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2-10 エミリア、コンビニでバイトをする

モデルをやめた私は、エミリアから、獅子童 灯にすっかり戻ってしまって、見た目の美人度もメイクでだいぶ抑えていました。それに、私が、あの水を飲んだのが35才の時で、飲んだことで、一気に見た目が、顔も身体も20歳過ぎになっていたことも忘れていたのです。そこから先は、これまで身体に何の影響もなく、普通に歳をとっているので、1年たった今、実際の年齢は36才ですが、まだ見た目は20才過ぎくらいで、ほとんど変わらなかった。


そして、オルガのように、消えてしまうのはもう少し先になるのか、どうなのかと考えながら、とりあえずアルバイトでもしようと思ったのです。


コンビニのアルバイトを決めた時、とにかくどこでもよかったので、家の近くの商店街にあるコンビニを選んで面接を受けたのです。


「そちらでアルバイトをしたいのですが、まだ募集してますか。」

電話にでたのは、店長でした。

「大丈夫、まだ募集してますから、明日面接にこられますか。午後3時でいいですか。」

「はい、わかりました。伺います。」


次の日の午後3時、

「面接に参りました獅子童灯ししどうあかりと申します。今日は宜しくお願い致します。」 

あっ、考えてみれば、エミリアになってから、本名を名乗るのなんて初めてだわ。なんて新鮮なんだろう。それに、なんだか、めちゃくちゃ違和感だわ。

「あ、ああっ、よ、よろしく。店長の二宮です。まあ、店長とは言っても、雇われ店長だからね。まあ、そんなことどうでもいいですね。い、いやあ、お若くて驚きました。。」

若い?そんなことないのに。いや、そうだ、忘れてたわ、私は、まだ20才過ぎだった。ここで、やっと、今の見た目の年齢に気づいたのです。店長は、当時35才でした。あらあ、私より年下じゃない。見た目は、私より年下だけど。これから、慣れないといけないけど、接しにくいわ。


書いてきた履歴書に目を通すと、

「ええと、モデル事務所にお勤めの後ですが、空いてますが、何かありましたか。」

そうよ。この後、エミリアでモデルやってたなんて、とても書けないわ。この間は、無職にするしかないじゃない。

「そうですね。ちょっと体調を崩したので、事務所をやめたんです。」

「そうですか。今は大丈夫ですか。」

「ええっ、今は、もう大丈夫です。」

「そうですか。わかりました。じゃあ、明日からこられますか。」

「ええっ?採用ですか。」

「そうですね。採用です。朝9時からでお願いします。」

「宜しくお願いします。」

なんと、すぐに採用されて驚いた。とにかく、よかった。


次の日の朝、初出勤です。

「おはようございます。今日から、宜しくお願い致します。」

すると、コンビニのオーナーと、店長と、もう1人、若い女の子がいた。

そして、オーナーから、

「私が、ここのオーナーの、芝桜望しばざくらのぞむです。獅子童さん、よろしく頼むね。私は、全部現場のことは、店長に任せているから、ここには、月に一度しかこないけど、頑張ってね。」

すると、店長が、

「それでは、獅子童さん、よろしくお願いします。夜勤は、バイトの大学生で、早番と遅番は、私と君と彼女がメインで、あと女性が2人交代でくるから。

「私は、足浦瞳あしうらひとみです。よろしく。」

「じゃあ、足浦さん、獅子童さんに色々と教えてあげて。」

「足浦さん、よろしくおねがいします。」

「こちらこそ、よろしくね、獅子童さん。」

おおっ、足浦さんは、なかなかかわいい子。それに、とても感じがいい。

「ねえ、獅子童さんっていくつ?」

「えっ、一応、21かな。」

「ふふふっ、おかしい。なに、一応って(笑)普通に、21才なんでしょ。」

しまった。つい、エミリアで20才になってから何才になるか考えてたら、こんな言い方になってしまった。

「そ、そうなの。21才なの。」

「???」

「あ、足浦さんはいくつ?」

「えっ、あ、あたしも、21才よ」

「そ、そうなのね。同い年。よろしくね。」

実は、ひとまわり以上、年下だ。話しが合うか心配ね。

「それが、ここだけの話なんだけど、店長ったら、獅子童さんがあんまり美人なんで、その場で採用を決めちゃったよ、なんて言ってたわよ。あたし、何言ってるのって思ったけど、今、あなたを見て、驚いちゃって、納得しちゃったわ。」

「ど、どうも。」

そして、足浦さんは、こんなことも言う。

「だけど、あたし、あなたを、どこかで見たことがある気がするのよね。思い出せないんだけど。」

おおっと、あぶない、それは、あぶない。念のため、明日からメガネかけてこよう。


そして、次の日、

「おはようございます。」

「あら、獅子童さん、どうしたの、メガネ。」

「ああっ、これね、実は、目があまりよくなくて、メガネどうしようかと思ってたんだけど、やっぱりかけてこようと思って。」

「そうなんだ。メガネない方が、もっときれいなのに。残念ね。」

「そ、そんなことないわよ。」

そして、1週間に4日出勤で3日休みの生活がと思っていたのだけど、人が足りてないということで週に5日出ることになって、もともと接客はきらいじゃないので、楽しくこなしていた。ひと月たち、ふた月がすぎて、コンビニは少しずつ売り上げが上がってきたという。灯も、お客が増えてきたように感じていた。すると、店長から、

「獅子童さん、君も気がついているかと思うけど、君がきてからお客さんが増えてるんだよ。どうやら、君が目当てらしい。」

「ええっ、そうなんですか。」

すると、足浦さんも、

「そうなのよ、獅子童さん。だって、忙しい時、あなたとわたしで、レジがとなり同志になると、学生とかあなたの方ばかりに並ぶのよ。女性とかはそこまでじゃないと思うけど、男性の多くは、あなたのいるのを確認して並んでる。絶対にあなたが目当てなのよ。」

「たぶんそうだと思う。近くにある、他のコンビニじゃなくて、こっちに来てる気がするよ。忙しいけど、売り上げが伸びるのはいいことだね。まあ、獅子童さんは、気にしなくていいと思うけど。」


だけど、私は、今、メイクをかなり変えたり、きちんとした服装もしていないし、どこまでも地味な見た目でいるのに、こんなことになるなんて。もっと気合い入れて気をつけなければ。


でも、ちょっと笑わないで下さいね。その頃には、自分では、全く自覚がなかったのですが、昔とは、全く変わったのが、やはり、とてもモテたことです。今は、全力でエミリアを出していないのに、こんなにモテるなんて驚きなんです。いやあ、私は、あの水のおかげで、かなりの美人になっていたのだと、あらためて気づいたのです。


とてもやりがいのある、楽しい毎日。今日も、足浦さんと品出しが終わって、休憩をしていると、足浦さんが雑誌を見ている。

それは、自分がよく表紙を飾ったファッション雑誌「トレンド通信」でした。

うわあ、懐かしい。私、この雑誌の表紙を飾った回数が最多で、その記録はまだ破られていないのよね。

私が、それを横からチラチラと見ていたら、足浦さんが気がついて、

「あらっ、獅子童さん、こういうの興味ある?」

「んっ、そ、そうね。私、昔、モデル事務所に勤めてたからね。」

「ええっ、そうなの。すごい。色々と聞かせて。」

あっ、しまった。この手の話しは、あまり深入りするとまずいわ。ほどほどにしないと。

「ねえ、事務所って、誰がいたの?」

これは、気をつけて、早めに切り上げないと。

「そうねえ。だいぶ、昔だから、今のことはよくわからないけど、有名なのは、オービスかな。」

「知ってる、オービス、大好きよ、綺麗でかわいいわよねー。」

やっぱり、知ってるんだ、オービスを。そりゃそうよね、今も、トップモデルだものね。

「だけど、私はね。もっと好きなモデルがいたの。エミリアって、いうんだけど。もう引退しちゃったけどね。」

ええええっ、うれしい。実は、私、エミリアよ、なんて言えるわけもないしね。ちょっとだけ聞いちゃおうかな。

「ねえねえ、私も知ってるわよ、エミリア。ねえ、どんなところが好きなの?」

すると、足浦さんは、目をキラキラさせて、

「そうねえ。ダメよ、私、エミリアのこと話し出したら、止まらなくなっちゃう。」

ぜんぜんオッケー!です。いくらでも聞いちゃう。

「私なら、話し長くなっても、大丈夫よ。」

「ほんと?」

「ほんと、ほんと。」

「じゃあねえ。まず、もちろん、ものすごくきれいじゃない。それでね、その綺麗で大きな瞳で見つめられたら、吸い込まれそうで、ゾクゾクしちゃうわ。それで、微笑まれたら、倒れそうよ、あたし。それでねえ、そうかと思うと、急に、可愛らしい表情を見せて、そこまでとのギャップがものすごい破壊力なのよ。」

すごくうれしいんだけれども、もう、やっぱり、なんだか恥ずかしくてきいていられないわ。どうしたらいいの、私。

「そ、そうよね。いいわよね、エミリア。」


その後も、足浦瞳のエミリア愛は止まらなかった。すごーくうれしいし、ありがたいんだけれども、恥ずかしさも止まらない。

そんな話しをしていたら、彼女の見ていた雑誌「トレンド通信」は、ファッション好きでも、かなりプロの読むコアな雑誌なので、よほど興味があると思ったのだが、なるほどそういうことだったのだ。

そして、自分は、モデル事務所にいたと言ったことで、色々と教えてほしいと、やけに色々と聞いてきたのでした。

それに、約3か月後に行われる、ミラクルビューティーコンテストに鑑賞の応募しているという。これは、大手の会社10社の主催で行われる大規模なビューティーコンテストで、プロアマ問わず出場可能で、なんと賞金5,000万円という大イベントなのである。


「獅子童さんも、出場しない?絶対にいいところまで行かれると思うわよ。」

「私、そういうの、ちょっと苦手なの。観に行くだけなら、付き合ってもいいけど。」

すでに始まっている、全国で行われている予選会は、どこもプロのモデルが上がっていて、素人は手も足もでないのです。そして、やはり、その中でも、目立って、第一次予選を通過しているのは、モデルラボから出場している2人のモデルがいるらしい。それと、全国チェーン展開をしている有名なスーパー エブリの社長、大場太郎の娘の三姉妹。この三姉妹も、プロのモデルとして活躍をしていて、父親の大場としても、3人とも上位に入れば、話題となり、会社のいい宣伝にもなると、一石二鳥だと期待をしている。

一方で、実は、灯も、そのコンテストに出場を決めた。しかし、コンビニの店長にはもちろん、足浦 瞳や商店街の人たちにも内緒にしておくことにしている。

正直言って、灯は今も、もちろん美人なのだが、コスメから伝授されたプロなみのメイクのせいで、美人ではあるが、エミリアの時とは全く違う別人の顔になっているので、エミリアとして出ている姿を商店街の皆に見られても、絶対にバレないに違いない。しかし、今回、再びエミリアとしてコンテストに出場するのは、灯にある目的があったのである。

だが、灯には、1つの不安が頭をよぎっていた。自分としては、優勝の自信は、あるのだが、これに、もしもオービスが参加してきたら、どうだろう。そうなると、優勝はかなり難しくなる。

だけど、ここで、1つ大切なことに気がついた。それは、オービスの弱点であった。灯は、思った。なぜ、このことに気がつかなかったのだろう。そこで、気持ちを切り替えた灯は、コンテスト参加に意欲を燃やしたのだった。

そして、久しぶりに、エミリアの心を取り戻した灯は、とりあえず、メイク等、元のエミリアとは見た目が違う装いにして、コンテストに参加し、予選に参加していった。


その予選会場の着替え室では、多くの出場する女子たちがいて、着替えながら、何人か灯の方を見ている。

「ねえねえ、見て。あの子、あんな綺麗な子がいたら、私たち絶対に勝てるわけないわね。」

「ほんと。背は高いし、あんなにスタイルのいい人見たことないわ。それに、オーラがものすごいわ。」

かろうじて、まだバレていないエミリアは、圧倒的な強さで予選を勝ち進んでいく。見た目をエミリアにもどすのは、もうしばらくあとになりそうである。


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