3ー30【新しい試み5】
◇新しい試み5◇ミオ視点
何かしらの理由があるのだろうとは勘ぐってはいた。
息子であるアレックスを少ない親心で心配しているのかと、そんな情を見せたのではないかと、淡い期待までしてしまった自分が情けない。
「セシリーさん、冒険者たちの場所へ行くのは後回しだ……!」
「え、えぇ?」
今直ぐにでも、アレックスのもとへ。
セシリーさんを会わせるのではなく、保護する為に。
ええい……こうなるんだったら、始めからやっておけ俺の馬鹿野郎!!
「すんません、抱えます!」
「え、わっ」
お姫様抱っこの状態でセシリーさんを抱え、【転移】をする。
まだそこまで移動はしていないはずだ……今からでも、アレックスの奴を【アルテア】に連れてくる!
シュン――
◇
【感知】が微弱だ、いったいどこまで飛べばいい。
帝国南西部へ向けて進んでいるのは間違いない。
アレックスの魔力は非常に弱々しい、だから【感知】で探すのは、部下の二人の魔力だ。
「あ……の、ミオ様……」
「はっ!」
しまった。【転移】で移動してから、超高速で移動していた。
一般人であるセシリーさんには、負担が過ぎる。
俺は空を駆ける事を止め、ゆっくりと地上に降りる。
「……すみません、セシリーさん」
「い、いえ……」
魔力酔いだ。【転移】での魔力干渉ではなく、多分俺の【極光】と【紫電】での移動のせいだな。
木陰にセシリーさんを休ませ、俺は【感知】を鋭敏化させる。
ここは【アーゼルの都】から西に進んだ街道だ……あの【死葬兵】のような追手を警戒して、魔力を隠して慎重に進んでいるのなら、ここら辺にいてもおかしくないんだけどな。
「ミオ様、いったい何が?」
「……セシリーさんの証言の通りなら、アレックスはあの父親に狙われている。アリベルディ・ライグザールが身体を入れ替えるという、手段の為に」
きっと、アリベルディ・ライグザールは何度もそれを繰り返している。
輪廻転生とは言わないだろうが、器を変えて生き長らえる……自分の息子を狙う理由は定かじゃないが、血が関係しているのなら予想ができる。
ミーティアを狙っている理由も……だ。
「では、やはりゲルディア様が亡くなったのは……」
「ああ、おそらく息子であるアリベルディ・ライグザールの身体に、意識を移したんですよ……セシリーさんの言う通り、身体を変えて」
息子を殺し、空の器に自分の意識……魂を移動させた。
多分、能力などもそのままだ。きっと、歴代の息子たちの能力も得ているはず……どれくらいだ、どれだけの歴史を……あの男は生きていた?
「……そんな、それじゃあ私は……彼の」
「?」
何らかの方法でアリベルディ・ライグザールが身体を変えた事は、承知していたんだろう。実際見ていたのだし。
だけど、それだけじゃない気がするな……セシリーさんは、乳母という以上に、何かを知っているのではないだろうか。