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Untillusion~合成獣の効率的な運用法~  作者: 鳥野29音
第三章 新米冒険者
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安物の筆は駄目だね


「唸れ水流! 私の魔方陣!」


 魔導筆が円を描き、その動きに合わせる様に、光の破片が空中に煌めく。

 立体的なパーツと化した文字と図形が、立体パズルを組み上げていく様に、複数の魔方陣を直列に並べた様に描かれていく。

一つ目の魔方陣は水流を生み出し、二つ目の魔方陣が水流を細くして、三つめの魔方陣が勢いよく水を飛ばす。

 水がホースの先を狭めた時の様に、細く且つ鋭い刃と化して前方へと飛んでいった。

 要は水に圧力を掛け加圧し、細い穴から水流を噴射したようにする事で、物体を切断するだけの力を水に持たせる事が出来る。所謂ウォータージェットやウォーターカッターと呼ばれるものをティルは造りだしたのだ。


「ピギィ!」


 頭部を水流で刺し貫かれた野獣、疾風猪(ガーンバーン)が血を吹き出しながら、走っていた勢いのまま地面を滑る様に倒れた。


「おおー。凄いじゃないかティル!」


「でしょでしょ! やっぱ私の魔方陣は最強よねー!」


 ティルがふんすかと鼻息荒く言い放った。

 まあ、自慢したくなるのも当然であろう。他の誰にも真似は出来ない魔方陣の使い方をしたのだから。


「全く凄い威力だな。敢えて言うなら積層方陣ってとこか」


「あぁ、それいい! そうよこれは新しい私の魔方陣! 積層方陣よ!」


 シュウの言葉にティルが大袈裟に手を振り回しながら言い放った。

 振り回した反動だったのか、その言葉をティルが言った直後に、魔導筆が砕け散る。


「ああっ! ……やっぱ、安物の筆は駄目だねー。はぁ……魔導筆が使い捨てになっちゃうよ……でも無いと複雑な魔方陣は描く事が難しくなるし……」


 ティルは描けないとは言わない。単に描きやすくなる為に魔導筆を利用しているのだ。

 だがこの補正値は結構あるらしく、ティルは好んで魔導筆を使うようになっていた。

 が、今日はもう打ち止めだろう。持っていた三本共に砕け散ったのだから。

 もうティルは魔導筆を持っていない。


「ねえデュス。魔導筆、どうしたら良いと思う?」


 ポカンと口を開け、唖然としていたデュスに問いかける。


「い、いやいや、何なんじゃお主らは! シュウだけでのうて、クムトもティルも、自分がどれ程の事を成したかまるで分かっとらん!」


「ええっ? 僕もですか?」


「あたり前じゃ。どこの世界に息をするようにスキルが使える奴がおるのじゃ」


「まあクムトだし」


「いやいや、シュウさんみたいに言われても」


「……どう言う意味だクムト?」


 思わず吐いたセリフにシュウが疑問の声を投げ掛ける。


「い、いや、そんな意味じゃないですぅ!」


 慌てて訂正を入れるも時既に遅し。

 クムトはシュウに詰め寄られ、デュスに救いの目を向けるが、思い切りスルーされる。


「さて、説明してもらおうか?」


「あうあう……」


 クムトは捨てられた様な目でデュスを見やり、悪乗りをしたシュウに追い詰められ、引き攣った笑顔を浮かべる。

 

「と、兎に角じゃ。ティルも普通なら魔方陣は簡単には描けんのじゃよ。何処にそう簡単に描ける奴がおるんじゃ」


「ん。ここに居るよ」


「そんな自慢げに言わんでも分かっとるわい! そうじゃのうて、自分が普通で無いと気づけと言うとるんじゃ!」


 デュスが呆れた様に溜め息を吐いた。


「まぁそれはいいとして、ティルは後何種類くらい魔方陣を覚えた?」


 クムト苛めも程々に切り上げたシュウが、ティルの様子を伺う。


「えっとねー。火球でしょ。水流に鎌鼬と土壁。動かすのと跳ねるのと弾くのと止めるの、それに転写だね」


「基本動作ばかりだね」


 クムトの意見にティルも肯定する。


「うん。見つけた本が基礎の本だったからね。難しいのは載ってなかったんだよ。中級用の本は置いてなかったし」


「だが組み合わせに加圧がなかったか?」


「あれはオリジナル! イメージが難しかったんだよ」


 シュウの問いかけにティルが自慢げに言う。


「ならティル次第でオリジナルはもっと増えそうだな」


「元々ティルには想像転写があるんじゃし、基礎さえ分かっとれば、後はイメージで何とでもなりそうじゃな……普通ではないがの」


「ジジイもしつこいな。今更だろうが」


「いや、分かってはおるんじゃが……何か常識が崩壊しそうでのぉ」


 デュスの気持ちもよく分かるのだが、このパーティにおいて常識などは溝に捨てた方が懸命なのだ。

 方や神のスキル持ち、方やスキルでは無く野獣のアビリティを操るのだから。

 通常のスキルと同じと思っていたら、毎回何かを行う度に驚かなくてはならなくなる。


「……まぁ程々で慣れろよ」


 シュウにはデュスにそう言葉を掛ける事しか出来なかった。


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