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9-5 マネージャー・一条麗奈⑤

 ある時、麗奈は、主理の許可を得ずに、練習の意味で、ある女性に、こっそりと、移面術いめんじゅつを試みた。これは、顔移しをする相手に気づかれずに行なうこともできることから、ある女性に仕掛けてみた。普通のフェイスマスクをしたままなら、顔が移っても相手に知られることがないので、そのようにして試みた。


 すると、4年もの間、あれだけ困難とされていて、一度も成功しなかったのに、見事に成し遂げることができたのであった。しかし、それは、想定外であり、とうとう最高位の境地に達したことに、麗奈は歓喜した。ところが、元に戻るための方法である回復の術が、うまくいかないのだ。絶対に回復の術の方が明らかに簡単だというのに、全く元に戻れない。麗奈は、焦り、このまま、主理にわかったら、破門になってしまう。とにかく、他のメンバーにわかってしまったら、大変なので、とりあえず、旅行に行くことを、仲間を通じて、主理や他の仲間に伝えてもらって、しばらく留守にすることにした。


 そして、都会に移り住み、コンビニでアルバイトをしながら、休日には、訓練を兼ねて、回復の術を試みていた。

 すると、ある日、コンビニで品出しをしていると、なぜか駐車場の方で、数人の声がしていて、何か揉めているような声がした。しばらく、その騒ぎも止まないので、麗奈は、様子をみに行くと、2人の女性に対して

7人の男性がからんでいた。麗奈は、周りを見回して、誰もいないことを確認すると、その中に割り込んで行った。


「あんたたち、女性2人に対して、7人でからむなんて、ひきょうなことするじゃないの。」

「なんだと。ねえちゃん、あんた、関係ないだろ、そこ、どけよ!」


 すると、麗奈は、2人に、

「いいから、早く逃げなさい!早く!」

「わ、悪いね!あなた1人じゃ、大丈夫!」

「私のことは、いいから、早く!」

「わかった、悪いわね、警察、呼ぶわね!」

「いいえ、警察は、呼ばないで!大丈夫だから!絶対に呼ばないでね、わかった!」


 すると、一目散に逃げていく2人、それを見届け、もう一度、周りに誰もいないことを確認すると、


「もう、いいから、これで帰りなさいよ、さもないと、酷い目にあうわよ。」

「なんだと、酷い目にあうのは、お前だろうが!」


 すると、全員で、麗奈に向けて飛びかかった。それをすべて避けると、全員に対して、それぞれ、たったの一撃で、一瞬のうちに、全員を倒していった。

「たぶん、明日1日は、普通に歩けないかもしれないけど、あさってには、普通に歩けるようになるから、それまで我慢しなさい。もう、こんなことやめなさいね。」

そういうと、麗奈は、コンビニに戻って行った。


 そして、レジにいると、1人の女性が、カゴを持って、会計にきた。そして、レジ打ちをする麗奈に、

「今、私、見てたわよ、何あれ、あなた、すごいわね、格闘技か何か、やってるの?」


 しまった!確認したのに、見られていたなんて!

「えっ、何のことですか?」

「かくしても、ダメよ。私ね、携帯で撮ってたからね。あなたって、どういう人なの?とても、ただの格闘技ではないでしょ。あんなにすごいの、初めて見たわ。わけを全部話してよ。じゃないと、この動画をSNSに拡散するわよ。」

「わかったわ、じゃあ、あと1時間で仕事が終わるから、その後でもいい?」


 その後、バイトを終え、カフェに移ると、その女性に、自分が修行をして、格闘技などができることや、後で気付いたことだが、移面術に失敗したことから、ここにきたことまで、うかつにもしゃべってしまったのであった。

「そんなこと、私が信じると思う。」

「今、話したことは、本当よ。本当なのよ。」

「まあ、あなたが格闘技がすごいことは、さっき見てたから納得したけど、顔が移るって、そんなこと信じられないわ。今のあなたの顔って、あなたの顔じゃないってことなの。」

「そうなのよ。」

「わかったわ。じゃあ、信じてあげる代わりに、今、私の顔を移してみることって、できる?」

「そうね。だけど、今回も4年かかって、初めてできたことだから、絶対とは言えないけどね、ものすごく難しいのよ。」

「あらあら、実は、本当は、できないんでしょ。そんなこと、ありえないものね。」

「そんなことないわ。たぶん、できると思うわ。この間、できたばかりだもの。」

「じゃあ、今、ここでやってみてよ。そんなに言うなら!」

「わかったわ。じゃあ、やってあげる。」

「あなた、本当にやるつもり?痛いとか、そういうこと、ないわよね。」

「大丈夫よ。顔が、かゆくなるとかは、もしかしたらあるかもしれないけど、たぶん、そんな程度よ。」


 すると、彼女に正面で向かって、その右手を右手でつかむ麗奈。そして、意識を集中させると、集中するに従って、麗奈の体温が上がっていく。そして、ゆっくりと、目を閉じる麗奈。さらに意識を集中させていく。そして、1分、2分、3分、、、と、さらに、時間が過ぎていく。さらに、5分以上も過ぎていっただろうか。麗奈は、ゆっくりと大きく目を見開くと、ガクッと、頭を前に倒して、うなだれた。その途端、その女性、モデルのカタリーナは、麗奈の顔を見ると、なんと自分と同じ顔になっていた。


「えっ!あなた!私の顔になってるわ!」

「で、できたわ!前回と違って、迷ったこともないし、今度は、完璧にやり遂げたと感じられたわ。これで、私も、のレベルまで到達したのよ。」


 その女性、モデルのカタリーナは、驚きを隠せない表情で麗奈に近寄り、その顔を凝視して、

「こんなことって!信じられない!私の顔よ!まるで、鏡でも見ているようだわ!」

「だから、言ったでしょう。こんなすごいこと!ありえないでしょう。」


 すると、ふふふふっ、と笑いだすカタリーナ、

「あなたねえ、今日から、私のマネージャーになるのよ。私、これまでのモデル事務所を辞めて独立したから、あなた、今日から私のマネージャーよ。いやなら、さっきの動画を配信するからね。それで、これからは、マスクをして、その顔を隠してちょうだい。そして、これからは、私が休みの日は、あなたは私の代わりに仕事をするのよ。いいわね。」


 実は、琥珀こはくつばさは、最低レベルのせいのレベルに達して、そのメンバーに参入すると、メンバーは、特別な世界を共有することができる。その中では、メンバー全員がつながっており、交心術こうしんじゅつといって、心の中で、他のメンバーに話しかけると、連絡を取り合うことができる。一種のテレパシーのようなものである。


 麗奈も、勝手に移面術を行なって、違反をして、故郷をあとにしてから、メンバーから、何回も連絡をもらっていたが、返事を返さないでいた。しかし、今回、移面術の2回目をやり遂げ完全体得したことで、つい、その喜びを仲間に伝えてしまった。だが、それにより、主理しゅりの知ることとなり、破門されてしまったのである。そして、故郷には帰ることも叶わず、カタリーナの、まさに影武者のような存在となり、彼女のマネージャーになったのである。

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