2-14 ありえない動機
そして、コンテストが終わって、2日後、灯は、エミリアのままで、2人の刑事とともに、瞳のいる病院を訪れていた。
3人は、瞳の病室をノックする。すると、
「どうぞ。」
割と、普通の声で、瞳は答えた。そして、
「入るわよ。」
3人が入るや否や、
「エミリアーっ!どうして!どうして、でたのよ!それに、絶対に、まだ痺れて出られなかったはずよ!なのに、どうして、、、、。どうして、でられたのよー!あれは、あの薬は、1か月は、絶対に痺れていたはずなのに、どうして!私の作った薬は、絶対に完璧なはずよ。コーヒーに入れた量だって、絶対に間違いない。どうして、あんな、あんな卑怯なことをするなんて、私のエミリアは、あんな卑怯なことは、絶対にやらないはずよー!うわああああっ!」
瞳は、泣き叫び、怒鳴り、もはや、自分を見失っていて、冷静さを失っていて、もう会話は成り立たない。
すると、エミリアから、
「刑事さん、今の、録音、できました?」
「ああっ、大丈夫だ。言われた通り、ここに入った時から、しっかり録らせてもらったよ。」
「じゃあ、今ので、自白になりますよね。」
「君、すごいな。どうして、言ってほしかったことを、自分から全部話すと思ったんだい。」
「それは、簡単なことですよ。彼女は、薬がどうして効かなかったのか、不思議で仕方なかったので、まず、会うなり、最初にそれをまず聞きたかったんだと思ったのです。それなら、自分から、薬のことを言いだすしかなかった。」
それに、続いて、話しを始めるエミリア、
「刑事さん、実は、今回のコンテスト、もしもライバルのオービスというモデルが出場していたら、まず私は、優勝できなかったのです。でも、私は、あることに気づいていました。オービスの弱点というものを。その弱点とは、オービスは、これまで多くのランウェイを歩き、多くのコンテストにも出場していました。そして、奇跡的に、すべて優勝しています。ただ、当然、優勝していなかったケースがありますが、それはもちろん出場しなかったコンテストです。オービスの弱点は、肌をみせること、つまり、水着審査のあるコンテストには、絶対に恥ずかしくて、出られないのです。そして、私も、実は、どうしてもわけがあって、このコンテストにでて優勝をしたかった。だけど、オービスがでたら、どうしよう。オービスが出場したら、絶対に自分が優勝できないことは、わかっていました。しかし、このコンテストには、水着審査があることに気がついて、それなら、私でも優勝できるからと、出場を決めたのです。
ところが、足浦さんも、オービスが出られないことを知っていて、それを利用して優勝しようとしている私に、そんなずるいことをしてまで、優勝してほしくない、と思ったのでしょう。自分にとって、エミリアは、正々堂々と勝負する人であってほしいのです。足浦さんにとっては、私はどこまでも憧れなのですね。そこで、なんとしても、薬を飲ませて、痺れで出場をキャンセルさせようとしたのです。
そして、私は、トイレに行っている間に、薬をコーヒーに入れられて、うっかりそれを飲んでしまった。でも、たまたま、自分には、効き目があまりなくて、数日で回復しましたが、数日間、身の回りのことをしてくれていた瞳をみて、瞳が犯人だとわかりました。しかし、このことは、自分がコンテストにでて、終わるまでは、このままで伏せておこうと思ったのです。そして、瞳は、絶対に、私がでたことを、くやしくてたまらないと思ったので、今日会いにくれば、絶対に自分から、何か言いだすと思い、刑事さんにも来てもらったのです。」
「そんなことがあったんだね。それで、君は、どうして、足浦さんが犯人とわかったのかな。」
「思い起こせば、あのカフェの時から、ちょっとおかしなところはありましたよ。それは、私がコンテスト出場を足浦さんに初めて告げた時で、彼女は、すごい、とか、本当と、言っていましたが、なぜか、うれしい、
とは言ってくれなかったのです。いつも、私に会う度に、うれしい、って言っていたのに、おかしいって思いましたね。
そうそう、それと、なぜ犯人とわかったかというと、瞳は、首から下げているペンダントありますね。あっ、今も下げていますが、いつも彼女は、必ず、この砂時計のペンダントを下げています。それなので、私も、よく目にしていたのですが、私が入院したあと、首から下げている同じペンダントの中の砂がかなり減っていたんです。そう、中身は、砂じゃない。コーヒーに入れた薬が、入っていたんです。だから、警察で現場を調べても、薬の包み紙も、入れ物も絶対に見つからない。彼女は、いざという時に、すぐに使えるようにもっていたのですね。これから、あのペンダントの中身を調べて下さい。これが、証拠になりますね。だけど、あくまでも、しばらくの間だけ、今回は、1か月だけ痺れさせることだけが目的で、それだけが目的なんです。彼女の薬剤を扱うその腕前は、かなり大したもので、薬の効き目は、それ以上でもそれ以下でも、ありません。そこのところを、よく考慮して頂いて、1日も早く社会復帰ができますように、どうかお計らい下さい。社会復帰したら、彼女は、薬剤関連の重要な仕事につけると思いますよ。宜しくお願い致します。」
「そうだな。もう一つききたいが、それだけの薬を作るのに、どこにも、そのための器具や材料も、何一つ見つからなかったのは、どうしてだと思う。」
「そのことなら、昨日、私がコンビニに忘れものを取りに行ったら、足浦さんを訪ねてきた中年男性がいて、最近、彼女が来なくなったので、コンビニに様子を見にきたのだと言うのです。」
それで、事情をよく聞いてみると、その人は、彼女の親戚のおじさんで、昔は年に一度くらい家に遊びに行ってたらしいのですが、彼女の自宅から少し離れたところに、おじさんの自宅があって、庭の片隅に小さな小屋があるんですが、今は使っていないと言うと、彼女はぜひ使わせてほしいと言うので、自由に使っていいよと貸してあげたというのです。それからは、毎日のように来ていて、帰りにいつもおじさんの自宅に寄ってくれていたのに、最近はしばらくこないので、様子を見にきたと言うのです。
そこで、私は、その人に案内させてもらって、小屋をみせてもらったんです。すると、そこが研究室になっていたのですね。あとから、ご案内しますよ。」
「なるほどなあ。それなら、わからないわけだ。彼女は、その研究は、自宅では一切やっていなかったんだな。」
その後、刑事2人と、灯は、そのおじさんの小屋を見に行った。そこは、約10坪ほどの小屋だったが、中は、テーブルがあり、研究のための器具などがあり、まさに研究室であった。
「ここで、彼女は、その薬を作っていたんだなあ。」
すると、大きなホワイトボードが置いてあり、そこには、びっしりと、難しい数式が書いてあった。
「彼女は、薬学に関しては、相当に優れた才能があったらしい。どうか、やり直して、社会復帰をしてほしいな。」
「そうですね。どうか、そう願っていますよ。」




