2-5 最強の2人
そして、その後、ウニコロのイベント企画部担当者から、モデルラボ に最終確認をされた。もう後戻りはできない。
オービスを呼んで、あらためて話しをするコスメ。
「今回の対決は、あなたにとっては、母国の歴史とだぶってしまって、嫌な気持ちもあるかもしれない。だけど、今回のイベントは、観客や視聴者が、2人のあふれる魅力を堪能して楽しんで、幸せな気持ちになれる平和的なイベントよ。最後の勝ち負けは、マスコミ的には話題になるのかもしれないけど、あくまでもおまけとして考えてもいいわね。
でもね、これがあるから、このイベント全体が引き締まるのよ。実際には、勝った方がすばらしくて、負けた方が残念なんて、そんなことはないのよ。こんな一度のイベントでモデルの優劣なんてつけられない。
あくまでも、私たちは、皆さんに喜んでもらえれば、それでいいの。私たちは、夢を売るのよ。それが私たちの仕事なんだから。」
そして、オービスは、
「私は思い違いをしていました。皆さんに楽しんでもらえたら、それでいいんですよね。今回も楽しんでもらえるように頑張ります。」
そのひと月後、いよいよ、その日がやってきた。約ひと月の準備期間を経て、いよいよ、これまで、行なわれることがなかった、モデル同士の直接的な美の対決が幕を下ろしたのである。
審査員は9名。引き分けは、なしにするために、審査員の人数は、奇数に。
普通、何回も様々な服に着替えて、アピールしたり、歩き方一つにも評価の基準とし、ファッションモデルとしての知識なども多く含まれていくものである。しかし、ここで求められているものは、あくまでも、その2人の持つ美貌に限る。その美貌のみがすべてだという。女性として持っている美しい要素のみを、その評価する対象とする。だが、審査員も人間であるから、様々、女性に対する顔の好みやタイプ、などの方を優先してしまうという傾向など、必ず持っているはずであるが、それをできる限り、自分の気持ちから隠して、一般的にはこうだろうという立場に常に立って、最終的な判断をしてほしい。
そして、この対決には、2つのステージが用意される。それは、まず第一ステージは、彼女たちがモデルとして仕事をしている時の自然な姿が評価対象になる。が、しかし、これは、彼女たちがステージに立つ時ではなくて、その仕事の前に行なう際の、スタッフたちとの打ち合わせ風景での2人の表情である。それを隠し撮りしたものが評価対象となる。彼女たちの普段の、もっとも自然な表情や感情のこもった顔における美しさをみるためである。これを、合計5つの仕事の打ち合わせを、各30分間で、合計2時間30分用意してある。審査員は、この中から、合計で50分間その打ち合わせビデオを見ることができます。各自10分間だけ選んでみてもいいし、ある回は、30分間全部見ても構わない。それは、ビデオの最初をみた時に、やる仕事の内容によってみたいものを配分などを決めてみればよい。ある打ち合わせは、最後の方からみたいとか、様々決めてみてほしい。
それから、画面のズームが可能であり、ここの会話の表情を、顔をもっとアップにしてみたりして、自然な表情をよくみて、評価材料にしてほしい。次に、第二ステージとして、彼女たち、それぞれのアピールタイムになります。審査員を前にするのではなく、閉じられた個室に入り、30分間、様々にポーズをとってもよし、椅子に座って何もしなくてもよし、正面のカメラにできる限り、顔を向けられるようにしてもらえばよい。かといって、後ろ姿をアピールしたければ、それもありなので、30分間後ろ姿ということでなければ、それはアピールの仕方ということでよい。審査員は、カメラを通して、2人をみているので、審査員に見られていることを、意識しなくてもよい。
ここまでの、1時間20分が終わったら、その後、10分のジャッジタイムになります。時間がきたら、どちらか1人を選び、名前をかかげて、結果が発表となります。以上です。
これは、一般的に行なわれるファッションショーやパリコレなどのようなイベントとは決定的に違い、あくまでも2人の美しさを、通常ではない、トップレベルの状態にて競わせるものなので、視聴者が楽しく2人をみる要素は少ないため、ネット配信については、2人のこれまでの過去の仕事での活躍を振り返り、その後、20分ほどにまとめた、審査員のビデオ視聴やアピールタイムでの映像の模様が放送される。
それでは、対決がスタートです。まずは、各審査員は、5本ある打ち合わせビデオの内容をチェックしている。割と、和気あいあいと進められる内容のものや、かなり真剣に話し合いをしているもの、終始笑いが絶えずに進むもの、本人があまり発言をしないで進むものなど、細かい内容は、早送りをしながら探してみたいものを捕まえるのだが、必ずしもみたいものを時間内に全部みられるわけではない。それぞれ、最初に多くメモをしてから、ビデオの早送りをして探し始める人、ひたすら、一本に集中して、顔をアップにして見ている人、ほめられている場面を探してみている人、など、その視点は様々であり、第2ステージになってからは、顔のアップのみを見ている人、常に全身を画面いっぱいにしてみている人などに分かれている。しかしながら、審査員全員共、時々首を傾げる動作がみられ、迷っている様子が最後までみられた。
ここまでの、審査員たちの審査が困難と感じている点があったようだ。それは、やはり、まず、16才と20才の年齢の差であった。たった4才とはいえ、16才のオービスは、まだ学生であり、初々しさにあふれている。その美しさの中には、可愛さも同時にあふれていて、いかにも高校生モデルという感が評価の中には、どうしても含まれてしまう。まして、今回の、打ち合わせビデオでは、制服のまま打ち合わせをしているオービスの姿は、素の可憐な高校生の魅力があふれている。この姿は、ランウェイなどでは見られない1人の美少女の姿なのである。その魅力を、今まで以上に発揮するオービスに対して、一方では、エミリアが、これがまた、打ち合わせビデオの中でも、オービスとは全く別の魅力を振りまいていて、これがまた、目が離せない。
それぞれの審査員は、少し審査する立場を忘れ、打ち合わせビデオの2人の素の表情の姿に魅せられていた。
「なんてことだ。ランウェイなどで着飾った姿でない、打ち合わせの姿など、どうせ、観ても評価にならないと、観たふりをして、第2ステージに進もうと思ったが、とんでもない。
素になった2人だが、これが思いがけずに、魅力的なのだ。10代のオービスは、まだ高校生で、美の対決など、まだ早すぎて何を言ってるかなどと高をくくっていたのだが、その屈託ない笑顔に、あっという間に引き込まれてしまった。その美少女ぶりに、40すぎの私が、一気に10代の頃に戻り、当時のまだ汚れを知らない少年が初恋をした時のドキドキの気持ちに戻ってしまっている。ああっ、この頃にこんな美少女がいたのなら、学園生活が何倍も楽しいものになっていただろう。今、自分は、その妄想の中で、切ない気持ちがあふれてしまっている。気持ちがキュンとなって、切なすぎる、こんな美少女に巡り合っていたのなら、と、こんなにも甘く切ない気持ちは、言葉にならない。
すると、ふと、我に返り、これではいけないと、そのオービスへの想いを無理矢理、横に置いておき、エミリアの方に、心を向けてみる。しかし、これがまた、吸い込まれそうな眼差しに、心が動き始める。目を見開いたまま、ちょっとだけ、口をへの字にして、ちょっとだけ困った表情の顔をするエミリア。それが、また、なんともキュートすぎて、自分が大好きな彼女が横で困っているような状況の場に、たちまち、置かれてしまった。女性に恋をしている、うれしくも恋焦がれる苦しい気持ちになり、片想いの切ない気持ちがよみがえる。その気持ちは、苦しいのにうれしい、なんとも言えない。
どちらも、それぞれのすばらしい魅力を持っていて、これは、もうどちらかを選ぶのは、自分にはできない。そもそも、この2人の魅力は、別々のものであり、比べても仕方がない。こんなに至福の時が、他にあろうか。」
また、他の審査員は、
「あることで褒められていた2人の映像を、やっと探し当てた。それぞれ見てみると、高校生のオービスは、本当にうれしそうで、その上、照れ隠しの表情。だめだ、こんな表情は、キュートすぎて、やられてしまう。そもそも、美の対決と言っているのに、さらに可愛さをもってきたら、いけないだろう。ランウェイ勝負だったら、こんな攻撃は見られなかった。だめだ、この表情だけ見たくて、何回も再生してしまう。
エミリアも見なければ。ちょっと、冷静になって、エミリアのビデオを早送りしながら、観ていたが、黙ったまま相手の話しを聞いている。口をむっ、と、軽く閉じたまま、何回もうなずいている。うん、うん、という、無言でも伝わってくる声。この表情が、なんとも言えない。綺麗なのに可愛いすぎなのだ。こんな表情を見つけてしまったら、そこから先は、そんな至福になる表情ばかり探してしまうではないか。いや、困った。」
「多くのビデオを早送りして、なるべく早くたくさん見ようと思ったが、一つ気に入った表情に捕まってしまうと、もうなかなか先には進めない。2人とも、綺麗なのに、その屈託ない笑顔を見せられたら、もう2人の虜になってしまった。」
「ランウェイよりも、素の表情だなんて、そんな、モデルの普通の姿を見せられて、何が評価になるのか、そんな気持ちで、渋々見始めたのだが、綺麗な顔に、可愛い表情を乗せられて、可憐さが爆上がりだ。
これは、とんでもないものを魅せられている。これから、どちらか決めないといけないなんて、最初は楽しみにしていたが、今日は、とんでもないことになってしまった。」




