2ー37【アーゼルの都・休息】
◇アーゼルの都・休息◇ミオ視点
セリスが取った宿は、【アーゼルの都】の中でもレベルの高い宿だった。
本人曰く、近場はどこも満室だったらしい。
まぁ高くてもいいんだけどさ。
「おーいい部屋じゃん。これならゼクスさんもゆっくり休めるな」
「そうね、しっかり休んで……ゼクス、傍にいるから」
ベッドに横たわるゼクスさんに寄り添うセリス。
良い関係性だ。信頼できる上司と部下……いいものだな。
「す、すいません殿下、助かります」
借りられた部屋は一部屋。
一部屋に三人。男二人に女一人、いいのかな、これ?
「じゃあゼクスさんを頼むな。俺は定期連絡してくるから」
「キュアも行く〜」
【AROSSA】をフリフリしてセリスに見せ、俺は部屋を出る。
それにしても、青い髪のセリス……身体変化は元に戻したが、意外と雰囲気が似ている気がした。
部屋を出て向かう先は、特にない。
【アーゼルの都】を見て回りたい気持ちもあるが、まずは連絡をしよう。
「……」
【AROSSA】を起動し、【アルテア】にいる彼女へ。
プツ――
「あ、もしもし」
『ミオっ』
ついつい地球の作法をしてしまう。
これ多分、転生者全員だろうな。
「ティア、ごめん連絡遅れた。そっちはどうだ?問題とか……ない?」
『ふふっ、全然平気よ。問題も何もないわ、皆元気だし、タワーの仕事も商会の仕事も万事順調。そっちこそ平気なの?朝の連絡の時は、随分と疲れた声出してたけど』
「……あれ、バレてた?」
結構、上手く隠してたつもりなんだけどな。
『当たり前でしょ?私がミオの声の機微に気付かないわけ……ないもの、ふふふっ』
「敵わないな、ティアにだけは……でもよかった、問題ないなら、一度俺も帰って」
『――ううん。今はそっちに注力して、セリスとゼクスさんの方に』
帰るのだけは簡単なんだけどな。
万が一、【転移】が使えない状況になった時の対策なんだけどさ、今回俺が帰らないのは。
「いいのか?女神共とか、アイシアとかリアとかさ……ルーファウスたちもだし、残された帝国組も」
『め、女神共って……聞かれたらどうするのよぉ、もう!』
声が小さくなって、どうやら手で通話口も押さえている感じもした。
同じだなぁ、異世界でも。
「あははっ、まぁいいじゃん、俺の特権だよ。特にアイズには言うね、何度でも言っちゃうね!」
『だ、だからぁ……!』
これミーティア移動してるな。
走ってる感じの吐息が、ほんの少しだけ聞こえるから。
「はっはっは!ホントに楽しいな、ティアと話しているだけで……心が安らぐよ。サンキュな」
『……はっ。はっ。ふぅ……なによ急に、もう……いいわよもう、存分に言っちゃて!!』
俺にストレスを吐き出させる為に移動したのか、可愛いんだから。
でももう大丈夫さ、充分に良い休息を取れたよ。
「残念、もう言い終えたよ。ありがとな、ティア」
『ええー?』と言いつつも、ティアは笑ってくれた。
その後、定期連絡と今後数日の予定を共有し……俺の短い休息は終わったのだった。