第一話:魔法との出会い
この世界には魔法が存在する。
それを知ったのは五歳くらいだった。村には魔法使いと呼ばれる老人が訪れる事がある。僕が五歳くらいの時、彼に思い切って尋ねてみた。
「魔法ってあるの?」
「あるよ、君は?」
「バルドウィン。狩人エリクの二番目の子バルドウィン」
「わしはコンラッド。闇夜の森のコンラッドと呼ばれておる。お前さんはエリクの次男坊か、ちょうど、お前が産まれた時にウリクル婆さんに出産があるからと、わしも呼ばれてな。お前のお母さんがお前を産んだ後に飲ませる薬を持ってこいと、いやいや、ウリクルは人使いが荒くてな」
「魔法の話が聞きたいんだ」
「ふむ、魔法か、わしもウリクル婆さんも、魔法使いと呼ばれておる。そうだな、この指を見てみろ」
コンラッドが右手の人差し指を立て、僕の顔の前に突き出す。そして、彼は何かよく聞き取れない言葉を発すると、その指に火が灯った。
「わっ!?」
「ほっほっほっ、驚いたか。これが魔法だ。何もないところから火を出したり、水を出したり、あとはそうさな、風を吹かせたりできる。他にも色々できるが、それはちょいと、お前さんには早いだろう」
「早くないよ、教えてよ。今のはどうやってやったの?」
彼は手のひらを上に向け、両手をくっつけて皿のようにする。
「この手の上に何かあるのが見えるか?」
「見えないよ、何も無いよ」
「そうではない。見えないが、ここには魔法の素、魔素がある。これはその辺りにもあるし、わしやお前の身体の中にもある。ただ、普通は見えないし感知できない。」
この事を聞いた僕は歓喜した。乳児の頃、僕の身体の中に何か魔法のような物がないかと頑張ったが結局わからなかった。しかし、それは存在していたのだ。僕がそれを感知できなかっただけだった。
「わしら魔法使いはな、この魔法の素を感知して、それを操ることができる。先ほどやったように、指の先に火を灯す事もできる」
「僕もできる?」
「さあ、それはわからん。魔素を感知できる者はそれほどいないからな。わしらはそれを魔法の才能と呼んでおるが、才能が無い者は魔法は使えん」
「僕には才能がある?」
「ふむ、バル坊は魔法が使いたいか?」
「使いたい! 使いたいよ!」
異世界転生したら魔法を使いたいに決まってる。前世では存在すらしなかった物だ。しかし、ここは異世界だ。僕は前世で好きだったゲームを思い浮かべて興奮していた。
「待て、待て、落ち着け」
「魔法の才能が僕にあるか調べてよ! コンラッドさんは調べられるんでしょ?魔法使いだから!」
「できるとも! だが、調べるのはお父さんやお母さんが良いと言わないとな。それにお前はまだ幼い。まぁ、確かにお前くらいの子供をウリクルは拾ってきたが、お前が大きくなって自分が何をしたいかわかるようになるまで、それは待っておくれ」
そして、僕は一〇歳になった。狩りもできるし革で細工物も作れる。一人前の大人と言うには怪しいが、この世界で自分の事は自分で責任を持てる年齢が一〇歳だった。
「この魔熊は兄さんと僕が弓で仕留めたんだ。もちろん、父さんとジャンさんに手伝ってもらったけど」
「それは凄いな! 小さい頃から弓は練習してたものな」
「コンラッドさん、それで村にはいつまでいるの?」
「少なくとも三日ほどいるな」
「僕に魔法の才能があるか調べてよ!」
父と兄は笑う。
「バルの魔法狂いがはじまった」
「バルは本当に魔法が好きだな。魔法使いになりたいのか」
「それはわからないけど、自分が魔法が使えるかどうかが知りたいんだ」
「コンラッドさん」
父は真面目な顔でコンラッドに話しかける。
「バルは一〇歳になりました。俺としてはバルは狩人か革職人になってもらいたいし、村にとってもそれが良いと思うが、バルは小さい頃から魔法、魔法とうるさかった。どうです、その魔法の才能とやらがバルにあるか見てもらえませんか?」
「エリクよ、仮にバル坊に魔法の才能があったらどうする?皇国魔導師学校に入学させたり、魔導師ギルドに入れるほどの財は無いだろう? 魔導師の数が少ないのは才能の有無もだが、学校やギルドに入れるには条件が厳しいからだ」
コンラッドは苦い顔をしていた。僕に魔法の才能があるか調べるのに気が乗らない様子だ。
「しかし、あなたのようにギルドに入っていない魔法使いもいるじゃないですか。ウリクルさんもだ」
「おすすめはできんの。わしやウリクル婆さんは変わり者だ。それに魔法は独学で学ぶにはチと難しい。だから学校やギルドなのだが」
「・・・、何にしてもバルに才能があるかどうかもわかりませんし、見るだけでも何とかなりませんか?バルはずっと魔法に憧れていたので」
「・・・」
「バル、お前はハッキリさせたいんだよな。自分が魔法が使えるかどうかを」
「うん、ずっとモヤモヤしてたんだ。それをスッキリさせたい」
「コンラッドさん、バルもこう言ってるので」
「そうか、仕方ないの。では、この村にいる内に調べてやろうか」
「やった! ありがとう、コンラッドさん!」
「ほっほっほっ、まずはその魔熊じゃな」
コンラッドは白く長い髭を撫でながら笑った。




