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雲の上の巨人 カイル

作者: シグルド

晴れ渡る青空に浮かぶ雲の上には、カインという巨人が住んでいました。


毎日、鳥を狩るだけの生活に退屈していました。



そんなある日、雲の下から、1本の竹が伸びてきました。


「何だ何だ!」


カインは驚いてその場に尻餅をつく。


「雲の上だー!」


竹の先から、小さな何かが降りてきた。


「ここは俺の雲だ、何者だ!」


カインは小さな何かを睨みつける。


「わっ、まっ、待ってください。」


小さな何かは、両手を前に振り出し、静止する。


「私は、スモルと言う小人です。」


「それで小人が何の用だ。」


スモルは、膝を付き。


「突然すみません、下界で人間達に住処を荒され、どうにかこうにか逃げて来たんです!」


「ほうほう…。」


カインは、竹の側を掘り、下界を覗く。


「確かに、人間達が竹の根元に居るようだな。」


その言葉に、スモルは頭を抱え震え出す。


「怖いよ、怖いよ…。」


カインは、スモルを両手ですくい。


「わかった、僕が懲らしめてこよう。」


カインは、小人を連れ家に戻ると、テーブルに降ろした。


「ここで、待ってろ、懲らしめたら帰ってくる。」


スモルのヘンジを聞く間もなく、カインは飛び出して行った。


__________


飛び出したカインは、竹まで来ると、スルスルと竹を降りていく。


「お前たちー!」


人間達は、巨人を前に…。


「きょ、巨人だー!」


人間達は、驚いて気絶や腰を抜かす者達、数人は逃げてしまった。


「小人を困らせたのはどいつだ!」


カインは、睨みをきかせる。


「まっ、待ってください、困らされたのは私達です。」


人間達は、泣き出した。


「小人の住処を荒らしたのではないのか?」


人間達はクビを振った。


「いいえ、私達が収穫した野菜を、こっそり持ち逃げするんです!」


人間は、カインに必死に訴えてきます…。


「小人は、田畑の実りを助けてくれている筈だが…。」


「はい…。」


カインは、腕を組み考え込む。


「毎年、作物をお礼に渡していたのですが…。」


人間達が、首を縦に振る。


「今年は収穫が少なく…。」


「お礼が少なかったと。」


「はい…。」


人間達は肩を落とす。


「それで…?」


カインは顔を近づける。


「『少ない、もっと渡せ!』と、言われまして。」


「ふむふむ。」


「その場は収めたのですが…。」


「ですが?」


カインは更に顔を近づける。


「次の日から、村中の物が、1つずつ無くなっていきまして…。」


人間達は首を縦に振る。


「今日、して偶々小人が盗む所を見つけまして、今の状況です…。」


一通りの話を聞き、カインは胡座をかき考え込む。


__________


その頃カインの家では。


「巨人の家に侵入成功!」


スモルは、シメシメと笑いながら家中を見回す。


「本当に大きいな…。」


スモルは、大きな器によじ登る。


「ひゃー、なんて大きな角砂糖なんだ。」


スモルと変わらない大きさの角砂糖にビックリする。


「砂糖なんて要らないや。」


スモルは、また見回すと、金の取手が付いた戸棚が少しだけ開いていました。


「あそこに何かあるかな…。」


スモルが静かに覗くと、金のランプが置いてありました。


「これを持って帰ろう。」


スモルは、ランプを背負うためにロープを架けていると、ひょんな事にランプを擦ってしまいました。


__________


下界にいた巨人が突然光り出しました。


「巨人が光った!」


人間達は驚いて木の裏に隠れます。


「誰かがランプを、擦ったな。」


徐々に巨人が煙に変わっていきます。


「人間達よ、話は解った、少しだけ家に戻る…。」


モグモグモグ…。


巨人は煙になり、雲に戻って行きました。


__________


スモルが、擦ったランプから…。


モグモグモグ…。


煙が現れ、徐々に大きな巨人の形になっていきます。


「あわわわ!」


スモルは驚いて、とっさにランプの中に隠れました。


「スモルよどこだ。」


シーンと静まり返っています。


「ランプを、擦ったのは、お前だろう…。」


スモルは、ランプの、蓋を少し上げ、外を見ます。


「スモル、出てこい。」


カチャン!


スモルは慌てて頭を下げる下げた為に、音が鳴ってしまいました。


「何だ、そこに居るのか…。」


カインは、戸棚を開け、ランプを取り出します。


「糸?紐?」


カインは、絡まっているそれを外します。


「ランプを盗もうとしたのか…。」


カインは蓋を取ると、スモルをつまみ出します。


「カイン、離せ!」


スモルは足をバタつかせます。


「困っているのは、小人ではなく人間のようだな。」


バタつくスモルを瓶の中に入れると、外の竹をスルスルと降りていきます。


__________


再び人間達の前に現れたカインは。


「待たせてすまない…。」


カインは、スモルの入った瓶を前に置く。


「こ、こいつです!」


人間達は、スモルを指差す。


「出せ、出せ!」


スモルは瓶の中で暴れまくる。


「スモルよ、人間達は、作物を渡してくれたのであろう?」


「あんなんじゃ、少ないヤイ!」


「今年は収穫が少なかったらしいから、仕方ないだろう。」


「そんなん関係ないヤイ!」


「ワガママを言ってはだな…。」


ガサッ!


突然、草が揺れ、年老いた小人が、若い小人を連れ現れました。


「巨人様、人間様、どうかスモルを許してやってください。」


小人達が魔アタマを下げる。


「私達小人達も、人間様の収穫が少ない事は解っておりました。」


「解っていたなら…。」


「解ってはいましたが、渡された量では、どうしても足りず。」


「そんな事を言われても、私達も困る。」


「スモルは、止めるのを聞かず、村の為だと何度も盗みを繰り返してしまいました。」


小人達が頭を下げる下げる中。


「人間よ、今年の収穫はどれだけ減ったのだ。」


「年々少なくなっていて、今年は3割ほど一気に下がってしまいました…。」


「解った。」


カインは、ランプを、取り出し、擦ると…。


モグモグモグ…。


煙の中から荷台一杯の作物が現れました。


「人間達よ、これで足りるか?」


カインは人間達を覗き込む。


「はい、充分足ります!」


「その中から、小人達に残りの分を渡すのだ。」


人間達は頷くと、小人達に、足りない分を渡した。


「巨人様ありがとうございます。」


「巨人様、人間様、どうもありがとうございます。」


人間達と小人達は頭を下げる。


「スモルよ、開放してやろう。」


カインは、瓶を、横に向け、スモル(開放した。


「人間に小人達よ、今回は特別だぞ。」


人間と小人はもう一度深々と頭下げた。


◇おしまい◇

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後がカインの優しさで、みんなが笑顔で終わって良かったです。
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