3ー33【だからこそ欲する3】
◇だからこそ欲する3◇三人称視点
ライグザールが現在欲するもの、それは次の子を成す存在だ。
ダンドルフ・クロスヴァーデン……その家系は、西の帝国の始まり。
数千年前に滅びた、その生き残り。
その情報までもをヴィナスから得たライグザールは、ダンドルフの思考を利用して協力をさせた。
ライグザールも、誰でもいいという訳ではなかった。
四百年、選別して子を産ませてきた女性たち……手に入らないのならば陥れ、人のものなら奪い、強引に手籠めにした女性もいた。
そして今……欲するのは。
ダンドルフの娘、ミーティア。
古き皇族の末裔であり、先祖還りを果たした貴重な存在だ。
ライグザールが求める強い身体、強い意志。そして血筋。
ミーティアに子を産ませ、次の代でこそ……精霊女王の解放を。
そして得た力で、主神を殺す。
全ては二人の目的である、世界の創造の為に。
◇
「ほぅ……これがホムンクルスか」
ここは、とある研究所だった。
アリベルディ・ライグザールは、小国【テデラカ】を拠点に活動している。
ここはその【テデラカ】の地下にある、人造生命体……ホムンクルスの研究施設だ。
【テデラカ】は【リードンセルク女王国】の隣国であり、ライグザールが落とした小国の一つ。
「はい、これで【微精霊】を封じれば、ライグザール様の手足のように働く事でしょう」
跪き、ライグザールに媚び諂う男。
この男は転生者……名をガルザーダ・レイグ。
ホムンクルスを生み出す事が出来る能力――【魔儡】を使い、ライグザールに無数のホムンクルスを提供する契約をしていた。
「微弱な精霊……【微精霊】を封じる方法は、もう整っているのか?」
「勿論でございます。精霊の強制契約とさほど変わりはしませぬ、ただ【微精霊】は力も弱く、数が必要になりますが」
「【微精霊】はそこら辺に無限に湧く。魔法を使うための魔力は、大昔から【微精霊】が担っていたのだからな」
見えないだけで、【微精霊】をは存在していた。
大きな精霊とは別に、日常に溶け込んでいたのだ。
「ほうほう!それは勉強になりますな……では、【微精霊】をこのホムンクルスたちへ定着させ……」
「ああ。魂の定着は俺がやろう。このホムンクルスたちは、俺が上手く使ってやる……お前はこのまま研究を続けるがいい」
カツカツと、ライグザールはそう言葉を残して踵を返した。
ライグザールの姿が見えなくなると、ガルザーダは深いため息を吐く。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ガルザーダはへたり込む。
ホムンクルスたちが入れられた大型容器を見つめ。
「すまんなぁお前たち、せっかく生まれたのに……兵器になんかさせちまってよぉ」
小国【テデラカ】は滅びた。
ガルザーダはその国の王子だった。趣味がお人形遊びの、心根の優しい青年だ。
転生したのは二十五年前、前世では人形職人……今世では人形ではなくホムンクルスだが、その生き様は職人そのもの。
「本当は、戦いになんて使わせたくないんだよぉ」
立ち上がり、大型容器のガラスに頬擦りをする青年。
誰にも渡したくない作品たち。
ましてや戦争など、起こしたくはないが……敗戦国であり、ましてやライグザールは奇妙な力でホムンクルスを完全に動かせるという。正直、ガルザーダは見たいのだ、完璧に動く我が子……ホムンクルスたちを。