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2ー42【アーゼルの都・忘却】



◇アーゼルの都・忘却◇アレックス視点


 しゃがみ込み、【死葬兵(ゲーデ)】は僕の眼前で口を開く。


「イツマデ、ユメヲミテイル、ヤクメヲ、オモイダセ!!」


 何故僕なんだ。

 何故聖女ではなく、僕に言葉を浴びせる。

 その言葉に、どことなく腹がたった。


「思い出せ、だと……?僕は既に思い出している!!【奇跡(きせき)】の力から脱し、(おのれ)の意思でここにいるんだ!」


 【奇跡(きせき)】の影響の事を言っているんだと、そう取って噛み付く。

 確かに自意識が薄れていた時期もある。だが、その間の記憶は残っているのだ。

 それを踏まえて、僕は聖女レフィルの傍にいる事を選んだんだ!


「キサマノ、イシナド、イミハナイ。ストックハ、ストックラシク、タナニナランデイレバイイノダ!」


 何を言っているんだこの化け物は。

 ストック……在庫品、だと??


「何を言いたいんだ、お前!!……さっきから意味のない事を!」


 倒れる僕は土を握りしめ、化け物に投げつけた。

 動じるわけもなく、化け物は。


「テアシノ、イチニホン、ナクテモ、カマワナイダロウ」


 化け物は僕の腕を掴んだ。

 二本の指で(つま)むように。


「がっ……ぐぅぅ、は……離せぇ!」


 吹き飛ばされた衝撃で折れた剣。

 なんとかそれを掴んで化け物の指に叩きつける……が。


 当たり前のように弾かれ、今度は根本から完全に破壊された。

 柄で殴るように、何度も攻撃を試みるも。


「く、くそぅ……なんで!なんでだぁぁぁぁ!!ぁがぁあああああっ!」


 持ち上げられた。

 指二本で、大の大人が軽々と。


「ワメクナ、ナクナ、サエズルナ」


 腕を振り回して化け物の顔を殴ろうとするも届かない。

 足で蹴りを食らわせても、こちらが痛むだけだ……もう、どうすれば。


「……」


「ソウダ、オトナシク、シテイロ……アノカタノモトヘ、イクゾ」


 あの方だと?

 こんな化け物にさえ、忠義を尽くす対象がいるのか……それなのに、僕は。


「僕をっ!どうするっ!つも……りだぁぁ!」


 硬い皮膚に噛み付く。

 意味はない。だが、これでもと言う程に、腹が立っていたんだ。


「ウルサイオトコダ……コレデホントウニ、ヤクニタツノカ……」


 さっきこの化け物は、腕や足の一二本と言った。

 なのに、僕に対する攻撃は最初だけ、やれないんだろう!


「うおぉぉぉぉ!」


 ならば何度でも抵抗して――


 ドスン……


「――ふぐっ……は?あっ……なん、で」


 腹部に起きた衝撃の痛み。

 この化け物が手出しをしないと、勝手に思い込んだ始末。

 意識を手放すには申し分ない、そんな一撃だった。


 そして、そんな僕の意識が無くなる寸前……化け物の背後から。


「――あの〜、そいつを離してやってくんないかな?」


 そんな言葉と、化け物が獣のような眼を見開く驚愕(きょうがく)を見せる表情、そこで、僕の意識は消失した。


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