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病名(びょうめい)とめろんぱん  作者: 雛まじん
第1章 柳瀬優の殺人
9/79

病名とめろんぱん その9

■登場人物⑤

()(ばた)(じょう)()

 『海沿(かいえん)保育園』のメンバー。

 『()(ぜん)(たい)症候群』に侵された、『病持ち』。

 

 連絡を受け、(おき)さん、僕、(しん)(じょう)さん(「なんで私なんだよ・・・ったく、面倒くせえな・・・」)は、『シンデレラ教会』へと赴くことになった。

 信条さんは、かなり嫌がっているようだ。いや・・・ただ単に、面倒くさいと思っているだけなんだろうけど。

 そんなことを言ったら、僕にだって面倒くさいという気持ちはあるのだ。

 お葬式とかは、身内だけでやってほしい。

 ただ、あの人と直接対決した人間としては・・・まあ、行かないわけにもいかないのだろう。

 あとは、『シンデレラ教会』のリーダーである機桐(はたぎり)さんが、そう簡単に死ぬとも考えられないので、真相を確かめたいという興味もある。

 あの人が、そう易々と殺されるのか?

 娘の成長を誰よりも楽しみにしていた、あの人が?

 一体、誰の手によって殺されたのだろう?

 だが、それらを考慮したとしても、次の一言がなければ、僕は行かなかったかもしれない。

 草羽(くさばね)さんの、あの一言がなければ。


(やな)()さん。あなたには、必ず来ていただきたいのですが・・・よろしいですか?」

「え?えっと・・・」

「よろしいですね?」


 有無を言わせない彼の口調に、僕は、「は・・・はい」と答えるしかなかった。

 あの礼儀正しそうな草羽さんに、そこまで言わしめるとは・・・一体、何があったというのだろう?「よろしくないです」と、言える雰囲気ではなかった。

 ・・・仕方ない。

 行くしかないか。

 そんなわけで僕は渋々、出発の準備を始めるのだった。


「あのー・・・柳瀬さん。ちょっといいですか?」

「ん?・・・なんだい?」


 出発準備を急ぐ僕の背中に、声をかける人物がいた。

 ()(ばた)さんだ。

 炉端(じょう)()さん。

 男らしい名前ではあるが、彼女は正真正銘、女性である。

 女子高生である。

 いや、高校には通っていないだろうから、女子高生ではなく、制服を着た女性、ということになるのだろうか。

 露骨に言ってしまえば、コスプレである。

 ・・・そういえば、彼女はいつでも制服を着ているような気がする。あまり、他の服を着ているところを見たことがないのだ。

 しかも、毎回違うデザインの制服である。

 どれだけ制服を持っているのだろう?この子は。


「ごめん、炉端さん。僕、今から外出しなくちゃいけなくてさ。あんまり、長い話はしてられないんだけど・・・」

「『シンデレラ教会』へ、行くんですよね?」


 どうやらすでに、炉端さんは知っているようだ。

 情報収集は得意分野、だったっけ。


「それも信条さんと一緒に、でしょう?いいなぁ・・・」


 いいなぁって・・・。

 ああ、そういえばこの子は、信条さんに憧れているんだった・・・。


「じゃあ、代わるかい?本当は、行きたくないんだよね・・・」

「そういうわけにもいきませんよ・・・というか、相当行きたくないんですね。少し、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」

「大丈夫・・・だとは思うよ。多分」


 さっさと帰ってこよう。

 なるべく早く。

 とにかく早く。


「でも、それならやっぱり、これは伝えておいた方がいいと思います」


 と、真剣な顔で頷く炉端さん。

 うん?

 機桐さんが殺されたことと、何か関係のある話題なのか?


「『シンデレラ教会』の殺人事件と、直接関係のあることではないかもしれないんですが・・・。柳瀬さん。沖さんから、粒槍(つぶやり)伝治(つたうじ)のことは聞きましたか?『白縫(しらぬい)グループ』のことを」

「うん。それは聞いたよ。『白羽病院』の患者・・・・・じゃなくて、職員だとかなんとか・・・」

「そうです。それに関係した話なんですが、『白縫病院』から、脱走者が出たそうなんです」

「脱走者・・・?」


 それは、どういうことなのだろう?

 脱走者って?


「病院から抜け出した患者がいた、みたいな意味かい?」

「まあ・・・そうですね。その解釈で、良いと思います」


 秘密組織からの脱走者か。それも、『(やまい)()ち』に関わる組織からの脱走者。

 あんまり、穏やかな感じはしないな。


「これが、伝えておきたいことの一つ目なんですが」

「一つ目?」

「はい。二つ目があります」


 と、彼女は指を立てる。

 ピースの形である。


「二つ目。実は最近、変な犯罪者が出てきているという情報を耳にしたんです」

「犯罪者は大概、変な奴じゃないのかい・・・?」


 まともな性格をした犯罪者なんて、いないだろう。

 犯罪を起こしているだけで、異常者である。


「中でも変、ということです。なにせ、その犯罪者は、『柳瀬優』を名乗っているそうですから」

「・・・・・は?」


 それは、確かに変だ。

 だって、僕はここにいるのだから・・・同姓同名の犯罪者、ということはないだろう。


「一応聞いておきますけど柳瀬さん、最近、犯罪とか起こしてます?」

「起こしてないよ・・・」


 「最近、何してる?」みたいなノリで聞かれても。


「いえ、分かってはいるんですけど・・・。一応、です。どうやらその犯罪者は、柳瀬さんが関わってきた事件と、関係のある事件を起こしているみたいなんです」

「僕が関わってきた事件・・・というと?」

「たとえば、マンションへの放火。それに、少女の誘拐。どちらの事件でも、犯人は『柳瀬優』を名乗っていたことから、同一犯の可能性が高いです」


 ・・・・・確かに、僕に関係のある事件だ。僕が住んでいたマンションは火事になったし、少女の誘拐は、莉々ちゃんの誘拐との関係性を匂わせている。

 だけど、なぜそんなことを?

 僕の名前を名乗りながら犯罪って。

 嫌がらせにも、(ほど)があるだろう?


「犯人の目的は、よく分かりません。罪をなすりつけたいのかもしれないし、そうでないのかもしれません。ただ・・・・・他にも、奇妙な点があるんです」

「他にも?僕の名前を使っていること以外にも、かい?」


 それだけでも奇妙だというのに、他にも何かあるというのか?


「ええ。というのも、両方の事件で、被害者は全く出ていないんです。放火は小規模なものでしたし、誘拐された少女も、無傷な状態で発見されたそうです。さっぱり、犯罪の意図が分からない」

「うーん・・・・・ただ単に、犯罪を起こしてみたかっただけ、とか?」

「愉快犯、ですか。それだけならいいんですが・・・」


 それだけ、ということは、まあ、ないのだろうな。と、僕は思う。

 愉快犯の犯行に、僕の名前を使わないでほしい。

 ぜひぜひ、やめていただきたい。


「それで、ここからが一番の問題なんですが・・・」

「まだあるのかい?問題が?」


 少し、げんなりしてしまう。

 ここまででも、かなりの問題だと思うのだが。


「一つ目の、『白縫病院』の脱走者。二つ目の、『柳瀬優』を名乗る犯罪者。そして、『シンデレラ教会』のリーダー、機桐()()を殺した者」


 それらが全て。

 同一人物である、ということなんです。

 

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