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ホームレス異世界へ行く  作者: 正木 晴
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ホームレス異世界へ行く


「俺の家が・・・俺の全てが燃えていく。」

「吾郎さんそこどいて!」


燃え盛る炎を前に呆然と立ち尽くす俺の横を、元消防団にいたという健ちゃんがバケツを持って駆け抜けた。


近所に住む人たちの力を借り、ようやく火事は鎮火した。


「吾郎さん大丈夫?」

「ありがとう。でも全部燃えちゃったよ。」

健ちゃんが心配して声を掛けてきてくれたのでニコリと笑って返した。


「それにしてもあのガキ共、絶対許さない!」

「そうだね。」

怒ってくれている健ちゃんの言葉も耳に入って行かない。

50年以上生きて来て今は何にも残っている物は無い。

家族の写真や手紙などの思い出の品が一瞬で灰になってしまった。

明日からどうすれば良いのか途方に暮れるしかない状況だ。



俺の名前は安曇野 吾郎。今年で55歳になる。

仕事は解体業を少々と古物商を少々。

早い話が空き缶潰して売っているのさ。

公園に家を持つホームレスだ。

そりゃたまにイタズラされることだってある。

しかし、今回はやり過ぎだろう。

ほんの数分間トイレに行っていただけなのに、戻ってみたら俺の家は炎に包まれていた。

慌てて逃げる少年2人が見えた。

追い掛けるよりまず消火が先だと家を見るが、炎の回りが早く黒い煙が立ち登って近付く事が出来ずにいた。



朝になって警察官が事情を聞きに現れた。

油を撒いたのか焼け残った残骸には鼻をつく臭いが漂う。


「段ボールはよく燃えますからね。」

若い警察官の嫌味にカチンと来たが年配の警察官に注意されていたから何も言わないでいてやる。




「放火ですか。煙草吸われますよね?寝タバコの火の可能性は無いですか?」

またもや若い警察官の嫌味だ。


「逃げて行く少年2人を見たんですよ。」

「そうですか。一応捜査してみますが・・・」

やる気の無い警察官の言葉に昔の事を思い出していた。



俺だって若い時は会社にも勤めていたし、結婚をして家族を持っていた時期だってある。


だが気付いてみればホームレスだ。

人生ままならないものである。




こんな事件があったからと言って“時間”は待っていてくれない。

腹も空くし糞も出る。

命のある限り人生に終わりはないのだから。


今の俺には金を稼ぐ手段は少ない。

人付き合いの苦手な俺にとってはゴミを拾って換金する位しか無いと言っても良い。

拾う場所も地区によって縄張りがあり適当に拾っていると怒られる事もあるので注意だ。

今日は都内にあるトンネルの前を通った。

俺にとっては因縁の場所と言って良い。

最近来る事は無かったのでそれを詫び、目を閉じて両手を合わせた。




目を開けるとトンネルに走っていく人がいた。

少女とそれを追う少年2人。


間違いない!放火した2人組だ。

慌てて後を追い掛けてトンネルに入る。

少年2人と挟まれている少女が言い争いをしている。

「お前ら!見付けたぞ!」

「あ!この前のホームレスだ。」

「やべっ。」

「あなたたち何をしたの?」

どうやら少年達と少女は顔見知りのようだ。


逃げ出す隙を狙っていた少年2人だが、突然眩い光が辺りを包み完全に逃げるタイミングを逸してしまった。


光は容赦なく4人を包み一瞬で消えてしまった。







人に歴史あり。

ホームレスにも意外な過去があるものです。

更新はゆっくりですがよろしくお願いします。

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