3ー27【新しい試み2】
◇新しい試み2◇ミオ視点
精霊が住まう階層に到着すると、早速精霊たちが群がってくる。
「わぁーい!ミオさんだぁ」
「おっすミオさん、元気ぃ?」
「ミオちゃん、この間はありがとねー」
「よぉミオ、兄弟が世話になったぜ」
様々な精霊が、様々な理由を掲げて声を掛けてくる。
積極的なのは若い精霊が多いらしい。好奇心旺盛で、人の何たるかを知りたがる傾向にあるそうだ。見た目は成人のような精霊もいる。
ギャップが凄いね……フレイは見た目が幼いが、強力な精霊だしな。
見た目だけでは判断出来ないのが、精霊の難しい所だ。
『――失礼だねミオ。キュアはお姉さんだよ、どちらかと言えば』
「ははは……そーだねー」
精霊たちへの愛想笑いと、フレイへの微妙な返事。
俺は奥へ進む。ここは超広いリビング的な場所で、今はまだ個室がないから、雑魚寝になってるのが申し訳ないが。
いたいた。
「ナイズ」
「なんだ」
わー塩対応。
こいつはナイズ・ストーンという精霊だ……【ヌル】を生み出してくれる、言ってしまえば一番の功労者だな。
「いや、ジェイルの奴に聞いてな。ここにいるって」
ジェイルと契約しているのだから、本当は一緒に住めばいいのにな。
その方が連携も取りやすいし、ミーティアだって助かる。
え?男同士……?いいじゃないか別に。
「用件を言え」
「はいはい……これを見てくれ」
俺は【ヌル】を見せる。
その【ヌル】は、普通とは違う銀色……シルバー。
つまりは中位ランクだ。
「ほう、もう作り出したか」
タレ目を細めて、ナイズは【ヌル】を受取り確認する。
一番多いのは、当たり前だが下位ランクのブロンズばかりだから、シルバーは現時点では貴重。精霊が力を込める加減で、その色も変わるようだ。
因みに下位の精霊がいくら力を込めても、物凄い確率で下位ランクの【ヌル】しか完成しない。ランダム要素はやめません?
「中位ランクだな……見事だ」
『当たり前じゃん、キュアが力を込めたんだから』
まぁまぁ、【ヌル】の創造主はナイズだから。
「これ、量産出来ると思うか?」
「精霊次第だろう」
ですよねー。
「そっか、分かったよ」
「なんだ、それだけか?」
帰ろうとする俺に、ナイズは言う。
なんだよ、名残惜しいってか?そういう所も契約者に似てるな。
「ああ、確認して欲しかっただけだよ。あとはそうだな……出来れば、【ヌル】の生産を増やして欲しいかな」
「ジェイル次第だ」
だよね分かってた。
「後で話を通しておくよ。その時は頼むな」
「……ああ」
なんで若干返事遅いんだよ。
まぁいいけどさ……さて、それじゃあ次は――新しい試みに挑みましょうかね。