3ー35【探す者は狙われる者2】
◇探す者は狙われる者2◇三人称視点
森を抜けた男女がいた。
数は四人。一人は車椅子に乗り、グッタリとした姿で乗せられるがままだ。
他の三人、男二人、女一人は周囲を警戒しながら、息を切らせて走っている。
女が車椅子を押し、男二人は武装をして、何度も後ろを振り返っては悪態をつく。
「くそ!合流したそばからこれかよ!」
「仕方ないだろうよクロック!」
愚痴るのは、最近合流したクロック・レブンという男。
車椅子に座るアレックス・ライグザールの部下であり、彼も聖女レフィルの【奇跡】を受けた騎士だ。
諌める男、ディルトン・レバノーラは【奇跡】を受けていないが、クロックは受けているかつ意識がある。
彼は有能だったのだ、当時のレフィル・ブリストラーダにとっては。
だから意識を保てていた……そして別行動をし、聖女の逃亡をサポートしていた人物だ。
「お二人共!いいから急いで下さいよっ!」
そんな二人に叫ぶのは、車椅子を押す女性。
カルカ・レバノス。アレックス・ライグザールを献身的に支える部下であり、聖女レフィルをも支えた元・騎士だ。
「急いでるだろっ!こちとら戦いながらだぞ!!」
「お前は団長をしっかり守ってろ!来るぞっ!【死葬兵】だ!!」
聖女レフィルと別れてから、カルカとディルトンは必死に南西へ進んでいた。
ミオに言われた通りに港を目指していたが、今日……とうとう【死葬兵】に見つかってしまった。
「やってますよ!お二人は戦ってく……」
ディルトンが、ザザザとブレーキをかけて叫ぶ。
言葉が途切れたカルカに。
「どうした!?」
「……すみません、もう遅かったです」
緊迫を含んだ震える言葉が、二人の耳に入った。
男二人が振り向くと、そこにはカルカと車椅子のアレックス見据える……八体の【死葬兵】が待ち構えていた。
「くっそ、回り込まれたのか!」
「どうするんだディルトン!聖女様ももういない……!俺がコイツらを退けられても、二三体が限界だぞ!?」
「アレックスさん……私たち、必ず貴方をお守りしますから!!」
車椅子に座るアレックスを守るように、カルカは腰の剣を抜く。
前後に【死葬兵】が計三十体。
どれも死んだ目をしており、目的を達成する為だけに行動することしか考えていない。
しかし、この【死葬兵】たちは聖女が作り出したものとは違う。
彼らはアリベルディ・ライグザールが調整を重ねた、完成形の【死葬兵】だ。
精霊を強制的に【精霊心通】状態にさせ、強力かつ精神を保たせる、物言わぬが……彼らは明らかに意思があるのだ。
「【アーゼルの都】に来た【死葬兵】とは、また違うな」
「ええ、意識はありそうですけど……口は利かないようですね」
三人は戦闘態勢を取る。
周囲を【死葬兵】に取り囲まれ、アレックスを守る為に……聖女との約束を守る為に。