1ー6【大人の決断2】
◇大人の決断2◇
姉弟二人で、整った畑に手を加えている最中だ。
何気ない会話に馬鹿らしい会話。時には罵詈雑言を浴びせ合う、そんな時間。
「よし、こんなもんだろ」
「あーあ、結局手伝っちゃったわ……」
【無限永劫】で綺麗に整えた土地を、少し手を加えてそれらしくする。
生育は一からやると言うことだけど、土壌の整備……これくらいは弟にもさせて欲しいからな。
「サンキュな、クラウ姉さん。後は【創作】で作った野菜の種を……二人にプレゼントするだけだ」
ポンポンと手を払い土を落とし、周囲を見渡す。
頑丈な土地に、生育の良い土壌。
緑も水源も用意した。やりすぎとも言えるが、これが俺のやり方だ。
「便利よねその能力。私にも何か作ってよ」
「何が欲しいの?」
「う〜ん……」
考えなきゃ出ない時は始めからないんだよクラウ姉さん。
もしくは必須じゃない、とかな。
何か思いついたのか、クラウ姉さんはポンと手を叩き。
「あ!身体を大きく――」
何ていうことを言い出すんだこの姉は。
そんなもん、食い気味に。
「却下だ」
「なぁんでよ!!いいじゃない少しくらい、【創作】じゃなくて、【無限永劫】でやってよ!こう……ボン・キュッ・ボン!!って」
両手で身体のラインをなぞりながら、理想の身体を表現する。
それもうレイン姉さんだから。
だから絶対駄目です。
一部から苦情が来ちゃうんだよ。
「姉さん。残念だけど、小さいのは武器だ。その身長も胸も、一部では泣いて喜ぶほど需要がある……だから駄目だ!」
「……酷すぎでしょ」
確かに身体操作も出来るようにはなったさ。
身長や胸のサイズなんて、傷を癒やすよりも簡単な部類だ。
だが断る!この小さな姉の唯一の需要……低身長貧乳のロリキャラは捨てられん。
それでなくても、【アルテア】にはスタイルの抜群な女性が多いんだからな。
「残念、諦めよう」
何故か早々に納得した可哀想な姉の肩を叩き、俺は作業を終えた。
「もういいわよ、私は一生……ちんちくりんなんだから」
グスっと泣く振りをする。
言うほど気にしてはいないんだろうな、この人。
それに、その小さなクラウ姉さんを好きな男もいるんだからな。
「ちんちくりんとか言うなよな、ルーファウスはそういう姉さんが好きなんだろ?俺が【無限永劫】で身体を弄ったら、ルーファウスに斬られちまうよ」
「だ!だからルーは関係ないってばぁぁぁぁ!!」
最近はもう、ルーファウスの話を持ち出せばいつもこうだ。
もう自覚しなよ。姉さんも二十二歳……前世でもあれだったらしいし、今世では良縁を掴もうぜ?俺にみたいにな。
ダッ……と駆け出すクラウ姉さん。
無言のまま、【天使の翼】を広げて去っていく。
これはあれだ。
「逃げたな、はははっ!」
満面の笑顔で、飛翔する姉を見る俺。
こういうメリハリも必要さ。二年間、【アルテア】の皆は必死になって生きてきた。移住してくる他国の人も増えて、そうなれば必然的に問題も起こる。
その為の自衛組織……【ユニバース】も結成した。
【ユニバース】は、俺が万が一の未来のために考えた……【Aキューブ】(血の中にある遺伝子に残る能力を目覚めさせる薬)で覚醒した男女、数人で結成された。
各三国から、立候補をして【Aキューブ】を服用して貰い、能力が目覚めた人に上位者となる権限を与えた。今回の場合は、貴族制だ。
そしてそこから枝分かれし、各々部下を用意してもらい……結果は数百規模の自衛集団が出来上がったわけだ。
でもって給金が発生する以上、皆もやる気になるし、冒険者や傭兵に旅人、他国で騎士をやっていたような実力者も多数いた。
今やこの【アルテア】には、帝国の軍人、公国の守護者、女王国の冒険者。
それらを合わせて出来上がった【ユニバース】が護る、強固な軍隊が生まれたんだ。
「……さてと、俺も戻るか」
大きくなればなるほど、綻びも出来、いざこざも増える。
それを防ぐために、俺たちはこの二年を費やしたんだから。
だからあの二人……アリベルディ・ライグザールとダンドルフ・クロスヴァーデンの二人が動き出すまでに、どうにか整えなければならない。
世界を守るシステムを、平和に導く組織を。




