3-2 金庫の中身
その後、紗月は、バイトに来た日は、必ず開けるのに挑戦する。
2日たつが、まだ諦めずに挑戦する紗月。専用のノートを作って、数列を書き出して、より一層取り組んでいる。
「宍戸さん、続くなあ。ひょっとして、ハマってる?」
「そうですね。かなり、面白くなってきました。」
「すごいなあ。そこまで頑張ってるなら、ぜひ開いてほしいよ。」
「そうですね。開けられたら、感激ですけども。」
すると、その日、バイトが終わって、帰りに、また少し金庫に前に座る紗月。
すると、たまたま、彼女が何回か打ち込んでいるうちに。
【 カチャ 】
「空いたわ。」
とうとう、開いてしまった金庫。
しかし、冷静な紗月、まるで当たり前かのよう。
「店長、金庫、開きました。」
「ええっ、すごいなあ!よく開いたな!」
店長、思わず駆け寄ってきて、
「それで、何が入ってる?」
開けてみると、中は、2段になっていて、やはり現金とか、貴重なものは、なさそうだった。上の段には、書類が少し。大して、重要ではない感じで、下の段には、なんか綺麗な箱が1つだけ入っていた。その箱には、ペットボトルくらいの大きさの、不思議な形をしたガラスの瓶が入っていて、水が口まで一杯に入っている。
紗月が、その書類を出していると、店長が、
「なんだ。やっぱり、中身は、大したものはなかったな。だけど、番号がわかったから、鍵はないけど、売り物になるね。お金かけて、処分するのとは、大違いだよ。とりあえず、よかったよ。あと、書類は、ただゴミになるだけだから、捨ててもらってかまわないよ。」
「水の入ったビンの入った箱はどうしますか。」
「それも、いらないから、捨てていいよ。」
「じゃあ、もらってもいいですか。」
「ああ、いいよ。」
紗月は、そのビンと箱が綺麗だったので、箱ごと持って帰ることにした。その箱の大きさに対して、少しビンが大きすぎる気がして、バランスが悪く、たまたまビンが入る箱があったので、あとから納めたような印象だった。しかし、その箱とビンが、どちらも、あまりに高級感漂うものであったので、ネットで画像検索をしてみた。
すると、箱は、京都にある老舗の和菓子店「匠の舌」の予約のみ限定で、数年前に50個販売された数万円もする和菓子の箱であり、一方、ビンは、三重県にある神林美容研究所にて製造販売された「肌が覚醒する飲む美容水」という1本10万円もする水であり、これも数年前、当時限定販売されたものであった。
そして、ビンの画像をみると、検索してヒットしたものは、すべてビンの中身の水のように見える透明な液体が入っている画像であるが、紗月はこれに注目した。その検索した画像は、どれを見ても、ビンの蓋の1番上から、5㎝の位置に水面があり、明らかに上の部分には空間があった。ところが、そのビンは、すでに開封済みであり、蓋は締め直してあるのと、中身の透明な水は、ビンの口までけっこういっぱいに入っている。つまり、そのことから、びんと箱と中身は、すべて別ものであることが確実になった。中の水のような透明な液体は、あとから入れたもので間違いないと、紗月は確信した。それにただの水を金庫になど入れておくわけはないので、この水自体がかなり貴重な、特別なものであることを知った。
そこで、今度は、和菓子店に電話をして、これまでの購入先を問い合わせてみた。すると、個人情報なのでお教えできないというので、今度は、神林美容研究所にも、一応電話してみた。
すると、
「もしもし、実は、そちらで販売していた美容水のことでお聞きしたいのですが。」
すると、所長が電話にでて、
「はいっ、以前購入して頂いた方ですか?」
と聞かれた。なんて答えたらいいか迷っていると、
「お名前をどうぞ。」
と言う。すると、うっかりして、反射的に自分の名前を名乗ってしまう紗月。
「宍戸と申します。」
すると、驚く所長、
「ああっ、モデルラボの獅子童さんですね。お世話になります。ご無沙汰してました。今はもう、あの水は、次のものをじきにだすのでもう作ってないんですよ。発売したら、また連絡しますから。確か、事務所って、練馬区高野台の住所でいいんですよね。まだ、しばらくお待ち下さい。」
「あっ、はい。宜しくお願いします。」
相手は、全くの聞き違いで、勘違いされたが、なんとかやりすごして、電話を切った。




