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3-1 盗まれた金庫

宍戸紗月ししどさつきは、リサイクルショップくるくるで、週に4日アルバイトをしている大学生。


実は、紗月の父親は、大手の会社の社長をしていて、彼女は、大学の入学祝いに、マンションを買ってもらって一人暮らし。だけど、あとの学費と生活費のために仕送りはあるのだが、色々とほしいものがあって足りない。アルバイトは、ほしいものへのプラスアルファのためなのだった。


ある時、店には、大きめの金庫が持ち込まれた。


「すんません。買い取りいいすか。」

「ああっ、どうぞ。品物はなんですか。」

「これなんだけど、、、。」

それは、2人がかりで運んできた、高さが1m近い大きな金庫。

「鍵がないから、開かないけど、ものはいいだろう。」

「中には何か入っていますか。」

「ちょっと忘れたけど、大したものは入ってないぞ。使ってたら、鍵をなくしちまって開かないけど、買い取ってくんない。」

「そうですねえ。」 


それは、訳ありなのか、鍵穴には傷があるし、普通に開かなくなっただけなら、専門家に開けてもらえばいいのに、押しボタン式のダイヤルもついている。だいたい、売りに来ている人自体が、訳ありっぽい。

「そうですね。ちょっと難しいですね。でも、そちらで処分したら、かなり処分代がかかりますよ。こちらで処分してもかまいませんが、どうしますか。」

「ちぇっ、買い取り、ダメか。じゃ、置いてくよ。」

なんだって、乱暴な態度だな、そう思って、店長は、誰か手の空いてる人を探すと、たまたま宍戸が、そこにいた。


「宍戸さん、ちょっとこれ、運ぶの手伝って。」

「わかりました。今、台車持ってきますね。」

2人で台車に乗せる。

「持ち込んだ人が、すごい怪しかったんだ。なんか変なものが入ってないといいけど。とにかく、開けられないかな。」

「そうですねえ。」

「専門家呼んでお金かけるのもバカらしいからね。」

「だけど、こういうのって、鍵は、あまり使ってなくて、ダイヤルだけで開け閉めしてるケースが多いんですよ。」

「宍戸さん、よく知ってるね。」

「けっこう、こういうの好きなんです。店長。これって、店にどのくらい保管しますか。」

「えっ、別に急がないから、当分置いとくよ。とりあえず、倉庫の奥に。」

「じゃあ、その間、開けるの試してもいいですか。」

「ああっ、かまわないけど、本気で開けられると思ってるの?」

「どうかな。でも、しばらく挑戦したいですよ。こういうの好きなんで。とりあえず、任せて下さい。」

「宍戸さん、女の子でこういうの好きって珍しいな。いいよ、任せるよ。」

「ありがとうございます。ちょっとやる気でちゃったかも。」


次の日、紗月は、バイトが終わって、金庫の前に。すると、店長がやってきて、

「宍戸さん、本当にやる気なんだ。これって、入れる番号がいくつなのか、4桁か6桁かもわからないだろ。」

「そうですね。だいたい、4桁が多いんですけどね。今から、それを調べるんです。」

「君、調べられるのかい。」

すると、紗月は、家から何か持ってきたものを準備している。

取り出したのは、脱脂綿。少し丸くすると、紙の上に広げた小麦粉を少しずつ脱脂綿を回しながら、回りにつけていく。

「ええっ、何をやってるんだ?」

「まあ、見てて下さいね。」


全体に満遍なく少しずつ小麦粉をつけた丸い脱脂綿を取り上げると、紗月は、金庫の入力キー全部に、軽く、ポン、ポン、と叩いていく。すると、キー全体が、小麦粉で少し白くなっていく。

「入力キーが全部、白くなったぞ。どうするんだい。」

「じゃあ、見てて下さいね。」

そう言うと、ふうっー、と、静かに吹いていくと、キートップの粉が取れていくと、

「ああ、キートップの粉がとれて、6個か7個くらい粉が残ったぞ。だけど、これじゃあ、なんだかはっきりしないな。」

「いいえ、まだですよ。」


紗月は、もう一度吹いていくと、もう少し白い粉が減っていくと、

「あんまり変わらないな。」

「そんなことないですよ。よく見て下さいね。キーが6個くらいに、白い粉残りましたよね。だけど、よく見て下さい。その中でも、4個だけ、ちょっとだけ粉が濃く残っているでしょ。この4個がキーの番号ですよ。おまけに、その中でも、1個だけ、特に濃く残っているのがあるのわかりますか。」

「言われてみれば、この3が、なんとなく濃いかな。」

「当たりです。これが、4個の数字のうち、最初に入力した数字なんです。」

「えっ、そんなこと、どうしてわかるんだい。」

「こういう金庫を開ける時に、番号キーを押すのに、最初、一つ目を押したあと、残りの番号は、割と、ポンポンポンって感じで押す傾向が多いんです。そうすると、一つ目のキーが1番強めに押されて、残りの3個は、それよりも軽く押されている。つまり、最初のキーは、残りのキーよりも、指の油が多いんです。だから、粉のつく量は、最初のが多くなる。ただし、その濃さは、よく見ないとわかりにくいですが、粉を吹いて飛ばす具合を調整しながら見ていけば、微妙ですが、わかってきます。」

「宍戸さん、すごいな。だけど、もしも、これが盗品で、盗んだ人が開けようと、何回も打ち込んだらどうする?指の油なんて、全部つくんじゃないか。」 

「それは、盗んだ人にもよりますよ。これなら、大丈夫です。これを売りに来た人は、根気良く番号を打ち込んで開けようとするタイプの人じゃないし、たぶん何回か打ち込んで開かなかったら、打ち込んで開けるのは、すぐにあきらめたと思います。」

「だけど、中身は、現金がたくさん入っているかもしれないだろ。一応、開けるまで、わからないから、もっとやったかもしれないじゃないか。」

「絶対に、それはないですね。だって、この金庫、盗まれてから2日しか、たってないですから。」

「ええっ、どうして、2日ってわかるんだい。それに、本当に盗まれたかもわからないのに。」

「実は、昨晩、ネットで最近あった金庫盗難事件を検索していたんです。そうしたら、2日前に、都内のモデル事務所で金庫の盗難事件があって、盗まれた金庫と同じものが画面にでていて、この金庫だったんです。そして、その事務所の社長さんが、インタビューを受けていて、中身は、大切な書類が色々と入ってましたが、現金とか金目のものは何も入っていないと言ってました。それで、たぶん犯人もこれを見ていて、あきらめたのでしょう。それに、盗んでから、たった2日で買い取り業者に持ってくるなんて、開けても価値がないと知ったからでしょう。そうなったら、あとは、処分にお金がかかりますからね。」


「すごいな、宍戸さん、名探偵コナンか。」

「とにかく、これで、番号がはっきりしたので、あとは、数列を書き出しながら、打ち込んでいくだけだから、なんとかなるかもしれません。」


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