3ー29【新しい試み4】
◇新しい試み4◇ミオ視点
セシリーさんには、聞かなければならない事がある。
それは、アリベルディ・ライグザールの秘密……俺が知りたい情報で間違いない。
しかし、それはセシリーさんの依頼を完全に成功してからだ。
「アレックスは、元気なのですよね?」
「はい。心は少し……疲れてしまったかも知れませんけど、身体は平気なはずです。今は部下の人と一緒に、帝国の南西へ向かっているはずです」
「そう……ですか。よかったですわ」
子供を心配するような……ではないな。
これは愛しい者を案ずる笑顔、そして言葉だ。
乳母だけど、そういう関係だったんだろうな。
セシリーさんは続けて。
「ミオ様。ライグザールの旦那様は……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「なんでしょう?」
いや、今秘密を話そうとしたでしょ!
「いや、俺はまだ依頼を完遂してませんので……」
「うふふ……お真面目なのですね。ですが、早い内に伝えなければと、私も思いまして」
真剣な面持ちだった。
歩く足を止め、風に揺れる髪の毛と長いスカートのメイド服。
「……旦那様は、昔と今……姿が違うのです」
「!?……それって、どういう」
姿が違う?それって、変身とかそういう能力ということか?
自分の姿形を変身させて、騙すとかそういう?
「そのままです。旦那様の今のお姿は……息子様のお身体なのです」
「は……はい?」
息子……って、アレックスではなく?
俺の疑問に、セシリーさんは答えてくれる。
「坊っちゃん……アレックスではありません。詳しい原理は分からないのですが、あのお方は……息子様である、アリベルディ様の身体に取り憑いたのだと、私は思っています」
取り憑いた……それって、憑依?
それとも、乗っ取った?いや、まさか。
「――それを、貴女はどこで?」
俺も、少し雰囲気を変えた。
思い当たってしまったんだ……その原理に。
「三十年以上前です……あれは、アレックスが産まれるずっと前。私がメイドとして屋敷に奉公に来た、まだ駆け出しだった頃。旦那様……アリベルディ様のお父上である、ゲルディア様のお部屋で」
ゲルディア……つまりアレックスの祖父か。
「ゲルディア様は何かを呟くと、アリベルディ様は心の臓を押さえ、苦しみ……そして動かなくなりました。そして、それと同時に」
「そのゲルディアって人も、動かなくなったんだな」
「……はい」
「そうして、次に動き出したのは……」
「――アリベルディ様でした」
そうか……そうかよっ!
アリベルディ・ライグザール……あの野郎、身体を入れ替えているんだ!
それは、一種の転生と言えるだろう。古くなった身体を捨て、自分の息子である次の身体に意思や能力を移して……生き長らえる。
――!!?
「ミオ様?」
「……そういう事かよ!!くそっ!!」
「ミ、ミオ様!?どうなさったのです!?」
気付いてしまった。
牢屋にいる【精霊心通】状態の【死葬兵】……あいつがアレックスを狙っていた理由……それが、そのカラクリなんだ。