3ー34【探す者は狙われる者1】
◇探す者は狙われる者1◇ミオ視点
帝国内を飛び回り、俺はセシリーさんを抱えてアレックスを探していた。
上手く気配を隠しているのか、東南にいるのは分かっているのに……あのカルカって騎士かな、魔力隠蔽が上手だ。
「平気ですか、セシリーさん」
「は、はい!なんとか」
俺の全力で移動をしていれば、一般人であるこの女性は耐えられない。
だから慎重になりつつも、気配を確実に探るために【感知】を鋭敏にさせて進んでいたが。
「……」
【転移】で行ければ簡単だが、せめて居場所が分からないと厳しい。
セシリーさんが【転移】の魔力酔いに耐えられないかも知れないし、そもそも回数を重ねられるかも不明だ。
「ミオ様、私の事はお気になさらないで下さい……」
「!……ですが、非常に具合が悪くなりますよ?」
その言葉はありがたいが、いざという時に動けなければ厄介だ。
もしもライグザールが行動を開始していたら、セシリーさんは枷になる。
あの状態のアレックスを守る事も考えれば、それは避けたい……なら連れて来るなと言われればそれまでだが、二人を再開させて大陸の外に逃がせれば……ワンチャンライグザールの作戦も潰せるかも知れない。
「構いません、アレックスの……あの子の傍にいられるのなら、多少の無理も!」
「……分かりました。転移の魔法で、一気に移動します!目を瞑っていて下さい!!」
その覚悟は本物だ。
アレックス・ライグザール……お前は、こんなにも大切にされていたんだよ!
一瞬の魔力波動を発生させて、まずは帝国の中央へ。
アレックスたちと最後に会った場所……【アーゼルの都】に行こう。
シュン――と【転移】。
セシリーさんは……っと。
「もういいですよ、セシリーさん」
「……ぅ、はい」
気持ち悪そうだ。顔も青い。
さてと、肝心の【感知】は。
「……」
セシリーさんを下ろして休ませ、俺は【感知】を最大に発動する。
帝国の半分まで来たんだ……時期を考えれば、少しくらいはヒットするだろう。
俺は目を閉じ集中する。
「……」
この感じ、周辺には魔物も多いな。
その中でも……一際に暗い感覚を発している何か。
ソナーに反応するように、ピコーン……ピコーンと。
「これ、マズイか」
似た感覚を知っている。
あの【精霊心通】した【死葬兵】だ。
感じるのは数体……西に高速で移動しているな。
焦りもあるが、追いかけられているなら助けられる。
動きがないより遥かにマシだ。
「セシリーさん、魔力酔いの所すいません……多分、アレックスの奴を見つけましたので、移動します!」
「え、あ!はいっ」
もう一度セシリーさんを抱きかかえて、俺は再度【転移】をする。
間に合ってくれればそれで良い。戦っているのなら、助ける……ライグザールの好きにはさせないさ。