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我にとってフェムは大切だが?

実際自分に倫理観やら常識が欠如している事を自覚しながらも、それを意識して生きている人間ってこんな感じになると思うんです。

 「ししょう!しょくばいのせいり、おわりました!」

 「そうか。なら倉庫からエルド鉱の粉末を持ってきてくれるか?」

 「もう、もってきました!」

 「随分と手際が良いな。」


 フェムと暮らし始めて一月ほど、フェムはここの生活にすぐ慣れた。

 初めは当たり前だが我が色々と手解きはしたものの、一度言った事はすぐに覚え、実践に移せる。

 子供特有の柔らかな思考の影響なのかもしれないが、どちらにせよ師匠初心者である我からすれば助かる要素である事には変わりない。


 そして、フェムは驚くほど有能なのだ。


 「なら……そうだな、森へ行ってアルムエー草を取って来てくれ。確か在庫が切れていたはずだ。」

 「わかりました!」

 「護身用と通信用の魔法道具を忘れるなよ。」

 「はい!」


 少し伸びた灰銀の髪の毛を振りながら駆けていくその姿を見送り、我はため息をついた。


 森の中は足場が悪い、そして方向感覚も狂いやすい。しかしフェムはそんな悪環境に一切を遮られる事もなく、我が教えたとおりの薬草や香草を採集してくることが可能だ。


 フェムは確かに優秀であり、それは良い事だ。だが……あまりにも優秀すぎる。

 全てを吸収し我がものとしていくその才能は我に似通ったものがあり、それは師匠としては自分と似た存在という事で非常に教育し易いものだ。

 いわゆる天才肌というやつだろうが、問題は我が師であるという事である。


 我の、ルーシレゥトの師は、はっきり言うがクズであった。そして同時に教導力が皆無でもあった。

 故に我の才能は抑制され、一応性の目覚めが訪れる身体までは何とか成長できたのだが……。


 「我も、天才であるからなぁ。」


 我が手解きをしているフェムは着実にその力量を伸ばしている。抑制のためにその時間の大部分を雑用を命じてこき使っているわけだが、それでも我の時よりも明らかに伸びが良い。


 このままでは、フェムの身体の年齢は一桁台で止まってしまう、つまり何が起こるのかというと……。


 「フェムも男だ……種なしは、嫌だろうなぁ。」


 我はそこら辺の感覚をいまいち理解出来ないが、種がない事で悩む権力者は数人見てきた、その事で魔薬や魔法を依頼された事も度々ある。

 今フェムは6歳、最低でも後5年は持たせなければ……いや、だが今の魔力量だと後8年は掛かるのか?


 「まずいな、何か対策を考えないと……。」


 対策といえば、そうだな……若干負荷が掛かる故にあまり気は進まないが、抑制装置を取り付けるか?

 だがあれはコストもかさむしなぁ、材料と術式はあるが。


 ええい、背に腹は代えられぬ。あとで作っておこう。


 少し気を逸らしていると、目の前で我が振っていたフラスコが僅かに熱を帯びだす。


 「おぉ危ない、研究に集中しなければ。」


 我が今行っているのはフェムの魔力を利用した、『染力』の魔力還元実験である。

 あらゆるものへと転じるフェムの透明な魔力を、汚染された『染力』と混ぜ合わせて中和する実験だ。


 フェムがあの重傷で生き残っていたのも、この魔力の何にでもなり得るという性質のおかげである。

 魔力が、失った血の代わりを果たし、そして生命力に成り代わったのだろう。

 

 その現象を人工的に再現可能であれば、魔法技術の革新が起きる。だが我はこの技術を、我とフェムで独占するつもりである。


 あの老害ども、『永遠の魔人』の奴らに渡してなるものか。


 熱を持ったフラスコを傾けると、実験机に置かれた器に液状化加工が施されたフェムの魔力と『染力』の混合物がドロリと粘着質な様相を見せながら器へと満たされる。

 失敗だ。


 「やはり、まだ足りないか……タールから植物油程度には粘度が落ちているが……。」


 液状化加工というのは、魔力の実験においてその性質を調べる上でよく使われる技法だ。


 純粋な魔力はまるで気体のように軽く、逆に澱んだ『染力』はタールのようにドロドロとして重い。

 そして人の内で生成される魔力は水の様な質感であり、最低でもそれほどでないと魔法には活用できないのである。


 「ふむ……もっとフェムの魔力がいるな。だが……」


 魔力を自らの意思を持って操作を行うと、それは結果的に魔力量が増える結果となる。

 原理は未だ不明であるが、魔力は使えば使うほど最大容量が増え、魔核が成長していく。


 だがそうすると、老化の遅鈍が早まってしまうのだ、それは避けねばなるまい。


 「仕方ない、また吸い出すか。」

 「もどりましたー!」

 「あぁ丁度いい、こちらへ来い。」


 我がそう声をかけると、扉を開けて紫色の草を籠に詰めたフェムがトテトテと部屋に入ってくる。


 「お前の魔力が少し足りなくてな、協力して貰いたい。」

 「えっ、あ、あの。あれやるんですか?」

 「?あぁ、お前に魔力を使わせるわけにはいかないからな。」


 少し顔を赤くするフェムに、我は近づきその柔らかなほっぺを両手で挟む。

 そしてその口に我の口を押し当てた。


 「んむ。」

 「むぅぅぅ!」

 「こら、動くんじゃない。舌を伸ばせ。」


 魔力の譲渡にはいくつか方法がある。


 素肌をお互いに接触させる方法、魔力を伸ばして分け与える方法、専用の機器に蓄える方法。

 だが本来相容れない他者の魔力を受け入れるという事で、少なからずロスが生じてしまう。


 そんな中で、最もロスが少なく効率がいい方法、それが粘膜接触である。

 一番良いのはまぐわう事だが、まさかこんな子供にそれを命じるのは酷だろう、故にこれが最も良い方法となろう。


 子供の穢れも病も知らぬ柔らかな舌に我の舌を絡ませ、その内に眠る無色透明な力の奔流を我の中に一時的に保管していく。

 我の魔力と混ぜてはならない、何色にも染まるフェムの魔力が我の色に染まってしまうからだ。


 我のものと混ざった魔力はもう使えない、自らの内に自らの魔力とフェムの魔力を隔離する壁を作り出し、注いでいく。


 「んぇ……もういいぞ。」

 「はぁ……はぁ……。」

 「ふむ、どうにもお前はこれが苦手なようだな。嫌なのか?」


 粘膜接触を嫌がる人もいると聞く。

 我は別に良いではないかと思うが、そうでない人も多いらしい。フェムもその類の人間なのだろうか?


 「やじゃ、ないです、けど……。」

 「けど、なんだ?」

 「ちゅーは……たいせつなひととやるって、ママがいってました。」


 大切な人同士?つがいの事だろうか。

 いや、そうとも限らないな。別段大切であると良いのであれば、別に我はフェムとキスをして良いという話になる。


 「我にとってフェムは大切だが?」

 「ふぁ!?あ、でも、ぁぅ。」

 「どうした。フェムにとって我は大切ではないのか?」


 我はフェムの命を救い、身寄りのないフェムをここに置いている、そして天才である我直々に魔法を教えている。

 少なくとも我がいなければフェムは困るはずであり、つまり我は大切という事になろう。


 答えを渋り顔を何故だか赤くするフェムの顔を覗き込み、逸らされようとする視線を無理やり合わせる。

 そうしてようやくフェムは絞り出すように言葉を吐いた。


 「たいせつ……ですっ……!」

 「そうだろう。ならば良いではないか。」


 再び俯いたフェムの肩を軽く叩き、我は身体を離した。


 さて、やる事は沢山ある。そうだな、次はこの透明な魔力へ僅かに意志の力を注入してみようか。

 先ほど顔を赤くしていた時、フェムの魔力が若干揺らいでいたのを感じ取った。無色であろうと意思に呼応するのであれば、上手くいくかもしれない。


 「えと、ぼ、ぼくはこれ、そうこにしまってきます!」

 「ん?あぁ、転ばないようにな。」


 アルムエー草の入った籠を背負い直し勢いよく部屋から飛び出て行くフェムにそう注意をする。相変わらず元気だ。


 だが、先ほど魔力の譲渡をしてフェムの魔力を感じ取った時に気が付いた。


 「魔力、増えていたな……このままではまずい、急いで抑制機の製作に取り掛からねば。」


 我はフェムから譲渡された魔力を自らの内から取り除き、専用の保管機器へと取り込ませてそのまま研究を一時中断する。

 最終的には我が研究の為とはいえ、我が人の為に自らの研究を後回しにするなど。我ながら珍しい事もあったものだ。


 そんな事を考えながら我は近くの棚から小さな黄色の石を手に取った。

この物語はこんな調子で書いていく所存であります!というかこれっておにショタ?おねショタ?書いてて作者が分からない。


続きが気になるという方はブックマークを、気に入って頂けたという方は下の☆☆☆☆☆から評価をポチって下さると、作者は非常に喜びます。


更新は二日後です。

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