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2ー61【悪女な魔女9】



◇悪女な魔女9◇三人称視点


 その声と光は、診察室の外にも当然届いていた。

 建付けの悪いドアの隙間から溢れる光源は、ミオ・スクルーズの能力――【無限永劫(むげん)】の光だ。

 そしてその大きな声は、痛覚を取り戻したレフィル・ブリストラーダが受ける、数年前に受けた痛みと同等の苦痛。

 一瞬でその痛みを復元され、意識を手放す寸前まで追い込まれたレフィルだったが、その悲鳴は続く。

 彼女は寸前で耐えたのだ。痛みから逃げてはならないと、受け入れてこその(つぐな)い。その一歩なのだと。


「……レフィル様」


「どーすんだよカルカ。団長はあんなんだし、聖女さまはあの青年の言葉の通り、なんだか昔と変わっちまったようだぜ?」


 診察室の外ではアレックスの部下、カルカとディルトンが二人、その様子を見守っていた。因みにアレックスは、動きを固定されて診察室の中で気絶している。

 ミオに突撃していった瞬間も、彼に軽くあしらわれた瞬間も見ているのだ。


「アレックスさんは、昔からあの青年を知っているようでしたね……私も、村侵攻の際に姿だけは確認していますけど」


 カルカとミオに接点はない。

 村で話した事があるのは、ミオの姉のクラウだった。

 そして勿論、ディルトンにも接点はなく、聖女の敵だった……そういっただけの認識だ。


「聖女さまを倒して、あんな目に合わせた張本人だぜぇ?それがなんで、急に助けてくれんだよ」


「さぁ……自分の故郷をあそこまで燃やされて、そこから今のように寛容になれるとは思えませんけど」


 漏れてくる光と悲鳴を受けながらも、二人は考察する。


「まぁな……でも話を聞く限り、聖女さまはあの青年に強力するつもりみたいに見えたよな?」


「ですね。それに魔女と、そう言ってましたけど」


「こういっちゃなんだが、正直言って合ってる気はするぜ?」


 王国で聖女と称えられていた女性が、一転魔女扱い。

 だが、部下であるカルカにもディルトンにも理解できてしまう。


「……当時のレフィル様は、本当に酷いお方でした。【奇跡(きせき)】にて【死葬兵(ゲーデ)】とされた王国民の命は非常に軽く、私たち騎士団も……同様でしたから」


「それは、まぁそうだな。俺は後方支援で、しかも聖女さまに自分から従ってたからなぁ……だから不気味に思われて、【奇跡(きせき)】を受けてねぇんだ」


「……私は、アレックス団長への思いを利用されていました」


「「……はぁ〜」」


 二人で沈む。聖女との、思ってもいない関係性だ。

 だが、その関係性が崩れることは無かった。

 逃げられるはずだった。諦められるはずだった。

 しかし二人も、そしてアレックスも聖女から離れず、数年もの間、無償の世話を焼き続けたのだ。


「団長かぁ」


「ええ。そして団長が彼を憎んでいるのは、きっと恐怖だと思います。あの様子は見たことが無かったですし、なんというか……その」


 カルカは濁したように口を止める。

 そこをディルトンは。


「ま、見苦しかったよな。ハッキリ言って」


 先程の外での戦闘も、今の診察室への突撃もだ。


「……」

(そこまでハッキリ言わなくても)


 カルカはジト目でディルトンを睨む。

 ディルトンは「んははは!」と笑うばかりだ。

 そして、そのディルトンの笑いが治まると……あの耳を(つんざ)く様な悲鳴も、部屋から溢れていた光も、静まった。


「レフィル様……」


「さて、どうなったのかねぇ」


 二人は建付けの悪いドアの隙間から、その結末を見るのだった。


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