表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/174

2ー54【悪女な魔女2】



◇悪女な魔女2◇ミオ視点


 俺はこの聖女、レフィル・ブリストラーダを利用する。

 【アルテア】を世界一の場所にする為、仲間たちを幸せにする為、そして愛する女性を、一生愛し、愛される為に。


「立て、レフィル・ブリストラーダ」


「だから、アタシは……」


「いいから!」


「ちょっ……あっ……」


「ん、おっ!っと」


 無理やり立たせた結果、力が入らずレフィルは倒れかけた。

 腕を支え、腰に手を当て、なんとか転倒はしなかったが。


 こいつ……見た目以上に(やつ)れている。

 衣装のおかげか、腕も体型もカバーしているが、骨のように細い身体に、削がれた肉感、熱を感じない冷たい身体。

 限界を超えて、もうただ……ここにいるだけ、そう感じた。


「……だから、無理なのよ」


「すまん、これは俺が悪い」


 椅子に座り直させる。

 曇る表情、逸らす視線……そうか、まぁそうだよな。

 一度俺に敗れたんだ、そんな相手からの施しなんて、屈辱だろうさ。

 でも、うん……そうだな、レフィルからそんな感情は感じない。


 どちらかと言えば、自分なんかがそんな施しをされてはいけない、そんな風に思っている感じだな。それも理解できちゃうのが、命をかけて戦った間柄なのだろうか。


「気にするなとは言わないさ、もし、爺さん先生がやめろと言えばやめる。もし、あんたがもう二度と現れるなと言えば、極力関わらないようにするよ」


 「誰が爺さんじゃ」とツッコまれているが無視だ。いや爺さんだろうよ。

 レフィル、医者である爺さん先生が止めないって事は、やる価値はあるって事だ。

 もしくは、この黒痕が本当に消せるのか……それを見たいだけかもしれんが。


「その黒痕が消えて、今の現状が解消するとは限らないし、傷ついた瞬間の……あの痛みを思い出すかもしれない」


 そこはフレイにカバーして貰うとして。


「アタシに、未来なんて……そんな権利はないでしょう?」


「被害者から言わせれば、確かにそうだと思うよ。あんたがどこまで心を入れ替えたかなんて、誰にも分からないし……実際、心を入れ替えるなんてそうそう出来はしないからな。だけどあんたは、この数年で痛い程の苦しみを知ったんだろ?痛覚や味覚、色んなものを犠牲にして、今のあんたを形成したのなら、それが正しいんだよ」


 正解なんて無い。

 きっと未だに、聖女レフィルという存在を恨んでいる人も、どこかにいるはずだ。

 それが当然であり、レフィルがこの先もずっと抱えていかなければならない感情なんだよ。


「他人の苦しみを百(パー)理解できる人間なんていない。俺だって、あんたの心を読んだ訳じゃないし、正直……外のあいつと関わっただけで、帰ろうかと思ってた。あの男にも、聖女レフィルには関わらねぇとか言ったばかりだしな、はははっ」


 速攻手のひら返したな、俺。

 でも、【死葬兵(ゲーデ)】の詳細を知っているのは、【奇跡(きせき)】をかけた張本人だ。


「……俺はさ、あんたを利用するつもりで提案しているんだよ。その為なら、その傷も治してやる。ただし、あんたが望むのなら、だ」


 自分が犯した罪を受け入れて、罰を受けている最中。

 外には全然現実を受け入れない馬鹿もいるから、それに比べたら可愛いもんだ。


「……アタシは」


 レフィルの視線が、上を向いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ