Tears of the rumor
噂の涙、と翻訳に入力したら出てきたのをそのままタイトルにしました。タイトルなんて考えちゃいなかった!!変なタイトルですが気にせずに読んで頂けると幸いです(´・ω・`)
篠宮楓と今川朝陽は中1の頃から付き合ってる。
という噂が流れたのは高校入学してからすぐだった。
というのも、2人は産まれた頃から家が隣同士。
親同士も仲が良く、幼い頃から一緒にいるのが当たり前。
登下校も一緒にするのが当たり前。
だからお互いを意識し合うのも当然。
子どもの事から気持ちを育んできて、今に至る。
しかも二人とも美男美女。有名雑誌のカップルのスナップにも載ったことがあり、二人とも専属モデルにスカウトされた事も。
高校も同じで、仲睦まじい二人を憧れのカップルとして崇拝してる生徒もいる。
…らしい。
でも噂は所詮噂。
二人と仲が良い友達は皆それはただの噂だということを知っている。
ただどこで誰が言い出して、何がどこまで拡がっているのかが分からないから否定をするのも困難な状態で、結局その辺がうやむやになっているのが事実。
そして、それは私も同じだった。
「おい、早く行くぞ。」
「おはよー梓ちゃん。」
噂のカップルに今朝も起こされる。
「お前いつになったら早起きすんだよ。」
「違う、今日は寝癖が直んなかった。」
「寝癖くらい付いてても変わんねーよ。」
「何だと。」
「もう、二人とも相変わらずだね。」
私と朝陽が毎朝口喧嘩してそれを笑う楓。
それが幼稚園の時からの日課になっていた。
つまりは私も二人と産まれた頃から一緒だったのだ。
ちなみに私はお向かいさん。
なんで楓と朝陽だけが注目されてるかというと、二人とも顔面偏差値がぶっ飛んで高すぎるから。
私も毎日一緒にいるのに皆私の存在は無視らしい。
それどころか、二人きりの邪魔をするKY扱い。
だから時々信者達に呼び出されては
「あんた本当に空気読めないよね。マジ何なの?二人が迷惑してるの分かんないの?可哀想じゃん。あんたも早く別に男作って二人から離れなよ。」
とか訳が分からない事で言いがかりを付けられては、ハイハイ、で流す日々。
でもそんな事されてるなんて2人には言えない。
色々めんどくさいから。
「梓、今度の日曜どっか行くか?」
朝陽が私の頭を撫でる。
「え、二人で?」
「当たり前だろ。他に誰か誘う必要あるか?」
「楓…」
「なんで楓?」
「なんで、って…」
思わず下を向いてしまった。
「梓ちゃん、噂の事気にしてるの?」
「あ、う…」
「ごめんね、本当に。」
「楓が悪いんじゃない。」
「だいたい朝陽くんがちゃんと言わないからこんな事になってんじゃんか。」
「違うっつっても誰も信用しねえんだよ。皆バカだよ、ホント。」
楓と朝陽がため息をつく。
それが胸の奥をぎゅっとさせた。
…本当の話をすれば。
朝陽の恋人は、本当は楓じゃなくて私。
中1の頃からでは無いけど、高校に入る前にはすでに付き合い始めていた。
楓は大学生の彼氏がいる。
毎日一緒にいるのは、ただ単に本当に仲がいいから。
スナップを撮られたのもたまたま街で会って喋ってた時に声をかけられたから。
普通にファッションのスナップだと思ってたのに、出来上がった写真を見たらカップルになっていて、二人とも私と楓の彼氏さんに本気で謝っていた。
彼氏さんはめっちゃ笑ってたけど、私は正直に言うと全然笑えなかった。
噂はあるけど本当に付き合ってるのは私だし、朝陽も好きだってちゃんと言ってくれてるし大丈夫って思ってた。
だけどやっぱり楓と朝陽が並んだら絵になるし、私みたいな中の下の顔じゃ朝陽には釣り合わないんだろう。
楓の彼氏さんは凄くかっこいいし高学歴だし、何より楓がベタ惚れだから全く気にしてないだろうけど。
「じゃ、また放課後ね。」
二人に手を振って教室に入る。
皮肉な事に二人は同じクラス、私は2つ隣のクラスだった。
しかも3年間クラス替えが無い学校。
あと、一年もこんな切ない思いしなきゃいけないのかと思うと泣きたくなる。
「おはよ、梓。」
声をかけてくれたのはクラスで一番仲がいい、近藤美希。
美希は本当の事を知ってる数少ない人の内の1人。
「またそんな顔してー。今川くんに怒られるよ。」
「どんな顔してた?」
「今にも泣きそうな顔。」
美希が苦笑いをする。
昼休みは中庭で美希とお弁当を食べるのが最近多くなってきた。
中庭だと結構人が多いから呼び出されにくい、と美希が言ってくれたから。
「朝陽にさ、日曜二人で遊びに行こうって誘われたんだけど答えられなかったんだ。」
「なんで。」
「前にね、二人で映画行った時に信者に見られてて次の日学校で呼び出されて。」
「こないだ呼ばれてたのそれだったんだ。」
「うん。『2人に付きまとうな、ブス』って言われちゃった。もしまた誰かに見られたらって思うと返事出来なかった。」
「今川くんはそれ知ってるの?」
「知らないと思う。」
私がそう言うと美希は少し強めに箸を置いた。
カチャン、と音が鳴ってビクッと私の身体が震えた。
「あのさ、噂が消えないのはあんたにも原因があると思うよ。2人はここまで全校生徒が噂を信じて信者までいるなんて知らないんでしょ?ましてやあんたに言いがかり付けて来てるなんて。」
「そう…だよね。」
「そうだよ。まあ、楓ちゃんに言う必要は無いとは思うけど。なんで今川くんに言わないの?」
「迷惑かけたくない。」
美希の目つきがキッと変わり私を睨みつけた。
「あのねえ!!」
美希は私に怒鳴るとデコピンをしてきた。
美希のデコピンはかなり痛い。
しかも最近ネイル変えたせいか小さな石が付いていて痛さに磨きがかかっていた。
「迷惑かかってんのはあんたなの!!分かる!?あんたがちゃんと言わないから今川くんは対処出来ないし、噂がどんどん拡がってってまたあんたが泣くんでしょうが!!今川くんの事信じてるって言ってるけど何も信じて無いじゃん!!今川くんが可哀想だよ。」
美希は泣いていた。
「もうあんたが苦しむのやだよ…。」
美希の言葉に私も泣いた。
2人でワンワン泣いて、午後の授業に出られる顔じゃ無かったから2人でサボっていっぱい遊びまくった。
一応先生には体調不良で帰りますって伝えたけど。
なんでOKもらえたかは謎。
散々遊んで、8時くらいに帰宅すると家の前で朝陽が立っていた。
朝陽は私の顔を見るなりかなり怒った顔で駆け寄って来た。
「お前!!早退したんじゃないのかよ。」
「美希とサボった。」
「はあ!?なんだよ、心配かけんなよ。」
「ごめん…。」
「何かあったんかと思ってすげー焦った。楓はオロオロしてるし。近藤さんと一緒だったんならちょっと安心したけど。」
楓、という言葉にズキ、と胸が痛んだ。
「楓と一緒に帰ったの?」
「え?まあ。」
「2人で?」
「お前いないからそうなるだろ。」
「楽しかった?」
「…何言ってんの?」
「楓と2人で帰って、楽しかった?」
「お前、本気でキレんぞ。」
その瞬間、涙がボロボロとこぼれてしまった。
泣きじゃくって、嗚咽まで出て、もう涙が止まらない私を朝陽は自分の部屋に連れていった。
「キレるっつってごめん。もう怒ってないから泣くな。楓呼ぶか?」
朝陽がずっと頭を撫でてくれる。
それが切なくて、苦しくて、ますます泣けてきた。
「違う。朝陽が怒ったから泣いてるんじゃないし楓も呼ばなくていい。」
「じゃあなんで泣くんだよ。」
なんで。
なんでって。
なんで分かんないのかな。
朝陽を責めそうになって、でも今まで何も言わなかったくせに責める資格なんてあるわけない。
何も言わなかったからなんでか分かるわけないのに。
言わなきゃ。
でも。
言ったら自分が惨めになりそうで。
なのに朝陽は私が話すまで待ってくれてる。
「…朝陽。」
「何?」
返ってきた声が優しくて、やっと止まった涙がまだ出そうになる。
「朝陽、…朝陽、朝陽」
「なんだよ。」
「…朝陽」
「はい。」
「朝陽、好き。」
そう言って朝陽の顔を見上げた。
「…顔、赤い。」
「うっせ。」
朝陽はぷい、と顔をそらしてしまった。
そう言えば、最初に好きだって言ったのは朝陽の方だった。
高校の進路希望を出す最終日の前日だった。
朝陽は楓のことが好きで、楓も朝陽の事が好きだと勝手に思ってたから凄くびっくりしたのを覚えている。
だから同じ高校受けるんだと思ってた。
私は何となくずっと二人と一緒だったし、っていう理由で同じところにした気がする。
それに好きだと言われるまで、朝陽の事を意識した事は無かった。
朝陽はずっとずっと前から、それこそ物心ついた頃から私の事が好きだったと言って目を伏せた。
だから何人かの女の子に告白されても断り続けてきた、と。
私はてっきり楓の事が好きだから誰とも付き合わないんだと思っていた。
それを言ったら朝陽の方がびっくりしてたけど。
楓にもずっと相談してたらしい。
私が朝陽を友達としか思ってない事も分かってて、でももう言わずにはいられなくなってしまったって言っていた。
友達に戻れないのも覚悟の上で。
少しでいいから考えて欲しいって言われて、今まで気になる人はいたけど恋愛に縁なんて無かった人生だったからどうしたらいいのか分からなくて、
でも自分なりに考えて、楓にも相談して(楓は朝陽の背中を押してたんだから上手くいくようにするに決まってるって後から気づいたんだけど)
高校の合格発表の次の日に朝陽に告白の返事をした。
2人で楓に報告したら泣きながら喜んでくれた。
それまでも、それからも、ずっとずっと大切にしてくれた。
なのに私から好きだなんて今まで1度も言った事は無かった。
今初めて言ったと思う。
こんなにも私を好きでいてくれているのに私はなんで朝陽を信じて相談出来なかったんだろう。
さっきだってあんなに失礼な事言って。
朝陽と楓が私を裏切るなんて絶対にあるわけないのに。
「朝陽。」
「…今度は何?」
相変わらず顔真っ赤。
「朝陽に嫌われたくなくて、ずっと言えなかった事があるの。」
「俺が梓の事嫌いになれると思うの?」
「え?」
「そんな事、宇宙が滅んでもありえない。」
成績優秀なくせになんでそんな真面目な顔でこんなアホな発言するの。
思わず笑っちゃったじゃない。
私はなんとか笑いを抑えて、今までのことを話した。
信者に言いがかりを付けられてる事は本当に知らなかったみたいでめちゃくちゃ怒ってた。
ていうか信者がいる事事体知らなかったらしい。
私が好きって言ったからか、さっきのアホ発言の勢いなのか、
「俺は梓以外愛せない!!バカじゃねえのそいつら。見たら分かるだろ!!」
って怒ってて、恥ずかしいやら、でも凄く幸せだった。
「ごめん、梓がそんなに噂に傷ついてたなんて。何も出来てなくてごめん。俺が梓の事好きだから問題無いって勝手に思ってた。それに噂に傷つくくらい梓が俺の事そんなに好きになってくれてたって知って、不謹慎だけどすげー嬉しいって思ってごめん。」
「私も思ってたより朝陽の事好きだったみたい。」
「俺より?」
「それはどうかな。」
「ですよねー。」
ちょっとだけしょんぼりする朝陽が愛おしくて、朝陽に抱きついた。
そう言えば私からこんな事するのも初めてかも。
いつだってキスもそれ以上も全部朝陽からだ。
ああ、どうしよう。
気持ち、止まらない。
朝陽もそうだったのかな。
私に初めて好きって言ってくれた時。
「朝陽。」
「ん?」
朝陽の「ん?」ってなんでこんなにキュンとするんだろう。
こんなに、こんなにも朝陽の事好きになってたなんて。
「あの…」
「うん。」
「だ、」
「だ?」
「抱いて…欲しい。」
へ!?って朝陽が大声を出して、直後に慌てた。
「え、え、どうしたの?」
「今そう思ったの!!恥ずかしいんだけど!!」
「え、ちょっと待って…」
「ダメ?」
その瞬間、ガバッと押し倒された。
「あさ、」
「ごめん。今日、優しく出来ないかも。」
それから深い深いキスをされた。
翌朝、少し遅い時間。
ゆっくり目を開けると隣で朝陽が私の髪に顔を埋めて小さな寝息を立てていた。
今日学校休みでよかったなーなんてのんびり考えつつ、朝陽を起こさないようにベッドから起き上がった。
昨晩、激しく脱ぎ捨てられた制服をかき集めてとりあえず着ようと思った。
じゃないと素っ裸だし。
昨日の夜のことを思い出して、恥ずかしくなる。
何度か身体は重ねた事はあったけど、あんなに感情のままに激しくされた事は無かった。
何度も何度も甘い言葉で抱きしめられた。
着替えながらふと卓上の鏡を見ると胸元にたくさんの証が残されていて思わず赤くなる。
でも俺の物って言われてるみたいで心の中がじんわり温かく感じた。
昨日おじさんとおばさん旅行に行ってて良かったーなんて思いながら朝陽に家に帰ると書き置きをして玄関を開けるとちょうど2人がが帰って来ちゃったりして、2人にニヤニヤされながらもう帰るの?なんて言われちゃって、そそくさと家に帰った。
楓に心配かけてごめんねってLINEして、美希にも朝陽に伝えた事を報告して、ベッドに寝転んだらそのまま寝てしまっていた。
こんなに心が満たされたのはいつぶりだったっけなあ。
それからしばらくはいつもと変わらない生活だった。
相変わらず時々信者に呼び出されたりはしてたけど、前より悩む事は無かった。
それでも噂は減るわけじゃなかったけど。
そして今年も文化祭の時期になった。
うちの学校は、一年は作品作り、二年は出し物、三年は自由参加(有志の人がバンドやったりしてたけど)でバタバタと忙しく働いていた。
うちのクラスは何を思ったのかお化け屋敷をやる事になって、私は受付を担当した。
朝陽と楓のクラスは喫茶店をしていて、うちの生徒だけじゃなく他校にも2人のファンがいるらしく、2人見たさで長蛇の列になり、かなりの大盛況っぷりだった。
おかげで朝陽と回れるはずもなく、楓の彼氏さんも来てたのに楓にも会えずじまいで2人で思わず苦笑いしてしまった。
結局私は何故か楓の彼氏さんを案内する事になってしまって、逆にそっちが噂になりそうな勢いだった。
そして、うちの文化祭名物。
屋上から自分の主張を発表するっていう昔あったテレビ番組の企画をまるごとパクった催し物が今年も開催された。
いつもクラスで希望者を募って、多い場合は文化祭委員会で抽選、みたいな感じになるんだけど、今年は何故か楓と朝陽が立候補したらしいと委員会で話題になり、誰かが言いふらし、結果信者達がソワソワしていた。
私と美希は信者達のニヤニヤしながらの嫌味を流しながら校庭で集まる人達の後ろの方から屋上を見上げていた。
各クラスの代表者達が、公開告白をしたり、将来の夢を宣言したりしてかなり盛り上がった中、一番最後に朝陽と楓が屋上に上がった。
信者達がキャーキャー言ったり、2人それぞれのファンから悲鳴が聞こえたりするのを聞きながら、やっぱり絵になるなあ、なんてぼんやり考えてた。
大騒ぎの中、司会の人の進行で2人の主張が始まった。
「2年5組の今川朝陽です。」
「同じく2年5組の篠宮楓です。」
「僕達は全校生徒、及び他校の方々に伝えたい事がありこの場に立つことを決めました。」
なぁにぃーなんてお決まりのレスポンス。
信者達は何かを期待するようにキラキラして見ている。
「僕達にはこの高校に入学した頃から、中1の頃から付き合ってる、という噂があります。」
ヒューヒューというはやし立てる声にクラクラしそうになった。
「しかし、それは事実無根だと言うことをキチンと伝えなくてはいけないと思いこの場をお借りしています。」
「それは私たちの大切な人を守るためだと決心したからです。」
明らかにざわつく群衆。
信者の何人かは嘘でしょ、と涙ぐむ人もいた。
横に並んでいた二人だったが、楓が1歩前に出て深呼吸をした。
「私には大学生の彼氏がいます。彼は噂は直接は聞こえて来ないから、といつも笑って流してくれていますが、その笑顔を見る度に申し訳なく感じてきました。だから私はちゃんと噂は事実では無いと彼の前で皆さんに宣言したくて今日彼を招待しました。」
皆が辺りをキョロキョロしだす。
すると私の隣に立っていた彼氏さんがニコニコと笑って楓に手を振っていた。
そして小さな声で私に
「今日は1日ありがとうね。楓に頼まれたんでしょ?」
と言ってくれた。
楓はこの主張の為にわざと彼氏さんを私に託したらしかった。
なるほどねぇ、と美希が笑ってた。
楓が話終わると1歩下がり、今度は朝陽が前に出た。
その瞬間、心臓がドクン、と波打った。
楓の時よりも張り詰めた空気がしたのは、信者のほとんどが女子だったから。
信者、なんていいながら結局はみんな朝陽に憧れていたらしい。
ピリピリした空気の中、朝陽は静かに話しはじめた。
「僕にも死ぬほど大切な彼女がいます。凄く凄く好きで、いつだって一緒にいたいと思ってるから毎日一緒に過ごしています。だけど噂を信じる人達に僕と楓との仲を邪魔するなと言いがかりを付けられたりして悩んで傷ついている事を知りました。彼女は僕に迷惑がかかると思い、僕には相談してくれませんでした。だから僕は彼女が苦しんでいる事に気付いてあげられなかった。」
私は手が震えていた。
その手を美希がずっと握ってくれ、楓の彼氏さんは私の背中をさすってくれていた。
「だけど、僕が彼女を嫌いになるなんて絶対にありえないし、自分の噂のせいで苦しめてるなんて耐えられないと感じました。だから今、ちゃんと言いたい。」
朝陽はすっと息を吸った。
私の手を握る美希の力が強くなった。
「2年3組、矢嶋梓。もう1度告白する。俺は産まれた時からずっと一緒に過ごしてきて、物心付いた頃にはもう梓が好きだった。梓が俺の事友達としか思ってなくても、他の男を好きだったとしてもずっと梓が好きだった。だからずっと楓にも相談してたし友達じゃいられなくなってしまうかもしれないのを覚悟して梓に告白した。だから合格発表の次の日、梓に付き合って欲しいって言われて本当に心臓止まるかと思うくらい嬉しかった。」
涙でぼやけて朝陽が見えない。
嗚咽が出て、彼氏さんの背中をさすってくれる温もりが有難かった。
「きっと今でも俺の方が梓を好きだと思うし、重いって思うかもしれない。だけど俺はこれからも梓が好きだしずっと一緒にいたいって思ってる。だから高校卒業して大学行って就職して1人前になったらちゃんと改めて言うから今皆の前で言わせて欲しい。」
途端に今まで張り上げていた声が優しくなった。
私は涙を拭って朝陽をまっすぐ見つめた。
「梓。」
「はい。」
「これからも命をかけて梓を愛していくと約束する」
皆がしん、となった。
時間が止まった気がした。
「だから、俺と結婚してくれないか?」
「…はい。」
その時屋上から花火が上がった。
わあああ!!!!!!と声援がしてその後すぐに朝陽が校舎から飛び出してきた。
朝陽はそのまま私のところに走ってきてそして強く抱きしめられた。
ありがとう、と言って。
「朝陽…あさひぃ…」
「泣き虫。」
「朝陽が泣かせてるんじゃんかぁ。」
「そっか。」
「うぇえええんばかぁ〜!!」
声を上げて泣いた。
これ以上無いってくらい。
美希も泣いてたし、楓も一緒にたくさん泣いてくれた。
そしたら彼氏さんが
「朝陽くんかっこいいなあ。次は俺かあ。」
って言って、さらに楓は泣いた。
私より声を上げて泣いたから思わず笑ってしまった。
たくさんの拍手に囲まれて、朝陽は私に今まで一番優しいキスをくれた。
それから10年。
私は病院のベッドに寝ていた。
隣には天使が穏やかな表情を浮かべて私を見つめながら指を握ってくれている。
「梓、お疲れ様。」
あの日皆の前で私を泣かせた人は、今天使の前で私以上に泣いている。
「朝陽、泣きすぎ。」
「しょうがねえじゃん。」
「本当にもう…」
「梓。」
「何?」
「俺を世界一の幸せ者にしてくれてありがとう。愛してるよ。」
今日、何度目かももう分からないキス。
「これから楓と旦那さんが来てくれるらしいけど、身体大丈夫か?」
「うん、なんとか。」
「近藤さんは退院したら遊びに来てくれるんだっけ?」
「うん。あ、もう近藤さんじゃ無いけどね。」
窓辺から優しい光が差し込んで来て笑顔を包んでくれる。
私はこれからもこの手を離さずに歩いていく。
きっとこの先、たとえ宇宙が滅んでも。
ね。




