9-12 マネージャー・一条麗奈12
すると、突然に、声がして、
「やめなさいよ。その鍵を開けたら。ひどい目にあわせるわよ。」
振り返ると、2人のカタリーナが、立っていた。しかし、それを見た麗奈は、とても不思議に思った。
それは、1人のカタリーナは、まさにカタリーナ本人そのものであるが、もう1人のカタリーナは、カタリーナのマスクのようなものをかぶっていて、そのマスクは、とても良くできていて完璧に密着していて、まるで見た目は、全く違和感なく本人のようだった。しかしながら、それなのに、私にはマスクをかぶっていることが、なぜだかわかるのだった。
この2人は、いったい、何を表しているのか。すると、カタリーナの1人が、
「その球体は、もう、開けることはないのだから、触らないで。」
麗奈は、すぐに手を止めて、
「あなたたちは、誰?名前を聞かせて。」
「私たちは、2人ともカタリーナよ。2人で、協力してモデルの仕事をしているわ。」
「だけど、カタリーナは、モデルの名前でしょう。本当の名前を教えて。」
すると、1人のカタリーナは、
「私は、片野山玲子。」
すると、もう1人も、
「私も、片野山玲子」
そうか、この名前は、記憶を失ってから、身元がわからないまま、付いた新しい名前ね。
「あなたたちは、本当の名前は、違うのよ。あなたたち2人の本当の名前は、群青香織なのよ。」
すると、2人の顔が怒り心頭の表情になり、
「いいかげんなことを言わないで!もう、どこかに行ってちょうだい!もう2度と合わないわ!」
怒りながら、去っていく2人。
「2人とも、過去の記憶がないから、今の人格を否定されて、動揺しているんだわ。それから、1人のカタリーナは、本当に元々カタリーナの顔を自覚しているけど、もう1人のカタリーナは、自分の中のどこかで、無意識にあとからカタリーナになった意識があるんだわ。だから、精巧なマスクをかぶっているのね。あのマスクの下には、きっと群青香織の顔があるに違いないわ。」
すると、そこで、一計を案じた麗奈は、とりあえず、この球体の鍵を壊すのではなくて、さっきの少女に、群青香織だと自覚させることが、まずは必要だと考えた。
「とにかく、さっきの少女を探さなくては。」
麗奈は、そのまま、少女を探し続けた。そして、そこから、かなり離れたところで、寝ている少女を発見した。ベッドのように見える白いマットのようなものに横たわっている。すぐに、彼女に、声をかけて、起こした。
「もしもし、群青さん、群青香織さん!」
すると、思わず、目を覚ました、その少女、
「ええ、な、なんですって!今、なんて言ったの?」
「群青香織!あなたの名前よ!思い出して!」
「ええ、う、うそでしょー。」
「よく聞いてね、あなたは、群青香織っていう名前で、私は、友人の一条麗奈よ。思い出して!」
「ええ、いきなり、そんなこと言われても、わからないわ。なんだか、複雑な気持ちよ。」
複雑というなら、それは気持ちの葛藤なので、たぶんいい兆候だと思う。
「よく聞いてね。あなたは、カタリーナの名前を名乗っているけど、本名は、群青香織なのよ。」
「ええ、そ、そんなこと!頭が痛くなってきたわ!」
すると、2人のカタリーナが、再び、姿を現した。
「待ちなさい、あなた、余計なこと、言わないで!」
そう言うと、いきなり、回し蹴りを入れてきたカタリーナ、それを避けると大きく一歩退く麗奈。
「何をするの!でも、今のあなたの技は、まだ無意識のうちにやっているものだから、私には勝てないわ。たくさんの技を繰り出してきた記憶がなければ、私には、勝てない。私、今から、あなたを倒して、必ず、群青香織の記憶を取り戻してみせるわ。」
今、攻撃してきたのは、精巧なマスクをかぶっている方のカタリーナ、
「そうはさせないわ。」
すると、もう1人のカタリーナに向かって、
「もう1人の私!あの白い球体の鍵をはずして、中から、私が使っていた技の記憶を探して取り出してきて!わかった!その記憶だけ取り出すのよ!そして、他の記憶は漏れないようにして、また必ず球体の鍵をかけるのを忘れないで!」
「わかったわ!」
あの白い球体の鍵は、あと一歩のところで壊せたのだが、もう1人のカタリーナは、みるみるうちにその鍵を外し、その扉を開けて、中に飛び込んだ。麗奈が、そこに駆け寄ろうとすると、マスクのカタリーナの突きの攻撃で妨げられた。




