9-2 マネージャー・一条麗奈②
そんな頃、モデル業界で常にトップモデルとして有名なモデル、カタリーナ。コスメスとは、現場でよく一緒になる機会が多いのだが、彼女には、甲斐甲斐しく働くマネージャーがいた。彼女は、ほとんどの現場にいるのだが、時々いない時があって、なぜかと聞けば、マネージャーに休みをとらせているという。
すると、カタリーナ自身が人が変わったかのように身の回りのことをこなしている。いつもは、マネージャーに細かいところまで、すべて言い付けていて、全く何もやらないのに、マネージャーがいない時には、それはもう自分のことは、自分1人でやるしかない。
そこまでしっかりやるのなら、マネージャーはいなくてもいいんじゃないかと、冗談を言われていた。しかし、周りの皆は、カタリーナが自分の仕事がある時でも、マネージャーに休みを与えて、1人で現場をこなすような思いやりがあることを、ちょっと見直していた。
しかしながら、そのマネージャーを務めていた一条麗奈は、とてもよく気がつき、周囲に対する気配りも素晴らしかった。カタリーナの仕事の現場では、カタリーナのことはもちろんだが、他のモデルたちが様々、何か必要なことがあれば、惜しまずに手助けをして、これほどまでに気がつくマネージャーは珍しく、現場での、彼女の気配りをみていたコスメは、あんな子が事務所にほしいと感心しきりであった。
彼女は、喘息持ちということで、常に大きめのマスクをしていたのだが、そのマスク姿から見える瞳は、とても素人とは思えない綺麗な眼差しが見て取れた。しかし、彼女は、カタリーナに対して、とても気を配り、いつも一歩退いた立場を決して崩さないようにして、常に目立たないようにしていた。
しかし、共に、現場で接しているうちに、メイクや、その容姿を見たり分析するテクニックの優れていたコスメは、そのマネージャーの素顔は、かなりの逸材だと確信するようになっていた。そして、いつか、その素顔をどうしても、ひと目見たいという衝動にかられていた。やはり、モデル事務所の社長を長年務めてきた性なのだろうか。
しかし、そのマネージャー、一条麗奈は、自分のプライベートを大切にするため、その素顔を隠すことに対する徹底ぶりは、驚きで、現場に食事時になると、カタリーナの食事が済むのを確認すると、自分の車に戻り、車内でカーテンを閉めてから食事をとるという徹底ぶり。そして、彼女は、カタリーナのマネージャーを始めてから、カタリーナと同居するようになっていて、プライベートでも世話をしていて、まさに、家族か姉妹並みの世話をしているのであった。
その2人の関係性を見ていると、どうにも、一条麗奈は、カタリーナの言いなりであり、カタリーナからの扱いがそこまで酷いというわけではないのだが、どうみても、一条麗奈は、ただ雇われているというレベルを超えたものを、コスメは感じていた。




