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9-11 マネージャー・一条麗奈11

 しかし、今の状態では、扉の鍵はどんなことをしても壊すことはできない。そこで、麗奈が見たものは、その鍵をはずそうとして、鍵穴を操作している1人の少女が。


 しかし、厳密に言えば、少女らしい人という表現が正しいのかもしれない。それは、なぜなのかというと、顔の部分がぼやけていて、実は、はっきり少女だとも、どんな顔であるとも、正確なことまでは言えないが、少女らしい服装から判断したことであった。それは、群青香織ぐんじょうかおりが、その、これまでの記憶を取り戻したいと思う心が擬人化している姿なのであり、記憶を取り戻したいという心なのであった。この時点では、当然、自分のことが思い出せていないので、その顔が思い出せず、まさに、顔の部分だけがぼやけているということなのだろう。ただ言えることは、群青香織ぐんじょうかおりとしての記憶が、全くのゼロではなくて、この少女らしき形として、無意識の状態で残っていたことは、記憶を呼び覚ますための可能性を多少なりとも感じたのである。


 すると、その少女のことが理解できた麗奈は、声をかけた。


「ねえ、あなた、その記憶の球体の鍵をはずそうとしているのね。」

「そうねえ、私にも、そこまではよくわからないけれども、この球体の鍵を開けて、いつか扉を開けなければいけないと、そう無意識に感じているの。本当に、その理由まではわからないわ。そういう、あなたは、誰?以前会ったことがあるかもしれないけど、思い出せないわ。」

「それは、あなたが自分のことをはっきりと思い出せないことと同じことよ。でも、この白い球体の鍵を壊して、扉が開かれたら、あなたは、自分のこともわかるし、私が誰なのかわかると思うわ。」

「そうなのね。私は、そこまではわからなかったわ。」

「ねえ、だけど、鍵を開けるのは、難しいと思うけど、どうして、鍵を壊してしまわないの。」

「途中まで鍵を開けかけていると、いつのまにか、元に戻ってしまっているのよ。」


 そうなの。どうしてなのかしら。ただ、この少女、よく見ると、身体も若干、透明で透けているわ。ということは、そこまでの強い意識じゃないってことなのね。そうか、記憶を取り戻したい意識はあっても、普段自覚のない無意識なのね。それに、自分が誰なのかが、本当にわかっていないから、だから、邪魔されて壊されても、最初から守ろうとするほどの気持ちの強さはないんだわ。それが無意識の弱さなのね。


 すると、突然、帰ろうとする少女。

「あら、どうしたの。まだ途中じゃない。」

「今日は、ここまでよ。いつも開ける時には、だいたいこの程度までにして、しばらくしたら、また最後の仕上げのためにくるわ。たぶん、この次には、開けられると思う。」

「ええ、だったら、今、最後まで開けてしまったらいいのに。」

「私も、色々と他にやることがあるからね。じゃあね。」

少女は、帰っていった。


 それを、しみじみと見ていた麗奈は、続いて最後の仕上げをするのではなくて、鍵を壊してしまおうと、開けるための道具を見つけようと周囲を探していた。

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