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アンドロイドに夢を見る。  作者: ナベ
第6章 外の世界という現実
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6‐5.彼女は何処へ

 一体梨乃はどこへ行ったのか。


 一ノ瀬と双葉は館内を、小松は外を手分けして探すが、三人とも進展がないまま刻々と時間だけが過ぎていく。申請していた帰りの予定時刻ももうとっくに終わっている。


「いたか!?」


「ダメです、見つかりません」


「クソッ!」


 一ノ瀬と双葉は途中何度もすれ違い、そのたびに梨乃が見つからないことに不甲斐なさを感じていた。


 小松に連絡しても依然状況は変わらず、見当もつかなかった。


「GPSをインストールしておくべきだったな……」


 研究所の中であれば、監視室のモニタで梨乃の位置を一目で特定できる。同じ機能を自分たちの携帯端末に入れておけば、研究所の外にいても梨乃の居場所がわかるのだ。

 後悔をしながらコースを走っていると、研究所からインカムに連絡が入った。


『藤原だ。話は聞いた。お前らの端末にGPSマーカーを送ったから確認してくれ』


「ありがとうございます!」


 まるで一ノ瀬たちの思考まで全て分かっていたような、絶妙なタイミングだ。ちょうどそれが欲しかったのだ。

 ポケットから端末を取り出して送られてきたデータをダウンロードすると、一ノ瀬のものに加えて双葉と小松の現在位置が名前付きでプロットされていた。

 付け焼刃の機能で道も何もない真っ白な座標系だが、ないよりは全然いい。


「これで梨乃の場所も分かるな。探し出すぞ」


『はい!』


 インカムの向こうで二人が快活な声を上げた。



 そこから座標上の三点が動き続けること数分、「初号機」と書かれた点が現れた。同時に研究所から水族館の地図データが送られ、味気なかった座標が道を示し始める。


『遅れてすまない』


「いえ、助かります。……すいません。俺がついていながら……」


 一ノ瀬の謝罪を藤原はすかさず切る。


『あの状況、一瞬の出来事じゃ無理だ。お前のせいでもなければ誰のせいでもない。捜索を続けてくれ』


「分かりました」


通信を切り、再び意識をGPSマーカーに戻す。


「梨乃は……ここか。……どこだ?」


 梨乃の点は水族館の中にあった。たしかに中ではあったが、道の外、人目には絶対つかない場所にいるのだ。

 薄暗く、何かしていてもすぐには見つからない、深海エリアの近くだった。


「一度深海エリアのクラゲの水槽前に集まるぞ」


『了解』


 一ノ瀬の指揮のもと、三人は深海エリアを訪れる。


 時間はもう日が沈み始めるころだが、ここでは一日中この暗さ。企てるにはもってこいのエリアだろう。


「見ての通り、ポイントは道の外。どこかにスタッフ用か何かの扉があるはずだ。おそらく梨乃はその中だ」


 騒ぎにならないよう、水槽の脇で静かに作戦会議を行う。

 深海エリアということは特定できたため、あとはこのエリア内だけでくまなく探せばいい。三人は再び散り、走り出した。



 *  *   *



 同刻の研究所。

 GPSマーカーを三人に送信した藤原と生田が、石田首相と連絡を取っていた。


 監視室のモニタには、首相とその後ろに立っている秘書の津田の顔が映り、藤原たちの神妙な雰囲気を察して顔をしかめる。

 プロジェクトの本部である首相に梨乃の身辺についての報告をすることも、研究所をまとめる二人の仕事の一つだ。今回の梨乃の失踪も当然報告する必要がある。


『初号機の失踪か。誰がやったのかはまだ分からないのか』


「今、現場で一ノ瀬たちが捜索中です。向こうから連絡が入り次第すぐに石田さんに

報告します」


『分かった』


 叱責されるのではと恐れていた藤原は、さらに強い恐怖を覚えながら聞いた。


「あの、石田さん……。研究所のメンバーの処置はどうなるんでしょうか……」


 首相は数秒悩んだ挙句、


『処置については決まったら文書で伝える。それまでは今まで通りだ。では』


 と、通信を切ってしまった。


「さっきの反応、石田さんの逆鱗に軽く触れたみたいだな」


「ああ。まったく、面倒なことになったもんだ」


 コーヒーを淹れてひとまず休憩を取るが、しかしその表情は暗く、とても休んでいるようには見えない。


「これからどうなるんだ、私たち」


「さあな……。少しでも軽くなればいいんだが……」


 研究対象である梨乃を見失うこと、ましてや奪われることがあっては、計画そのものの破綻を意味する。つまり大失態、大損失だ。


「覚悟はしておいた方がよさそうだな……」


 首相の判断次第では、今の生活から一転して放浪の旅をすることもありえるが、研究所では良い結果を祈ることしかできず、どんな判断が下ってもそれに従うことしかできない。


「頼むぞ、一ノ瀬……」


 生田はつぶやき、残っていたコーヒーを飲み干す。ただ待つだけのもどかしさは、カップの底に溜まっていた苦みをより強くした。


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