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アンドロイドに夢を見る。  作者: ナベ
第5章 興味は中から外へ
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5‐2.ひとまず連絡先交換

 携帯電話は今までに色々な機種があった。一時期はパソコンの機能まですべて搭載した超小型端末が発売されたが、小さいゆえに作業がしづらいと悪評で、結局は元の大きさと機能に戻っている。

 その二つを与えると、今度はネット上の問題が浮上する。


「そういう問題が起こらないようにするのが、俺たちの仕事でしょ。先輩」


「梨乃ちゃんに教えるのは、人工知能の開発では当然のことですよね」


 人工知能が成長するにはサンプルデータが必要不可欠であり、そのサンプルデータは大きく二つに分かれる。


 例えば犬の種類を学習する場合を考える。

 犬の見た目以外に「これは犬です」という正解が付けられたもので学習するのが、『教師あり学習』と呼ばれるものだ。


 逆に「犬」という正解がなく、見た目などだけを学習していくのが『教師なし学習』と呼ばれている。


 梨乃の精神はまだ成人もしていない、成長の途中だ。問題が起きる前に未然に防がなければならない。人工知能ということを除いても、何が正しいかの正解を教えてやる、教師という存在が必要な年ごろだ。


「そうだな。俺たちでまたなんとかするか」


「了解です」


 もうこの前のような問題は起こらないだろう。そう願いながら、一ノ瀬は発注フォームを開いて携帯と小さめのデスクトップパソコン、その他の周辺機器を申請した。



   *   *   *



 頼んだものは翌日の朝には届いていた。


「これ、私にくれるんですか!?」


 業者が部屋に運び込むのを一ノ瀬と二人で見ていた梨乃は、ベッドの上で小さく何度も飛び跳ねる。

 一ノ瀬は、思春期前にゲームをあげたときのことを思い出す。

 喜ぶ姿や表情は変わらずまだまだ幼さが残っているが、精神が成長したからなのか、なんとなく大人びている部分も垣間見えた。


 一ノ瀬が業者にサインをしている間、梨乃は運び込まれた箱を上下左右色んな角度から覗き込んでいた。


「ありがとうございます! 一ノ瀬さん!」


「おう」


 業者が去ったあと、梨乃は真っ先に一ノ瀬に飛びついて心底嬉しそうに言った。その仕草に少しドキリとしつつ、隠すように梨乃の頭を撫でた。


「とりあえず最初だけやるぞ。それからみんなのところに持っていこう」


「了解です!」


 必要なアカウントを作り、それぞれにパスワードを設定し、携帯とパソコンの両方とも手早く初期設定を終わらせる。

 研究所の中だけであれば電話をかけずとも伝えることはできるし、必要になればインカムでやり取りをするが、念のため連絡先を交換しておいてもいいだろう。


「よし、行くか」


 梨乃は携帯を片手に、一人で監視室へと走っていってしまった。

 一ノ瀬は消えていくその背中を見て、やっぱりまだ子どもだなと思わざるをえなかった。



「双葉さん、小松さん。連絡先交換しましょう」


 監視室へ向かい開口一番、携帯を突き付けて叫ぶと、仕事をしていた二人はさすがに驚き肩を震わせた。


「びっくりした……」


「梨乃ちゃん! いいよ、しようしよう!」


 双葉が梨乃と小松の携帯も併せ、慣れた手つきで交換を終わらせ、


「一回電話してみるね」


 と、また慣れた手つきで画面を操作していく。

 監視室にデフォルトの着信音が鳴り響き、梨乃がわっ、と跳ねた。


「開けてみて」


 隣で軽く説明を受けながら梨乃も真似して指でいじると、画面に電話番号が表示される。


「それが私の番号だから、登録しておいてね」


 基本操作を覚えたところで、小松も電話をかける。今度は梨乃も跳ねずに、すぐに出ることができた。


「お二人とも、ありがとうございました」


 深々と頭を下げ、梨乃は監視室をあとにした。


 遅れてやってきた一ノ瀬と合流し、梨乃は続けて藤原と生田の電話番号を入手しようと試みた。

 しかし研究所のどこを探しても、お目当ての二人の姿はなかった。

 双葉と小松にも聞いてみたが首を横に振る。一ノ瀬が聞いていなければ二人も当然知らないはずだ。


 電話をしたが繋がらず、ついには夜中になっても二人は帰ってこなかった。


「大丈夫なんでしょうか」


「梨乃の思春期の問題が解決したから、たぶんそれの報告をしに本部にでも行ってるんだろう」


「そうだといいんですが」


 梨乃を寝かせたあと、一ノ瀬たち三人は監視室で首を傾げた。



   *   *   *



 一ノ瀬の推測通り藤原と生田は、梨乃の思春期の問題解決を報告しに来ていた。ただ、目的はそれだけにとどまらなかった。


「いよいよ、ですか……」


「そうだな……。いよいよ第二フェーズだ」


 石田はジョッキの底に残ったビールを空にして言った。藤原と生田もそれに倣い、各々口にしたいものを手に取る。


 小さな照明が一つ天井からぶら下がっているだけの、三人が入ってギリギリの狭い個室だ。

 プライベートでも付き合いのある三人の行きつけの居酒屋で、プロジェクトは次の段階へと移行し始めていた。


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