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ホームレス異世界へ行く  作者: 正木 晴
4/14

ホームレス、再会する。 4話


「ではまた来週参ります。」

「はーい。ご苦労様。」

ゴローの廃棄物運搬業は順調で、回収に行く店舗も増えて来ていた。


廃棄物には種類があり鉄くずと廃材に別けられる。


この国は建物の建材に木材を多く使う。

普通の木材から樹木型の魔物の素材まで種類は多い。

木材は用途が広いため様々な物に再利用されるので廃棄する物は魔物由来の木材ばかりだ。。

それに燃やすと毒煙が発生するため勝手に庭で燃やす事を法で禁止されている。

定められた処理場に持っていく必要があるのだ。



鉄も王都近くの鉱山街で比較的に安価で手に入るので、手間の掛かる鉄くずの再利用は敬遠される。

その為処理場には廃棄された鉄製品が山になっていた。




最初に行った商店の庭に馬車が捨ててあるのに気付いて店の人に声を掛けた。

「すみません。この馬車も廃棄ですか?」

「持ち主が魔物に襲われたらしく馬車だけが何年も放置されていたんだ。引き取ったは良いが修理するくらいなら新たに買った方がましだよ。」

「では貰っても良いですか?運搬用に使いたいんで。」

「馬車でゴミの運搬なんて聞いた事がない。」

「いえ、私が引くように改造しますよ。」

ゴローは馬車を引き取りリヤカーに造り直した。

ここでも【公園の叡智】が役に立つ。

【公園の叡智】は公園にいた仲間達の持つ能力を使う事が出来るものだった。

医者から土建屋、漁師、料理人など様々な能力を使える事はチートと言っても良いだろう。


運ぶ量が増えて仕事も捗った。



この仕事では廃棄物の分別が大事になってくる。

【空き缶集め】が真価を発揮するのはこの時だ。

「アルミ」と叫んでも反応はない。

「スチール」と叫ぶと鉄製品が集まってきた。

これは便利。

試しに「銅」と叫ぶと銅製品が集まった。



天使様は【空き缶集め】という名前を付けたが鉱物に限らず、生き物以外ならどんな素材でも分解して集める事が出来る【抽出】や【解体】の上位スキルだった。


極稀に見つかる“金”や“宝石”が美味しい。

銅の価格が高騰した際はストックを大量に売り捌き大儲けしたのは嬉しかった。


おかげで貯金も結構貯まったが、未だにマールさんちの納屋に住んでいる。

居心地が良いんだよ。

マールさんちの納屋の家賃も3年分払ったし、毎日定食を食べる事が出来るようになった。


順調過ぎて怖いくらいだ。



〇   〇   〇




たまには冒険者ギルドの依頼を受けないと身分証が取り消されてしまう。

週に1回は冒険者ギルドに行く事にしている。

依頼には[薬草採集][鉱物採掘][魔物討伐][警備護衛]等があり

、いつも比較的安全な[薬草採集]を受けている。

しかしだ。せっかく異世界に来たのだから魔物と戦ってみたいという俺の願いはおかしな事ではないと思う。

廃棄物処分場で見付けた細長い剣を腰にぶら下げて意気揚々と王都の門を出た。

いつも薬草を採集する林を通り過ぎ・・・いや、薬草も採集して行こう。


森の中は危険だと言うので森の手前で魔物を探した。

探している時は出会わないもので、とうとう日が傾き始めてしまった。

今日は諦めようと来た道を戻っていたら、森の方からガサガサと音がして何者かが転がり出て来た。

驚いて振り返ると灰色のローブを着た子供が何かに追われているのが分かった。

追っているのはゴブリン?

始めて見るそれは体長1メートル位の醜悪な姿をした小人だった。

2匹のゴブリンが子供に迫っているが何かを警戒しているようで付かず離れず距離を取っている。

肩で息をしている子供がたまに振り返り手を翳すとゴブリンは離れるがすぐに追い掛ける。

向かっているのは街の方向では無さそうだしこのままでは子供の体力が持たないだろう。

俺は気合いを入れ子供の前に飛び出した。

ゴブリンも驚いていたが子供も驚いている。


「助太刀しよう。」

細長い剣を両手で持ち1匹のゴブリンに剣先を向けながら言った。


キチキチと鳴き声を発してゴブリンが向かって来るが、剣が見えていなかったのかそのまま串刺しになった。

「は!?」

急に剣の重みを感じて慌てて剣に刺さったゴブリンを地面に落とす。

それを見たもう1匹は何もせず逃げて行ってしまった。


「大丈夫かい?」

なるべく優しく子供の頭を撫でたが間違っていた事を知った。

「あ、はい。ありがとうございます。」

ローブに付いたフードを取りながら頭を下げたのは、子供ではあるが一緒に召喚された少女ショウコだった。

久しぶりに再会したショウコはかなり憔悴していて、苦労してここまで逃げてきた事が伺えた。


王都の門を入る時、相当警戒していたが手配されていない事が分かりホッとした様子だった。


俺が追い出された後の事を聞いたが勇者2人の話はそれは悲惨なものだった。

奴隷戦士として休みも無く兵士のレベル上げに駆り出され、それ以外は部屋に監禁された状態でいるらしい。

やはりこの国の王様はどうしようもないゴミ野郎だ。


俺が憤っているとショウコは不思議そうに聞いてきた。

「ゴローさんはあの2人が憎くないんですか?」

「ん~、そりゃ腹は立っているけどこれはちょっとやり過ぎかなと思うよ。」

「でも家を放火されたんでしょ?こっちでも殺され掛けてるし。」

「法で裁かれるなら分かるけどこれは違う。自分勝手な理由で呼び出して置きながら奴隷にして戦わせるなんて許せない。」

「・・・私には自業自得としか思えない。」

ショウコはそう言うと黙ってしまった。

俺が消えた後に何かあったのかもしれない。

いや、それ以前にもあったのだろう。

とりあえず納屋の前まで来たものの、こんな所に泊める訳にもいかずマールさんの家に泊めさせて貰う事になった。


この歳にしてはかなりの料理上手で、ショウコの料理を食べてマールさんの旦那は直ぐに弟子入りを志願していた。

後で聞いた話だがショウコのスキルに【医食同源】と言うものがあって、作る料理に様々な効果を付与する事が出来る能力だそうだ。

城中にいる時は身の危険を感じて隠していたらしい。

このスキル名はもしかしたら天使様オリジナルかもしれない。

まだとんでもない性能が隠されている気がする。



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