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3-3 美と命の水

しかし、モデルラボから盗まれた金庫に入っていた、あの箱に入ったビンは、金庫に入れておくほど大事なものだったのだとわかると、ますます、この水のことが気になる紗月だった。


そこで、ネットで調べてみると、モデルラボのホームページがあって、トップページには、5階建ての立派なビルが載っている、そこには、所属する代表的なモデル、オービス 19才や何人かのモデルが同じく載っている。ファッションやモデル業界のことなどわからない紗月でも、オービスの名前は聞いたことがあった。連絡先も書いてあるが、まさか、以前盗られた金庫に入っていたビンの中身はなんですか、なんて聞けるわけもない。たぶん、ビンをもっていると言ったら、もしかしたら返してほしいと言われるかもしれないし、自分が盗んだと思われるかも。申し訳ないが、自分は犯人扱いされるのだけは嫌なので、連絡するのはやめることにした。


とりあえず、このビンのことは、あわてずに調べてみることにしよう。


そして、初めて、ビンの蓋を開けて、匂いを嗅いでみる。うーん、別に匂いはない、無臭である。でも、ただの水だったら、腐っていたに違いないので、やっぱり、ただの水ではないのだろう。


次に、ちょっと、これは非常にリスクが高いのだが、味はどうだろう。これは、とんでもない試みだが、好奇心の固まりのような、紗月にとっては、どこまでも危ないことであっても、とにかく挑戦したいのだった。万が一の時には、すぐに吐き出して、飲み込む前に、口内で多少でも吸収が始まると、毒素がある場合には、飲み込まなくても、身体に悪影響が現れることは、承知している。なので、果たして可能かはわからないが、口内での吸収が起こる前に、先に反応を感じようとする覚悟はできている。それに、反応がわかる前に、毒素の吸収が一瞬でも早ければ、吐き出すことも、間に合わないかもしれない。悪い反応がもしもあれば、すぐに119へ電話をして救急車を呼ぶ覚悟もできている。


さあて、いよいよ、ちょっとオーバーだけど、危険度MAXな試みを始める覚悟はできた。これほどにリスクが高くて、怖い試みもなかなかないが、紗月の心には、その怖さとワクワクの好奇心の2つが同時に同じくらいに、準備ができていた。それでは、ちょっとだけ、指につけて、指に刺激があるかを、まずは確かめた。全く刺激は感じられないので、その指についた、ほんのちょっとだけを舐めてみる。うーん、やはり味はしない。でも、嫌な感じがないし、刺激などもないので、指先ほどの量だけなめてみる。やはり、味もないし、違和感もなく、これは、やっぱりただの水なのかな。


とりあえず、身体に害のあるようなものではなさそうだし、何だか、色々と考えるのも疲れたので、今日はここまでにしよう、と、あきらめて、大学のレポートを仕上げて、そして、寝てしまった。


次の日、朝食を済ませて、大学へと行き、一時限目の講義に出席する。すると、いつものように、友人の東堂リエナがやってきた。


東堂リエナ、彼女は、大学に通いながら、モデルをやっている。彼女は、週の半分は、モデルの仕事をしながらなので、あまり会えないけど、お昼を一緒に食べることは多いのです。


「最近のモデルの仕事は、どう?忙しいの?」

「そうねえ。忙しいけど、楽しいから、ぜんぜん大丈夫よ。あっ、そういえば、新人のモデルで、アネットって、知ってる?」

「そうねえ、詳しくは知らないけど、名前はよく聞くわ。」 

「プライベートは、全くわからないけど、すごく売れてるのよ。一度だけ、現場で見たことがあるけど、すごく綺麗で驚いたわ。うらやましいわ。」


それよりも、数か月前、アネットは、ある時、モデルラボにやってきた。

「アネット、よく来たわね。」

「こんにちは。」 

「まあ、久しぶりって思ったけど、あんた2才だったし、最近は連絡を取り合ってたけど、もう初対面みたいなものよね。でも、親子は、親子よ。」


コスメは、嬉しそうに出迎える。なんと、アネットは、コスメの娘であった。コスメがメイクアップアーティストとしてアメリカで活躍していた20代の頃に付き合っていたアメリカ人との間にできた子で、コスメは結婚はせずに、そのアメリカ人とは別れてしまい、アネットは、そのアメリカ人に育てられた。

本名 アネット・ウィリアムスは、今回、日本に来てモデルをしていたのだ。アネットとは約15年ぶりの再会であった。今回、その父親も若くして亡くなってしまい、母であるコスメに会いたいのと、モデルを始めたので、モデルラボに入りたいと帰国したのである。


「だけど、考えてみたら、こんなに長いこと、お互いに連絡もしなかったのが、とても不思議よ。」

「だって、ママも忙しかったからじゃないの。忙しいのに、私から連絡したら、悪いかなと思って。」

コスメは、2、3才の頃の記憶しかないのだが、嬉しくてたまらない。


「だけど、今回は、いくらパパが亡くなったからとはいえ、よく日本に引っ越すことに決めたわね。モデルとしては、アメリカでも充分に仕事があったんでしょ。」

「だって、パパがいたから、我慢してたけど、本当はママと暮らしたかったのよ。」

「アネット、あなた、上手ねえ。私をこんなに喜ばせて。」


アメリカ育ちのアネットは、その容姿は素晴らしく、その顔立ちはアメリカの血が入っているとは思えないが、いかにもモデルに相応しかった。そして、事務所は、4階と5階はマンションとなっており、多くのモデルは、そこに住んでいて、さらに空き部屋があるので、早速引っ越してきたのであった。


「あなた、今までは、アメリカのどこの事務所にいたの?」

「モレガンにある、ゴールドジョンよ。わかるかな。」

「ああっ、ゴールドジョンね、わかるわかる。あらっ、日本人が社長の事務所じゃない。おかっぱ頭の小太りの社長さん。」

「そうそう、よく知ってるわね。」

「じゃあ、部屋に案内するから、荷物置いてきなさいよ。その後で、お昼でも食べながら、少し仕事のこととか色々とお話ししましょうよ。」


2人は、とにかくワクワクが、止まらない。


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