9-9 マネージャー・一条麗奈⑨
早速、カタリーナに連絡をして、彼女はすぐにやってきた。
「あなたたちは、誰?麗奈は、どこにいるの?私、麗奈から呼ばれたのよ。」
「カタリーナ、私の声を聞いて、わからない?」
「ええ?あなた、ひょっとして?あなた?麗奈?声は、たしかに麗奈だけど、その顔、、、。」
「そう、初めてみる顔でしょ。これが私の本当の顔よ。元に戻ったのよ。」
「なんですって!戻ることができたなんて。もう戻れないって言ってたわよね。あ?あなたなの!もう、わかったわ。そのままでも、いいわ。そのまま、これからも、マネージャーを続けるのよ。」
「ごめんなさいね。もう、これでお別れよ、カタリーナ。」
「だめよ。それなら、あの動画を流すだけよ。」
「そのことならね。私、先日、破門になってしまったから、もうお好きなように。あっ、もっとも、顔もあの時とは違ったから、出されてもいいわ。もう、すべて終わったのよ。カタリーナ。お別れね。」
もはや、どうしようもないという表情のカタリーナ。
「わかったわ。残念ね。もう、私、帰るわ、、、。」
「ごめんなさいね、カタリーナ。」
部屋から出て行くカタリーナ。しかし、その時、出口近くの本棚の1番上の棚にある、落ちそうになっていた本が突然落ちてきて、カタリーナの頭を直撃寸前になった。
とっさにそれをかわすカタリーナ。
それをみていた実務と一条麗奈。互いに、ハッと顔を見合わせると、
「一条さん、今の、見た?」
「見たわよ、はっきりとね!」
すると、次の瞬間、麗奈、机の上にあったボールペンをカタリーナに向けて投げた。
すると、ボールペンは、カタリーナの後頭部に当たりそうになると、その直前に、いきなり振り返ったカタリーナ、顔の前で、2本指を揃えたポーズで、パシッ、と、ボールペンを挟んで受け止めた。
「何をするの!危ないじゃない!」
それを見て、麗奈は走って、カタリーナに対峙すると、回し蹴りをする麗奈。しかし、カタリーナは、それよりも一瞬早く、上体をぐっと下げて、それをよけながら、右脚を前方に思い切り伸ばし、身体を軸にして、その脚は床ギリギリに、麗奈を倒さんとばかりに、超スピードで弧を描く。麗奈は、それをギリギリでよけると、飛び上がり、カタリーナの頭上を超えて、着地して、振り返った。
「さすがね。この、上体を下げてからの高速の払い、これをできるのは、私の知っているあの人しかいないわ。この人の動きこそ、琥珀の翼での、私の最高のライバルだった、群青香織、その人よ。今やった、あの驚異的な速さで、もしも素足で当たれば岩をも砕く驚異的な脚力を発揮する、この回転技を避けられるのは、私しかいないはずよ。あの人の得意技だもの。だけど、これは、どういうこと。見た目は、どうみても、あの人じゃないし、私のこともわかっていない。よくわからなくなってきたわ。」
すると、実務は、叫んだ。
「麗奈!カタリーナは、たぶん記憶を失っているのよ。彼女の目を、目を見てごらんなさい。今の技は、あなたの攻撃で無意識に身体が動いて反応しただけで、カタリーナは、どうしてあんな動きができたかわからずに動揺している。中身は、カタリーナではないことは、まちがいないわ。」
「やっぱり、この人は、カタリーナじゃなくて、やっぱり私の知る彼女なのね。それならいいわ。私に考えがある。」
すると、素早く、首に左から手刀を入れる麗奈。カタリーナは、右に動いて避ける。
すると、
「引っかかったわね、この手刀は、誘導の手刀よ。本物は、こっち!」
右によけた、カタリーナのその右脇から右腕を通すと、ぐいっとその肘を曲げて、その後頭部へと突きを入れた。
「右の、脇から入れば、上体を下げられないから、この突きは避けられない。これでおしまいよ。」
その突きは、後頭部を見事に捉え、カタリーナは気を失った。
「すごいわ!一条さん!」
すると、麗奈は、カタリーナを抱きかかえて、壁にもたれかけさせ椅子にすわらせた。その前にもう一つ椅子を置いて、向き合って座る麗奈。両肩に手を置いて、姿勢を正し呼吸を整えている。
「今から、必ず記憶を取り戻してみせるわ!覚有回帰の術!」
そして、互いの額を密着させると、目を閉じていく麗奈。すると、麗奈の意識は、カタリーナの額から、脳内へと入っていく。




