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平安陰陽騒龍記 第二章  作者: 宗谷 圭
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 昔々の、その昔。素戔嗚尊が八岐大蛇を退治してから、早幾年という時の事。

 隠岐の島に住んでいた兎はある日、海の向こうへと渡りたくなった。しかし、か弱い兎の身に、大海原を自力で泳ぎ切るような体力は無い。そもそも、泳げるかどうかもわからない。

 そこで、兎は思い付いた。橋が無いなら、造れば良いじゃないか、と。

 兎は早速波打ち際へ行くと、海中を悠々と泳いでいた鮫達に声をかける。

「なぁなぁ、鮫さん達! アンタ達鮫族は随分と数が多いけどさ、オイラ達兎族と、どっちの方がたくさんいるんだろうね? 知りたくないかい?」

 気になったのだろう。鮫達が兎の話を聞くべく、近寄ってきた。そこで兎は、楽しそうに思い付いた事を話す。

「鮫族の皆がここに集まってさ、あの海の向こうまでずらーっと並んでみてくれよ! そしたらオイラ、アンタらの上を跳んで数を数えて、兎族とどっちの方が多いか比べるからさ!」

 すると、鮫達は言われた通りに集まり、行儀良く一列に並んで見せた。そこで兎は、鮫達の上をとんとん、と跳んで海の向こうへと渡っていく。

 そして、目的地である因幡の国の気多(けた)の岬が見えてきた時だ。兎はつい、嬉しさのあまり余計な事を言ってしまった。

「なぁんちゃって! 全部、オイラがこっちへ渡るための嘘だよ! 鮫族の皆、橋渡し、ゴクローサマ!」

 兎が、「言わなければ良かった」と気付いた時には、もう遅い。鮫達の目が、怒りに染まっていた。

 兎は怒り狂った鮫達に捕まり、皮を生きたまま剥がされ、そして気多の岬に捨てられた。毛皮を剥かれたせいで、体は丸裸。血に塗れて真っ赤になってしまっている。体が痛くて、ろくろく動く事もできない。

 痛みと情けなさで泣いていると、そこに男の神が幾人もやって来た。これが、この国の基盤を築いた大国主神……の、兄神達である。

 兄神達は意地の悪い性質で、兎に「傷を治したくば海水で体を洗い、潮風で乾かせ」などと言ってきた。

 真に受けた兎はその通りにし、逆に傷が悪化してしまう。痛みにのた打ち回り泣いていると、荷物持ちのために出遅れた大国主神がやってきた。

 当時はまだ大穴牟遲神(おおむなじのかみ)と呼ばれていた彼は、兎の話を聞くと心から憐み、本当に傷を治す方法を教えてくれた。

 真水で体を洗い、蒲の穂を敷き詰めた上で休みなさい。

 言われた通りにしてみると、今度こそ兎の傷は治り、真っ白な毛が生えてきた。喜んだ兎は因幡の国の八上比売(やがみひめ)の元へと走り、事の顛末を告げる。

 大国主神の兄達は、この八上比売に求婚するために因幡の国へと出向いてきたのだが……兎の話を聞いた八上比売は、迷う事無く兄達の求婚を撥ね退け、大国主神を夫とすると宣言した。

 これが、世に言う「因幡の白兎」の物語である。

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