8-12 憧れのエミリア12、、、エピソード8最終話
一方、頭を打って意識を失ったコスメは、以前として、意識が戻らず、数日が過ぎていた。アルタコーネス国の医療チームから提供されたメディカルポッドの操作パネルでは、治療中につき良好、の表示を示しているのだが、夫の蓮津を始め、モデルたちは心配が募っていた。
そして、蓮津は、メディカルポッドの中を覗きこみ、倒れてから久しぶりにコスメの状態をみた。
すると、あまりにも驚きの出来事に、蓮津は言葉を失った。
その驚きは、想像を完全に超えたものであり、すぐに、蜂部医師を呼んだ。同じくポッドを覗きこみ、驚く蜂部、
「こんなことってあるのか!国からポッドを取りに来て、これを見られたら、大変なことになるぞ。なんとか、ならないのか!」
そう言って、ポッドのパネルを操作してみる蜂部。すると、開閉ボタンをみつけて、押してみると、ウィーン、という音と共に、蓋が開いた。
「おい!蓮津くん、ポッドが開いたぞ。横にストレッチャーを持ってきてくれ!早く早く!」
2人で、コスメを引っ張りだし、2人で、その治療液に浸かっていた身体を拭きとり、ストレッチャーに乗せて、運び出した。
「コスメを別の離れた部屋に移動するからな。蓮津くんは、ポッドを閉めてくれ。おっと、電源は切らないでおいてくれ。」
その数日後、アルタコーネス国の医療チームがメディカルポッドの回収を行ないにやってきた。すると、その作業員が、ポッドの中を確認すると、
「おやっ、患者は、どうしました?」
近くで焦った表情になる蓮津、蜂部医師の方を見ながら、
「ああ、患者は、意識が戻ったので、ポッドから出したんです。今、別室で休んでいますよ、そうですよね、蜂部先生。」
「困りますね。治療終了のアラームが鳴る前に勝手に出してしまっては。そのポッドの操作は、基本的に我々が任されています。もしも、ポッドから出た後、患者に、何かあったら、我々の責任になってしまうのです。出してもかまわないですが、アラームが鳴ってからと言ったはずですよ。」
「じゃあ、内緒にしますから、それなら、いいですか。」
「本当に内緒にして下さいよ。お願いします。」
「大丈夫。絶対に言いませんから。」
「頼みますよ。じゃあ、ポッドを回収していきます。どうかお大事にして下さい。」
「本当にありがとうございました。」
そう言うと、2人は、ポッドを回収していった。
しかし、別部屋に移ったコスメは、まだ意識は戻らない。再び、コスメの様子を見に来た、蓮津と蜂部医師は、コスメをみて、呆然としている。
「これは、メディカルポッドのせいなのか。」
「いや、そんなことはないだろう。」
「だけど、それ以外に何か考えられない。何も心当たりがない。」
「どちらにしても、意識が戻ってから、本人と話しをしないことには何も進まないな。」
いったい、コスメに何が起こったのか。メディカルポッドの中で、いったい何が起こったのだろうか。
その頃、アルタコーネス国では、案の定、プリンセスが自分の娘の刑をさせないために、身代わりになったのではないかという疑惑が、一般から、少しではあるが、寄せられていた。だが、日本や他国では、いざ知らず、アルタコーネス国では、どんなことがあっても、いくら家族のためとはいえ、静顔ガスを使って自らの美貌を台無しにすることなど決してできる人種ではない。まして、プリンセスという、その全国民の中でも最高レベルの美貌を持ち、誇り高き立場にいる女性が、その最高の美を犠牲になどできるわけがないと、そういう発言が、あとから、巷であふれ、結局は、その疑惑も立ち消えてしまった。
その後、エメリスは、6年間、引き続き、プリンセスとしての公務を務め、刑の執行後も変わらぬ人望で、プリンセスとして、その役割を全うしていった。そして、無事に長女セリシアに、プリンセスの代を譲り、とうとう消滅の日を迎えた。その日は、すでに、いつ消え去っても不思議ではない状態を迎えていた。そこには、セリシアとスターシアと、管理官が寄り添っていた。
「それでは、セリシアとスターシアには悪いけど、管理官と2人だけにして下さい。」
2人は、部屋から出ていくと、
「管理官、これまでは、色々とお世話になりました。そして、プリンセスの代を譲ったセリシアのことも色々と補佐をありがとう。じきに、慣れると思うわ。それと、スターシアのことは、あのこと以来、心を入れ替えて、現在の立場につくことができたのは、管理官、あなたのおかげよ。本当にありがとう。」
「いえいえ、これらは、皆、プリンセスの人望があってこそのことで、私はあくまでも自分の立場をこなしているだけですよ。これまで、本当にお疲れ様でした。」
「それから、最後に、管理官、あなたを含めて、上層部の皆、刑の執行以来、私の顔を一度もみることがなかったことには、本当に心から感謝しているわ。私は、別に見られることは、覚悟していたから、ぜんぜん平気と、まあ、そこまでは言えないけど、そのように心づもりはしていました。それなのに、皆さん、私の前では決して頭を上げることはなかったですね。そこまで、気を遣わせてしまったことは、申し訳なかったと思っています。本当に、本当に、ありがとうございました。」
「そんなことありませんよ。私たちは、もっとも上の立場のプリンセスに対して、頭をあげられなかっただけですから、どうかご心配なく。私たちは、プリンセスには、普通に接していました。」
「それなら、私も、あの静顔の刑について、真実を話しておかなければいけませんね。」
「そのことなら、もう、何も言わなくて大丈夫ですよ、プリンセス。あんな事故は、まれに起こることです。私たちも、今後は、このようなことがないように気をつけなければいけないと思っています。」
「ありがとう。もう、これ以上、感謝の言葉もありませんわ。」
すると、いよいよ、その時が訪れた。セリシアとスターシアの2人は、再び、エメリスの元に呼ばれて、エメリスの身体が薄らと光り輝き、その輝きが薄れながら、身体は静かに消えていった。
その後、歴代のプリンセスの写真の飾られた部屋には、あの刑より以前の、エメリスの写真が飾られ、その顔は、感動するほどに美しく輝いていた。




