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9-8 マネージャー・一条麗奈⑧

 ゆっくりと、目を閉じる麗奈。さらに意識を集中させていく。そして、1分、2分、3分、、、と、さらに、時間が過ぎていく。さらに、5分以上も過ぎていっただろうか。


 オービスの繊細なレベルに、ようやく到達した麗奈のセンサーだが、こここそが1番の頑張りどころである。とうとう、精度2㎜にまできた。そして、ようやく、1㎜の精度までに達した。ここで、センサーの読み取りを起こそうと思った麗奈。だが、ふと、これは、まだそのタイミングではないと、とっさに判断した。すると、改めて、センサーを待機状態にして、さらに高純度化を進めていく。すると、せき止めたダムを開門するかのように、センサーの読み取りが、オービスに向けて、自然に雪崩れ込んでいく。


 ここだわ!このタイミングよ!


 そう感じた麗奈は、改めて、自らの意志でセンサーの読み取りを開始した。すると、オービスの、その繊細さに次々に適応して、読み取っていく。その、精度と速さは、衰えることなく、着実に進んでいった。


 そして、完璧な読み取り終了とともに、今度は、そのデータに基づいて構築を始めた。麗奈自身の顔が硬直していき、震えている。


 ああああーーっ、と声をあげながら、

麗奈は、ゆっくりと大きく目を見開くと、ガクッと、頭を前に倒して、うなだれた。


 その途端、先に起き上がったオービスは、麗奈の顔を見ると、なんと自分と同じ顔になっていた。

「えっ!ど、どういうこと!私の顔になってるわ!」


すると、実務からも、

「やったわね。これができれば、いくつかの壁も乗り越えられるわね。」

「よかったわ。でも、本当に難しかったわ。」


すると、実務から、畳み掛けるように言われて、

「さて、喜ぶのは、まだ早いわよ。今回は、まだもう一つやることがあるわよ。」

「えっ、どういうこと?」

「今は、人の顔を移したということでしょう。本来なら、自分の顔を戻せないと、完全にできたとはいえないわ。その回復の術を完璧にやり遂げて、初めて、移面術を体得したと言えるのよ。今から、一度、自分の顔に戻してみて。」


「だけど、ここまでのことが、できたら、もうすべてできたも同然でしょう。」

「それじゃあね。一度、自分の顔に戻してご覧なさい。この、回復の術をとりあえずやってみましょうよ。そうすれば、私の言ってる意味がわかるから。」

「もちろん、顔は戻すけど、移面術の中では、回復の術が1番簡単なことでしょ。こないだはできなかったけど、今なら、オービスの顔移しもできて、かなりのレベルアップしたし、今度は、確実に大丈夫よ。」

「さあ、どうかしら。」

「それじゃ、みていてね。」


 麗奈は、椅子に腰掛けると、呼吸を整えて、ゆっくり目を閉じた。すると、センサーを開いて、読み取りを始めている。しかし、だんだん苦悶の表情になる麗奈。そして、とうとう、読み取りが終わらず、倒れてしまった。


はあ、はあ、はあっーーーっ、


「ええっ、できない、できないわ。こんな、こんな、簡単なことが、、、。どうして。おかしいわ。あの時と同じ。」


実務は、口を開いた。

「そう、できないでしょう。なぜだと思う。」

「えっ、あなたにわかるの。」

「そうね。これまでのあなたを見ていれば、難しいことじゃないわ。」

「どうしてできないの。あんなに難しいオービスの読み取りができたのに、移面術の1番簡単な回復の術ができないなんて、いったいどういうことなの。おかしいわよ。」


「それはね。一条さん、あなた、回復の術をする時、どこの読み取りをしているの。」

「それは、もちろん、自分の顔だもの、自分でわかるから、それをイメージして、そこから読み取っているわ。どんな人の読み取りよりも、簡単なことよ。自分の顔がイメージできない人なんていないでしょ。」

「それじゃ、自分でイメージした自分の姿を読み取っているというわけね。」

「そうよ、その通り。」

「それだと、読み取りの対象としては、弱いのよ。それが、あなたが失敗した原因よ。」

「それは、違うわ。だって、今の私は、オービスのような繊細な読み取りも成功したのよ。だから、自分の顔のイメージが弱くても、自分の読み取りの精度が高いから、読み取りができないわけはないわ。私は、何か、他に原因があると思う。」

「原因は、そこではないわ。自分の顔は、読み取りが簡単だと油断して、自分でもわからないうちに、その読み取りに手を抜いていたのが原因なのよ。本来なら、回復の術でも、自分の遺伝子からの補助をしながら、読み取りをしなければ、人の顔の読み取りをする時よりも、読み取る対象のイメージが絶対に弱いはずよ。 


 自身の顔なんて、これほどにわかりきったイメージはないと決めつけて、読み取りの精度を無意識に下げているのよ。実際には、具体的に読み取るイメージが存在しないから、自分の中にある自身の顔のイメージって、人の顔を移す時に本物の人から読み取るよりも絶対に弱いはずよ。だから、自分の時は、自分の中にある自分の顔のイメージに、自身の遺伝子のデータの中を少し読み取りながら、顔のイメージを補足することが必要なはずよ。だけど、移面術の腕が上がるほどに、自信があるから、無意識のうちにイメージの読み取りだけでなんとかやり遂げようとしてしまい、失敗するのよ。回復の術を軽く考えないで、さっき、オービスの時と同じくらいの真剣な気持ちでやってご覧なさい。簡単にやろうとか、早くやろうと思わないで。」


「だけど、回復の術にそこまでの意気込みは必要ないと思うのだけど、、、。でも、わかったわ。一度、実務さんの言う通りに、やってみるわ。」


 椅子に座り直して、姿勢を整え、目を閉じて、呼吸を始める麗奈。

さあ、始めるわ。あっ、だめだめ、これだと、さっきと同じことね。もっと、気合いを入れて、もっと真剣にやり直しよ。


 オービスの時の、あの時と同じように、センサーを開いて、自身のイメージを作ってから、今度は、遺伝子の中の顔のデータにセンサーを開いていくわ。

ああ、信じられないくらいに、スッと、データが読み取れる。さっきの顔のイメージと、あっという間に融合したわ。


 ああっ、なんということ!どんどん顔が構築されていく!すごい速度だわ!ああ、終わったわ!できた!


 目を開けて、すぐに鏡をとり、自身の顔を見る麗奈。

「ああ、やっと、戻ってきたわ、私の顔が。それも、あんなに簡単に。」

「やったわね。一条さん。でも、簡単にできて、簡単じゃなかったってことね。」

「本当に、自分の顔をみるの、何年ぶりかしら。これで、もうカタリーナから離れられるわ。」

「じゃあ、早速、カタリーナをここに呼んで、話しをした方がいいわね。これからのこととか。」

「そうするわ。」

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