この何ヶ月も、いないけど、どうやって乗り切ったのか、さっぱりわからないわ。」


そう言いながら、事務処理の内容を改めて確認し始めた。


だが、


「うっそー!昨日までの事務処理は、完璧に終わってるわ。今まで、どんな事務員がやっても、こんなに丁寧で完璧な処理がしてあるの、見たことないわ。ということは、とりあえず、昨日まではなんとか大丈夫だけど、問題は、今日から、どうするかよ。」


アネットとイレーネが働いていた入出金分も、なぜかつじつまが合うように、完璧に処理してあった。

すると、受付に、訪ねてきた人がいた。


「社長、受付に事務員の募集の応募の人がきてるんですが。」

「ええっ、うちは、事務員の募集なんて、してないわよ。えっ、いや、してるしてる!たった今から、募集してるわ。入ってもらってちょうだい。」

「はじめまして。事務員募集に応募しました。実務計子じつむけいこです。」

「こんにちは。えーと、私、この事務所の社長の小染真希よ。実務さん、ここのこと、どうして知ったの。」

「昨日、私の携帯に電話がきて、高野台のモデルラボで募集してるから、行って下さい、って言われました。ちょうど、事務の仕事を探していたのでよかったです。」

「えーと、うちは、ところが、簿記検定1級の人が必要なのよ。」

「大丈夫です。簿記検定1級は持ってます。」

「本当に。それなら、よかったわ。とりあえず、1人は、これで確保できたと。よかったわ。それと、もう1人、、、。」

「あの、もう1人必要なんですか。」

「そうなのよ。もう1人。」

「それって、公認会計士ですか。」

「え、ええっ、そうよ、よく知ってるわね、あなた。」

「だって、その電話してきた人、公認会計士も募集してるから、一緒にお願いします、って言われたんです。」

「あなた、公認会計士でもあるの。」

「そうなんです。だから、言われて、ここにきたんです。」

「な、なんだか、よくわからないけど、とにかくよかったわ。うちとしては、大助かりよ。それじゃ、悪いけど、昨日までの処理は、住んでるんだけど、今日の分から、早速やってもらわないといけないので、こんなに急で悪いけど、今から説明するから、ちょっとだけ、待っててちょうだいね、、、、、。あっと、言うのを忘れてたけど、あなた、今日から、採用です。宜しくお願いします。ちょっとだけ待っててね。すぐにくるから。」


コスメは、受付の人になにやら、打ち合わせを終えて、急いで戻ってきた。


「実務さん、ごめんなさいね、お待たせして、ちょっと、今日ね、ちょっとバタバタしてて、ごめんなさいね。それでは、えーと、どこから、、、。」

「あのう、ここのところなんですが。」


開いてあるパソコン画面の帳簿を指さす実務、

「ここのところって、ここがこうなって、ここはこれだから、こうする、でいいですか。」

「えっ、その通りよ。でも、あなた、なんでそんなことわかるの。」

「いえ、その昨日電話してくれた人から、今日からの事務処理の仕方を説明してくれたんです。」

「えっ、電話で?その人が?そんなことを?細かく?」

「そうなんです。というか、明日からの仕事は、これですって言われたので、ちょっと、昨日やり方を復習してから、今日きたんですよ。」

「ねえ、その人って、誰なの?」

「ごめんなさい。私もよくわからないです。でも、たった今からでも、もうできますよ、その仕事。」

「あ、ありがとう。よくわからないけど、もうどうでもいいわ。じゃあ、今日から、宜しくお願いします。」


すると、電話をとった事務員の足底冷子あしぞこれいこ

「社長、アネットって知ってますか、って、問い合わせが来てるんですが、わかりません、って、答えてるんですが、どうしたらいいですか。」

「え、どういうこと?」

「そちらに、アネットっていう人、いませんかっていう電話がきてるんです。」

「そんな人、聞いたことないわね。とにかく、うちの子じゃないし、申し訳ありませんが、とりあえず、わからないから、ネットで検索してみて下さい、って言ってよ。」

「それって、何かの間違いじゃない。ちょっとネットで、その名前調べてみてよ。」

足底が、ネットで調べているが、なかなか返事がない。

「足底さん、どうだった。足底さん。」

「社長、なんですか?」

「アネットのこと、調べたの?どうだったの?」

「えっ、なんのことですか?」

「いいわ、もう、私が調べるわ。」


自分のデスクに戻り、検索を始めるコスメ、アネット、と入力をして、検索、すると、不思議な映像が流れて、それを見てしまうコスメ、すると、一瞬、気が遠くなり、はっ、と気がつくと、


「あら、私ったら、何を?、、、そうだわ、新しい事務員のこと、だったわね。えーと、実務さーん。」


パソコンで、アネットのことを検索すると、アネットのことを忘れる映像が流れて、その検索をしているパソコンからは、アネットに関する情報がすべて消えていくのである。アネットを雑誌に載せた出版社も、アネット検索で、雑誌に使っていたデータがすべて消去されていき、そこから、つながっていた業者のパソコンへと、その効果は流れていって、次々とアネットに関する情報が消えながら、そのパソコンを使っている人たちの中から、アネットに関する記憶も消えていく。


これは、メモラー終了のためにイレーネが行なった、プログラム起動による関連データ消去の連鎖反応による効果が始まったのだ。


アネットのことを調べれば、調べるほど、メディアから、そのデータと関わる人たちの記憶から、アネットについてのデータが、次々と消えていく。時間がたてばたつほど、その効果がどんどん広がっていき、残るものは雑誌や書籍だが、出版社では、その消去の連鎖反応を受けてしまうと、アネット関連の雑誌や本を、何事もなかったかのように、冷静に無意識のうちに処分していく。そして、それらの出版社のホームページに伝染していった記憶消去の効果は、普通にネット上に広がっていき、誰もがネットの情報を見るだけでアネットの記憶が消えていく。その連鎖は、パソコンやスマートフォンからも次々に広がっていき、ひと月もたつと、ほとんどの人たちから、アネットの記憶が消えていった。


そして、数ヶ月後、ある日、コスメは、事務所の仲間たちと、近所にある、昔からよく行く中華屋さんに久しぶりに訪れた。

「おじさんっ、久しぶりね。」

「おお、久しぶりだねえー。」

「本当は、来たかったんだけど、忙しくて最近は、なかなか来られなかったわ。やっぱり、中華を食べるなら、ここねえ。」

「そうだろう。もう何十年になるかねえ。」

「おじさん、私、チャーシューメンと餃子をお願いね。みんなは?」

それぞれ注文すると、ご主人が、

「そういえば、ここのところ、娘さんと来ないけど、忙しいのかい。」

「えっ、おじさん、やだわ、私、子供なんていないわよ、だって、結婚もしてないし。」

「あれえ、だって、1度2人で来てくれたよねー。」

「わかった。おじさん、オービスと間違えているのね。オービスは娘じゃないわよ。」

「あれえ、そうだったかねえ。私も年かねえ。最近、物忘れも多いからねえ。」

「そうよ、きっと。ハハハハ!」

仕事一筋で、テレビはみても、パソコンも、スマホも見ないご主人の記憶からは、消去効果は伝わらない。しかし、高齢のご主人、もうすぐ、別のことから、アネットの記憶はなくなっていくのだろう。


そんな店内に飾ってある写真には、アネットとコスメが仲良く並んで、写っている。そして、その下には、コメントが、

(社長さんとモデルの娘さんと)

そのコメントには、アネットの文字も入ってないし、その写真のアネットとコスメは、2人とも本人かどうかもわからないくらい、はしゃいで笑っているので、消去の連鎖反応を受けた人たちも、その写真をみても誰も2人とは気づかないので、誰も処分してはくれない。もはや、コスメも、そのことはすっかり忘れてしまったので、いつまでも、飾られていて、最後まで記憶していたお店のご主人も、高齢者の仲間入りをして、そのことを忘れてしまい、とうとう知る人はだれもいなくなってしまった。ええっ、そうすると、この写真は、いったい、だれが処分してくれるのだろう。日本に、アネットの写真は、1枚だけ、いつまでも残るのであった。しかし、いつの日にか、誰かがその写真のコメントに書き込みをしていた。そこには、(これは、だれ?)とあった。


その後、ある日、モデルラボを訪ねてきた2人の女性がいた。

「こんにちは。よろしくお願いします。」

たまたま、受付に出たコスメは、その2人をみて驚いた。最近、有名になってきた姉妹のモデルで、常にランキングのベスト5にいる。多少、日本人離れした顔は、透き通るように白く、きめの細かい繊細な感じは、姉妹ともに、その突き抜けるような清潔感が心地よい。その上、トップモデルに相応しい超美人となれば、もう話題になって当然であった。


この2人は、木関汐里きせきしおりこと、バイオレット19才と、木関梨々きせきりりあこと、リリアナ19才であった。現在、業界でトップのオービスを探し、一度勝負をしたいと、1年前に、姉妹そろってやってきたのである。


もう上京して、1年以上経つのだが、居酒屋のアルバイトからのスカウトで、モデルに転身したあとの、トップモデルへ一気に上り詰めた2人ではあったが、1番の目標であったオービスとの勝負では負けてしまったので、もはや戦気を失ってしまった。しかし、少しずつ東京での生活にもなれて、気がつけば、普通の年頃の女子と同じような生活を送っていた。それに、ここしばらくは、2人で話し合って、このまま、東京に住むのもいいね、などと言い、東京って楽しいね、と、もはやモデル業を頑張って、和食と日本のデザートが大好きなどと、雑誌のインタビューに、答えている始末。非常に高いレベルの綺麗さを持つ2人は、さらに最上級の綺麗さと認められ、2人ともに毎日が、幸せ気分なのだ。最近では、もう日本から、離れられないなどと、日本好きの外国人旅行者のようなことを言っている。


そして、モデルラボを訪ねた2人は、事務所に入りたいという。それは、いくら破れたとはいえ、同じ境遇のモデル、オービスがいるので、昨日の敵は今日の友、というわけでいい友達にもなれそうだからと2人で話し合って決めたのだった。


すると、コスメは、その申し出に喜んで、

「もちろん。大歓迎よ。美人姉妹なんて、強烈な売り文句は、話題になりそうだし、すでに、2人ともトップモデルですものね。これからは、もっと楽しみだわ。よろしくね。」


すると、2人は、心の中で、

社長さん、ありがとう。本当は、(姉の私のために)(妹の私のために)モデルとして事務所に入れて頂いて、本当に感謝しています。本当は、私だけだったのに、(姉も一緒に)(妹も一緒に)登録を認めてくれるなんて、そこまで、お気遣い頂いて、お礼の言いようもありません。こちらから、新たに仕事を始めたら、足りない(姉の分も)(妹の分も)補えるように、頑張っていきます。どうか宜しくお願い致します。


姉妹で美人という話題性もあって、業界でも、話題にならないわけなどなかった。色々と、あまりにも、妄想がすぎる姉妹ではあったが、実は、2人は瓜二つであり、2人の両親や家族からも絶対に見分けがつかないらしい。


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