出会い
これはたぶん、「僕たちの初恋の物語」なのかもしれない。
僕の親は共働きで殆ど家にはいない。そんなある時、父が足を骨折し、入院した。突然すぎて驚いた。
「足、大丈夫なの?」
「大丈夫さ!そんな弱っちくないぞ」
ドヤ顔で、骨折した足を見せられてもなと思いつつも、内心は安心している。共働きの両親だが、とても優しい親である。
「気を付けてね。それじゃ、僕帰るから」
「見舞い、ありがとな」
にこりと笑いかけてきた父を見て、僕は帰るため足を進めた。エレベーターに向かっていると、バタンッと音がした。びっくりしたが、気になったので、音がしたほうへいくと地べたにぺたんと座り込んでいる女の子の姿を見た。
「大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄り、手を差し伸べた。が、反応がなかった。
「あの、立てますか?」
すると、彼女はハッとしたのか顔を上げた。彼女の目には包帯が巻かれてた。
「手を貸してください」
僕は彼女にそう言うと、彼女はそれに答えるように、手を差し出してきた。
「あっありがとうございます」
今にも消えてしまいそうな、でも透き通る声でもあった。
「いえ、それではお大事に」
その場から離れようと一歩足を出した時、グイっと服が引っ張られた。後ろを振り向くと、顔を下に向けていた。
「ご、ご迷惑だとは思いますが、私の病室まで連れて行って頂けないでしょうか……?」
少し震えた声で、耳がかすかに赤かった。断る理由も特にないため、いいですよと優しく言うと、花が咲いたかのようなうれしそうな顔で、
「ありがとうございます」
と、彼女はお礼を言う。かわいいと少し思った。何号室か聞くと、
「305号室です」
〝305号室〟今、そう聞こえたが……。
「確かめたいのですが、305号室で間違いはありませんか?」
こくりと頷き、はいと彼女は答えた。僕はとにかく彼女を病室まで連れて行くことにした。
「あれ?また見舞いに来たのか?」
そう、305号室は父が入院している病室だった。まさかこの女の子が同室だとは思わなかった。
「違うよ。この子を連れてきただけ」
僕に隠れていた彼女がぺこりと、軽くお辞儀をした。
「あー!希望ちゃんか!」
「こんにちは。途中で迷子になってしまったようで……。その時に助けてくださったんです」
それが彼女との出会いだった。
初めまして、零始と申します。初投稿作品なので、温かい目で見ていただけると幸いです。
この作品自体は既に私の中では完成していますが、小出しして書いていこうと思っております。拙い文章ではございますが、これからも読んでいってくださると大変嬉しいです。
タイトルは未だに悩んでいますので、変わるという可能性もございます。ご了承ください。
余談ではありますが、こんな固めの挨拶をしていますが実際は脳内花畑でございます。()どうぞ、これからもよろしくお願いします。